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【Web版】追放されるたびにスキルを手に入れた俺が、100の異世界で2周目無双  作者: 日之浦 拓
第四章 無能勇者の逆転劇

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攻めるなら質を高めるべし。守るなら数を揃えるべし

「こぉれで……一〇〇匹ぃ!」


 俺がズバッと剣を振るえば、真っ二つになったノルデが霧散する。だがまだまだ敵の数は多く、一息つくにはほど遠い。


「ケェェェェ!!!」


「させねーよぉ!」


 追放スキル「追い風の足(ヘルメスダッシュ)」を使って一気に加速し、学舎に攻撃しようとしていたノルデの一撃を受け止める。するとノルデは空を飛び俺から離れようとするが、それを見逃してやるほど甘くない。


「人は飛べない? んなこと誰が決めたんだよっ!」


 攻撃で受けた衝撃全てを「円環反響オービットリフレクター」で足に込め、飛び去ろうとするノルデの頭上を越えて跳び上がる。股間から真っ二つに切り上げられたノルデをそのままに、俺は自由落下に入る直前で声をかける。


「ティア!」


「あら、援護はいらないんじゃなかったの?」


「馬鹿言え、人は飛べねーんだよ!」


 人が飛べないと誰が決めたのか……そりゃ神様とかそういうやつだろう。なので単なる人間である俺にはそれを覆せないが、美の精霊を名乗るようなエルフだったら話は別だ。


「ホント、エドはエドよねぇ。解放、『エアプレッシャー』!」


 苦笑いを浮かべつつも、ティアが銀色の剣を振るえば俺の足下に確かな感触が生まれる。何だかんだ言いつつも準備してくれている辺り、流石は相棒だ。


 そのまま見えない足場を蹴って、宙に浮かぶノルデを更に三匹ほど切り捨ててから着地する。そんな曲芸じみた俺の動きを見た生徒達の歓声が背後から聞こえてきたので、背を向けたまま軽く手を振っておく。


「フフッ、大人気じゃない」


「ま、派手に動いてるからな。そっちはどうだ?」


「先が見えないから節約気味にしてるけど、大丈夫みたい。多分精霊の加護を土地と建物の二重に付与して耐久性をあげてるんだと思うわ」


「そっか。そいつは嬉しい誤算だ」


 学舎にかかった守りの魔法は、どうやら俺の思った以上に頑強らしい。これなら本気で一週間くらい保ったかも知れねーが……仮に安全だとしても、すぐ側で凶悪な魔獣が自分を殺すために騒いでいるとなれば、心が安まるはずもない。


「つっても、防衛任務で防衛対象を蔑ろにするのはねーからな。変に急ぐよりこのままのペースで削っていこう」


「了解」


 荷物は文句を言わないが、人間は不安に駆られれば容易く壊れる。多少時間がかかっても、ここは丁寧な仕事を心がけた方が――っ!?


「……何だ?」


 北の方から感じる、今までとは一線を画す凶悪な気配。目の前のノルデ達が単なる羽虫にしか感じないほどのそれに、俺は適当に周囲のノルデを蹴散らしながら意識を北に集中する。


「うっぷ、何これ、気持ち悪い……」


「お、おいティア!?」


 突然、ティアが口元を押さえて蹲った。慌てて俺が駆け寄ると、ティアが青白くなった顔を俺に向けてくる。


「大丈夫よ。ちょっとビックリしただけ」


「どうしたんだ?」


「精霊がね、突然暴れ出したっていうか……エドに伝わるように言うなら、突然透明な手をお腹に突っ込まれてグルグル掻き混ぜられた、みたいな? でも、もう平気。私は平気だけど……」


 そう言ってティアが心配そうに振り返る先には、当然ながら学舎がある。建物に異常は見られないが、その中にいる子供達まで大丈夫かはわからない。


「気になるなら中に戻って様子を見てくるか?」


「ううん、それは私じゃなくて、先生達の仕事よ。あの日エドが私達を進ませるために残ってくれたように、今私は私にしかできないことをする」


 まっすぐ見つめるティアの視線の先を追えば、遠目でもわかる真っ黒な巨体がこちらに向かって飛んできている。


「そっか。ならもうちょっとお付き合いいただけますかお嬢さん(フロイライン)?」


「ええ、宜しくてよ……フフッ」


 俺が差し出した手を取り、ティアがその場で立ち上がる。その間にも近づいてきていた黒い影は、遂に俺達の目の前に辿り着いてその大口を開いた。


「ドラゴン……だよなぁ? どうみても」


「そうね。でもドラゴンじゃないわよね、どうみても」


 それは全長一〇メートルを超えるであろう、漆黒のドラゴンであった。ただそれは見た目だけの話で、印象としては彫像に近い。どちらかというならゴーレムなどの魔法生物が近いだろうか?


 そんなドラゴンが顔を上に向け、パカリと開いた口の上にギュンギュンと黒い力が集束していって……ってヤバいだろこれ!?


「ティア!」


「ごめん、アレは無理!」


「くっそがぁぁ!」


「GYAOOOOOOO!」


 幸いにして、ドラゴンが放ったのはブレスではなく暗黒の火球であった。俺はそれを魔力の塊と見て取り「吸魔の帳(マギアブソープ)」を発動するも、黒球に触れた瞬間己の魂を掻きむしられるような不快感に襲われる。魔力を取り込む技であるだけに、取り込んだ魔力の汚染そのものが俺にダメージを与えてきているのだ。


「チッ、ゲテモノ食わせやがって! ぬぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


 吸い取れないならどうにかして逸らすしかない。「包帯いらずの無免許医(リジェネレート)」と、あとは一応「不落の城壁(インビジブル)」も発動し、闇の炎に体がブスブスと音を立てるのを無視して渾身の力でそれを横に逸らす。


 それが地面に着弾した瞬間、ズズンという大きな音と共に庭先に大穴が空き……同時に学舎の方からバリッという嫌な音が聞こえた。


「ティア、今の音は何だ!?」


「学舎にかけられてる守りの魔法が弱まってる。多分土地が荒らされたことで、そっちに紐付けられた加護が弱まったんだわ」


「いやいやいや、流石に学園の敷地全部を守るのは無理だぜ!?」


 生徒三〇〇人に教職員を加えて四〇〇人ほどが詰め込まれている学舎ですら十分にでかいのに、それを何十倍にもした学園の敷地全体を守るのは俺一人ではどうやっても不可能。となると被害を出さないための最善手は、元凶……即ち目の前の黒ドラゴンを倒すことなわけだが……


「やっぱそうくるわけか!」


 どれほどの知能があるのかはわからないが、渾身の一撃を防がれた黒ドラゴンは、「手数」というこちらの絶対的な弱点を突くべく、今度は無数の暗黒火球を打ち出し始める。


 無論、一撃一撃はさっきのとは比較にならないほど軽い。が、手数の差は如何ともし難く、更には残っていた二〇〇余りのノルデもこれを機とばかりに一斉に学舎に群がってくる。


 俺はそれを必死で捌いていくが、取りこぼした火球やノルデの体当たりが学舎にぶつかる度、バシンバシンと音を立てて琥珀色の壁が一瞬だけ学舎の周囲に浮かび上がり……その表面に明らかにヒビが広がっているのがわかる。


「駄目! もうそんなに結界が保たない!」


「さっき思ったより頑丈って言ったばっかりじゃねーか!」


「あの黒い火球が、精霊の力を直接削ってきてるのよ!」


「ティアの魔法なら防げるか?」


「……一〇分あれば、さっきの特大の火球でも防げると思う。でも――」


「なら迷うな! それが今のティアにしかできないことだ! そしてこれが、今の俺のできることだ! 起動しろ、『火事場の超越者(リミットブレイク)』!」


 ティアの返事を待つことなく、俺は追放スキルを起動する。そのまま「追い風の足(ヘルメスダッシュ)」を起動すれば、いつもの三倍ほどの速度で駆けることができる。


 が、代償は決して軽くない。「終わる血霧の契約書(ブラッドエンジン)」が全能力を一〇〇倍に引き上げるのに対し、「火事場の超越者(リミットブレイク)」は単に肉体の制御限界を意図的に取り払うだけ……つまり頑丈になるわけじゃないのだ。おまけにこいつは自分の内から発せられる衝撃なので、「円環反響オービットリフレクター」の対象にもならない。


「ぐぉっ……!?」


 普通の肉体で、普通の三倍の力で踏み出せばどうなるか。骨は折れ肉は潰れ、穴の空いた水袋のようになった足が血をしぶかせながらぶらんと垂れ下がる。無論「包帯いらずの無免許医(リジェネレート)」は即座にそれを治しにかかるが、最低限動くところまで治れば俺はその足で再び地面を蹴って跳び、黒ドラゴンの火球を片っ端から撃ち落としていく。


「ぐっ……はぁ。さあ飛びトカゲ野郎。俺とお前とどっちが我慢強いか、根性比べといこうぜ?」


 額に流れる脂汗を拭いながら、俺は悠然と空を舞う黒ドラゴンにニヤリと笑いかけた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 熱いじぇ 一気に飛んだのか 意図的に飛ばされたのか 百は面倒くせぇ洒落せぇ、だったのか 理由があるようなら待ってます。
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