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【Web版】追放されるたびにスキルを手に入れた俺が、100の異世界で2周目無双  作者: 日之浦 拓
第二二章 妖精郷と甘い夢

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一人では思いつけないことも、二人になると閃いたりする

「あ、お帰りなさいエド…………どうしたの?」


「でっかいヨソモノ、どうしたのー?」

「でっかいヨソモノ、どうかしたー?」

「でっかいヨソモノ、どうにかなったー?」


 魔王の元から帰ってきた俺を見て、ティアが心配そうに声をかけてくれる。それに便乗するように妖精達もよってきたが、今の俺には苦笑いで応えるのが精一杯だ。


「あー、すまん。何でもない……夜にでも話すから、ティアは妖精達と遊んでやっててくれねーか?」


「それはいいけど……ううん、わかったわ。じゃ、みんな、続きをしましょうか」


「「「わーい!」」」


 俺の意を汲んで、ティアが妖精達を引き連れて遊びに戻る。それを静かに見送ってから、俺は一人天幕の中へと戻っていった。妖精達は遠慮はしなくても配慮はしてくれるので、入らないでくれと頼んだ天幕の中にはやってこない……つまり、ここには俺一人きりだ。


「……ははっ。たったこれだけしか残ってない世界のなかで、更に狭い場所に引きこもるとか、冗談でも笑えねーぜ」


 自嘲気味にそんなことを呟きつつ、俺は頭の中でどうすれば全員を救えるのかを考えていく。それはハリスの時も考えたことだが、勇者ハリスの覚悟と信念は救われることを望んでいなかったのに対し、ここに住む妖精達が死を受け入れて日々を過ごしているとは思えない。


 そして妖精達が助かれば、魔王だってむざむざ死にたがったりはしないだろう。つまり俺とティアが立ち去った後も妖精達を生かす手段があればいいわけだが……それこそが難題中の難題なのだ。


「努力するとは言ったけど、なぁ……」


 俺の手札は一〇〇の異世界を渡り歩いて身に付けた、一〇〇個の追放スキル。それを自在に組み合わせる……なんて言えば色々なことができそうだが、その力のほとんどは「俺自身」にしか影響を及ぼさない。


 たとえば「不落の城壁(インビンシブル)」と「吸魔の帳(マギアブソープ)」をこの森の周辺に展開できるなら、おそらく魔王が今張っているという結界よりもずっと強固なものができるだろう。俺が解除しない限りこの効果は永続なので、なんならそれだけで当面の問題は解決するとすら言える。


 が、そんなことはできない。ティアを守るためにその身に展開することすらできないのだから、ましてや森なんていう曖昧な定義で追放スキルを発動させられるとはこれっぽっちも思えない。


「ま、そもそも維持したところでジリ貧だしなぁ。となるとやっぱり何処かに逃がすのがいいんだろうが……」


 一番単純なのは、魔王が言うとおり別の世界に妖精達を待避させることだ。が、あれだけの因果の籠もった「銀翼の剣」ですら、世界の壁を越えるには莫大な力が必要だったうえに、俺とティアの両方に関係する世界に移動するのが限界だった。


 そこから考えれば、他の世界に縁もゆかりもない数百の妖精を別世界に移住させるというのがどれほど困難であるかは言うまでもない。それでも異世界への移動は一応成功したという実績があるのだから、理論上は可能と言えるのかも知れんが……


「……いや、むしろそっちの方が絶望的だな」


 理論上可能というのは、足りないものが明確に見えているということだ。圧倒的に力が……しかも単純な魔力ではなく、何かこう、俺にもよくわからない凄い感じの力が足りないのだから、それを満たさない限り世界間移動は不可能だという結論が出てしまっている。


 そして、それを満たす当てはまったくない。俺の中にあるこれまで集めた魔王の力を全部使い捨てにすれば、あるいは……という気もするが、いくら助けたいからといって、流石にそこまでは犠牲にできない。助ける対象がティアなら迷う余地など皆無だが、冷酷だと言われようと妖精達やここの魔王にそこまでの思い入れはないのだ。


「むーん…………」


 天幕の中をゴロゴロと転がりながら考え続けるも、やはりいいアイディアは浮かばない。そのまま時間だけが過ぎていき、ティアに呼ばれて夕食を食べ……そして夜。一つの天幕で並んで寝転がったティアが、まるでいたずらっ子を叱る母親のような顔で俺に向かって話しかけてくる。


「さあエド、夜まで待ったんだから、いい加減白状しなさい! 何をそんなに悩んでるの?」


「白状って……まあ、そうだな。正直俺一人だといい方法が思いつかなかったから、話を聞いてくれるのは助かる。が、かなり衝撃的な内容だぞ? それでも――」


「聞くわよ! それがどんな内容でも、唸りながらゴロゴロしてるだけのエドを見続ける方がずっと嫌だし」


「あ、そう? 何かごめん……」


 確かにそうだな。俺だってティアが「今は何も聞かないで」って言うなら聞かねーで我慢するけど、その状態でずーっとウンウン唸ってたらスゲー気になるだろうし。


 ということで、俺は魔王から聞いたこの世界の現状をティアに説明する。すると話を聞き終えたティアは「ちょっと待ってて」と言って天幕を出ると、一〇分ほどして戻ってきた。


「今確認してきたわ。確かに森の向こう側は、もう終わっちゃってる(・・・・・・・・)みたいね」


「わかるのか?」


「うん。ほら、黒騎士さんの世界で、神様に駄目にされちゃった場所とそうじゃない場所を何度も見たから。


 エドみたいに正確な距離とかはわからないけど、森の外に精霊の力がほとんどなくなってるのくらいはわかるわ。だって風は世界を巡っているんだもの」


「そう言われりゃそうだな。で、俺の悩みは何とかして妖精達やここの魔王を助けてやれないかってことなんだが……ティアは何か思いつくか?」


「うーーーーーーーーん……………………」


 俺の問いに、ティアが首まで毛布にくるまったまま激しく耳を動かして悩む。だが数分待っても、ティアの表情が冴えることはない。


「流石に残ってるのがここだけってなると、黒騎士さんの世界みたいに世界を復興するのは無理、よね?」


「無理だろうなぁ。妖精の集落には精霊樹みたいなのはねーし、妖精達だって凄い魔力を持ってるとかでもねーから、力を集めるのも……」


「そう。となるとやっぱり他の世界に連れて行くしかないんでしょうけど、それも無理なのよね?」


「現実的な手段となると、何も思いつかねーな。猶予が何百年とあって、俺達がここに留まり続けられるならいけるかも……くらいか?」


「どっちにしろ力が足りないってわけね」


「そういうこった。特にこの世界の場合、残ってるのがここだけってのが辛い」


 足りない力を引っ張れるような他の場所も、自らが力を生み出すような存在も、この世界には何も残されていない。おまけに世界の崩壊はゆっくりと進行し続けているので、力の余剰が生まれる余地すらない。ここまで追い込まれてしまったら、もうこの世界に残る力だけでどうにかするのは無理だろう。


「せめてあの船の動力が使えりゃなぁ……」


 俺がキャナルの世界で買ってきた、喋る船。あれ用の動力というか燃料というか、とにかく大量に圧縮された魔力なら結構な量がある。が、あれは専用に加工されているので、単に壊せば魔力が噴出するとかではない。魔力に再変換するには専用の設備が必要で、当然そんなものは市販されてないので俺も買っていない。


 それでも試しに壊してみるという手もなくはないが、何も起こらないならまだしも、大規模な爆発でもしたら目も当てられない。安全設計が為されているとはいえ、異世界でぶっ壊すことを想定しているはずがないしな。


「……ねえ、エド。私ちょっと思ったことがあるんだけど」


「ん? 何だ?」


「世界の移動に凄い力が必要なのは、別の世界に行くからよね?」


「ああ、そうだな。それが?」


「なら、同じ世界に移動するならどうなの?」


「同じ? あー、確かに必要な力は減るだろうけど……ん? ああ、そうか。魔王を過去に送れれば……いや、それでもやっぱり無理だな」


 この状況から何とかするとなると、神の欠片が世界を壊す前に戻り、そこで神の欠片を倒すなり何なりするしかない。だが今の魔王を二〇年前に送り込むのでも、二〇年前の魔王に今の記憶を流し込むのでも、どっちにしろ「手から甘いものを出す力」しかないこの魔王に神の欠片をどうこうするのは無理だろう。


 そして、俺達がそこに行くのも不可能だ。俺達とこの世界の因果は俺達がこの世界にやってきた一ヶ月前からであり、そこより過去に遡ることはどうやってもできない。


「違うわ、そうじゃないの。過去に送り込むとかじゃなくて……ほら、神様が世界を壊そうとしてるのって、エドのせいで同じ世界が二つになっちゃったからじゃない?


 でも、それってここと同じ世界がもう一つあって、しかもそっちは壊されずにあるってことでしょ?」


「……っ!? おい、ティア!?」


 その言葉に、俺の背中に戦慄が走る。驚愕する俺の前で、ティアが翡翠の瞳を輝かせてニンマリと笑う。


「この世界の妖精達を、もう一つのこの世界……無事な方に移動させることって、できないかしら?」

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