プレゼント
藤林はようやく昼を過ぎだが23時まで時間があるためウィンドショッピングを楽しむことにした。最先端のファッションに流行、街行く先々で出会う有名俳優や女優。そんな彼女らを見ながらも紗耶香は仕事で取り入れられる建築設計や色・花・柄などをインプットしてはパズルの様に組み合わせたりしながら色鮮やかな街を歩いていた
湖がある公園で人盛りを見つけふらっとその中に入っていくと照明や音声器具、カメラマンに撮影スタッフと書かれた腕章を着けている人々を見て何かの撮影だと知った。紗耶香は普段なら気にもとめずさっさと立ち去るが、この日だけは珍しく浮かれていたこともありその撮影が終わるまで野次馬に加わる事にした
『ねぇ!さっきの話しは本当なの!?』
『ああ。俺は今の仕事を辞め別の仕事をする事にした。・・・・・だが、その仕事は今より危険で下手するとお前にも危害が加わる。だから──『嫌よ!』』
『俺はお前に危害が加わる可能性を消したい。だから言うことを聞いてくれ!』
『私はどうなっても悔いはないわ!!貴方と一緒に居れるなら!!』
『死ぬかも知れないんだぞ!!』
『死ぬ・・・・それでも構わないわ!貴方の側にいれるなら!』
『何故、分かってくれないんだ!俺は!!!「キャーーーーー!?」「うっ!?」!?』
突然の悲鳴と誰かが倒れる音で演技を中断し全員が悲鳴の聞こえた方を振り向くと刃物を持った黒ずくめの男が、自分が通る道にいる老若男女問わず無差別に斬り倒しながら中央にいる女優、俳優に向かい向かっていた。野次馬達は慌てて逃げ始め一部の好奇心旺盛なカメラスタッフが残り恐怖で立ち竦んでる俳優・女優は、ただただゆっくりと近づいてくる男をその場で見ているしか出来なかった
その場で野次馬としていた紗耶香は、スタッフ達のあまりにも速い逃げに呆れこの場で立ち竦み女性を庇う様に立っている(演技の位置的に)俳優を助けない人々にため息をついた
せめて、ヤードぐらいには誰か連絡してるかしら?
と思う紗耶香だった。
黒ずくめの男は、目の前にいる紗耶香に向かって刃物を向けたが彼女はチラリと別の方向に目を向けカメラがまだ回っていることに気づくと柔道の要領で近づいてきた男を小外刈りで相手をこかすと落とした刃物を拾い相手の首もとに当て押さえ込んだ
まるで見計らった様にヤードが到着し男を回収し、女優・俳優、その場に残っていたカメラマンに事情を聴き紗耶香の方には指揮を出していた男が近づいてきた
『貴女が取り押さえてくれたお陰で死者は出ずに済んだ。感謝します』
紗耶香は困ったように笑いながら
「私、フランス語分からないです。えっと英語なら伝わるかなI cannot speak French at all.」
彼は驚いたと言うよりも困惑した様に
「えっ、日本人の観光で来られた方ですか?」
「そうです。日本語お上手なんてすね!」
「祖母が日本人なので覚えさせられました。それよりもお怪我は有りませんか?」
「はい。大丈夫です」
「貴女のお陰て死者が出なくて済みました。ありがとうございます」
「いえいえ!私はたまたまここにいてたまたま柔道を学んでいたので対処できただけです」
「事情聴取を本来なら行うべきですが、カメラも回っていたみたいですからこのまま気を付けてお過ごしください」
「いえ、お仕事お疲れ様です」
紗耶香は彼が再び部下の元へ戻る中彼らの方を向いてニコッと笑いながら会釈しその場を離れた
そんなこんなもあり紗耶香は彼女にとって動きやすい服装に着替え夜の街を歩きながら約束の時計塔の側に22時50分につきやたらカップルが多いことに疑問を持ちながら残り5分になった頃視線の先にいる男性が妙にソワソワしだし回りを悟られないように見渡している。彼女は何となくだが悲劇が起こる予感がし男性の元へ近づくなりフランス語で
『ダンディーな旦那様もお一人ですか?』
『ああ。』
『私も友達を待っているので一人なの!友達が来るまで側にいても良い?』
『・・・・ああ。』
あまりにも不自然な合間とチラチラと時計を見たり、時々ポッケを探り何かを確認している動作をスマフォを見ながらこっそり確認しそばのカフェで紅茶ではなく珈琲を飲んでいる男性を見て何かを察しカマをかけることにした
『ねぇ、もうすぐここで花火が上がるんだって』
『!!!は花火が!?』
『そう。だけどさっき友達からのメールで彼氏の側にいるから行けないって言われたから一緒に見ません?』
と言いながらボディーラインが見え上から胸の谷間が見えるドレスを着ていた彼女は自分の胸の間に男の腕を挟み上目遣いで
『ねぇ、もう少しだけ側にいていい?』
と言いながらもギュッと彼の腕に抱きついた
彼は動揺していたのか誘惑に負けたのかポケットから手を出し時計から視線が外れ完璧に彼女だけしか視界に入らなくなり、彼女をギュッと抱き寄せた
その瞬間に男のポケットに入っているものをこっそり抜き出し隠しポケットにしまいいきなり鳴り響いた着信音に男から飛び離れ
タイマーを消し見知った顔の彼に合図を出した
側にいたカップル達は一斉に紗耶香と一緒にいた男性を取り押さえ彼女は驚いた表情と戸惑いの感情を露にしながら
『な、なに!?えっ????!』
男が連行されその場に残された紗耶香に顔見知りの彼らが近づいてきた
『先ずは、試験合格おめでとう。とだけ伝えておく』
彼女はニコッと微笑み続きを促した
『ところで、そのドレスはなんだ!!俺は動きやすい服装に着替えろって言った筈だ!』
『ええ、だから私にとって動きやすい服装ですわ』
『はぁ~まぁいい。次の質問だ、何故 変装している俺達に気がついた?』
『たとえ見た目や髪色瞳を変えたところで貴方のオーラは変えられませんわ』
『オーラだと?』
『ええ、私の眼は少々特殊で人それぞれの色が見えるのですわ』
『オーラのことは一先ず保留だ。二つ目、何故あの男に近づいた?』
『・・何故ってあんなに挙動不審だったら声かけるわよ普通』
『は??あの男はずっと時計塔の針を見てたぞ』
『確かに見上げていましたわ』
『なら!』
『ですが、彼は極僅かに視線を腕時計に下げたりポケットの中を確認するような動作を見せていましたわ』
『そんな素振りをしてたか?』
彼は横にいる元スタッフだった彼に声をかけると
『いいえ。その様な素振りをしていたらすぐに分かります』
『あなた方観察力が足りないのじゃないかしら?』
今にも飛びかかってきそうな男を見て微笑むと彼・・・レイズは何かを察したように部下を押さえ
『本来の試験は爆発が起こった時のお前の行動を見るためだったんだが、功績を挙げるとは思わなかった』
『それよりもヤードに潜入している彼。ずっと犯人の後を追いかけているの丸見えだったわ』
レイズは頭を抱えると小声で
『あのバカ!あれ程姿を隠せって忠告したが聞いていなかったのか!?』
紗耶香はそれを見て悪戯心が芽生え
『あと私の事を知っているみたいだったけど、ちょっと情報操作しただけでただの観光客だと思っていたわ。それにわざわざ自分の祖母が日本人であることも教えてくれたわ』
レイズは近くに有る壁を殴りつけるなり地を這うような声で
『あいつ暫く訓練生に降格だ!』
レイズの側にいた彼は一歩後ろに下がり巻き添えを喰らわないように空気とかした
ほぼ全ての人が撤退した中レイズとその部下数人と紗耶香だけが残っていたヘリでも止まれるスペースに迎えが到着した
「お嬢さ~ん、そろそろ次ぎ行きますよ!!」
無音のヘリから聞こえてくる声に合図を送り
『では皆様、まだお会いする日までご機嫌よう』
「はああっ!?ちょっと待て!!!!」
日本語で流暢に話す彼にクスクスと笑いながら下ろされた階段に足を引っ掻けながら
「貴方のうちポケットにプレゼントと手紙が入っているわ」
と言い残しヘリにいる人達に巻き上げてもらいヘリの中へ入った
「お嬢!いきなり要件だけ告げて着るの辞めて貰えます!?どこの国のどこの場所ぐらいには教えて貰わないと予定時刻に間に合わなかったらどうするんすか!
!」
「あら、如月なら直ぐに分かると思っていたのだけど・・・・信頼し過ぎたかしら?」
「いやいや!!俺にとっては簡単な事っすけど!育ててる部下には思いやってあげて欲しいっす」
「分かってるわ。如月以外はちゃんとルートに地図に時間と場所・・・それに梯子を下ろすタイミングと上げる合図をちゃんと紙に書いて渡しているわ」
「なんか俺だけ扱い雑くないっすか!?」
「なに言っているの?私が直々に指導したのだからこれぐらいできて当然よ」
「お嬢が俺をどれだけ信頼してるかは良く分かったっす。だけど今回ばかりはせめて国だけでも教えて欲しかったっす!!いつも通り国内かと思っていたら海外便に痕跡があるってどう言うことっすか!!お陰で20秒ほど遅れたっすよ!!」
「あら、私にとってはジャストタイミングだったわ」
「それなら良かったっす!」
◆◆◆◆◆
一方、彼女が去って行くなか言われた通りに手を突っ込むと確かにプレゼントと手紙と言うよりも招待状に近い封筒が入っていた
レイズは丁寧にラッピングされているリボンをほどき箱を開けると更に一回り小さいラッピングされた箱が出てきた。それを開けると更に一回り小さい箱が出てきた。この時点でマトリョーシカを思い出したレイズは良く俺が違和感を感じずポケットに入れたなと感心しつつ更にラッピングを開けること5回目で小さなタンザナイトとアクアマリンのイヤリングとタンザナイトとアクアマリンのピアスが2組ずつ出てきた
レイズは隣に戻ってきてるアストに箱ごと渡し封筒開け中身を見ると全て日本語で
『先に箱を開けたみたいね。そのイヤリングとピアスは貴方の好みが分からなかったから両方送っておいたわアクアマリンは貴方の誕生石だからどっちを使っても構わないわ。タンザナイトは私に刃物を向けた彼に渡してちょうだいな。何故分かったのか疑問に思っているでしょう?だけどこれは乙女の秘密ってことよ。あと、この封筒の中にきっと今頃彼の服を探っても見つかっていない爆破装置が入ってるわ。ちゃんと線は切ってあるから爆破しないから安心して頂戴ね
追伸ここの下に電話番号を書いておくから用があったら連絡してちょうだいね
by 藤林 紗耶香』
「何もかもお見通しって分けか」
『アスト、俺達も戻るぞ』
『はい』