表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【Web版】追放されるたびにスキルを手に入れた俺が、100の異世界で2周目無双  作者: 日之浦 拓
第二〇章 水の勇者と深淵の王

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

347/552

金銭的な価値だけが、宝の価値というわけではない

「ギョォォォォッ!? 扉が、扉が開いちゃってるギョッ!? あんなに苦労して鍵を集めたのに、まさか誰かに先を越されたギョッ!?」


「いや、それはない……と思うが」


 叫びながら扉に向かって泳ぎ出そうとするギンタを引き留めつつ、俺達は慎重に扉の側へと近づいていく。


 あの鍵を手に入れる条件を、俺達以外が満たせるとは思えない。が、俺達が持っている以外にも別の条件で手に入る鍵が存在していないと断言することもできない。が、周囲に余人の気配はないし、扉の開き方も、精々拳一つ分くらいの隙間ができているだけだ。とても人が通れるような広さではない。となると……


「誰かが通って閉め忘れたってよりは、勝手に開きかけてるって感じか?」


「なら、中のお宝は無事なのかギョ!?」


「無事なんじゃね? お宝があれば、だけどな」


 俺の読みではこの中にいるのは封印された魔王のはずだが、ここに至るまで何の情報もないのだから、ギンタの期待するお宝の可能性もゼロではない。あるいは魔王の力を利用した凄い魔導具とか……ん? とすると俺が思ったよりお宝の可能性も高いのか?


「ま、いいや。それも開けてみりゃわかるだろ。ギンタ、そっちの鍵を頼む。ティアは万が一に備えて警戒してくれ」


「了解」


「わかったギョ!」


 俺の言葉に、全員が素早く動く。扉の左右には黒と白の穴が開いており、俺が左側にある黒い穴に黒い鍵剣を差し込むと、ズズッという重い手応えと共にピッタリ奥まではまり込んだ。そうして横に視線を向ければ、ギンタの方も鍵を差し込み終えており、更に首を後ろに動かせば、扉の前で剣を抜いて構えるティアが小さく頷く。


「じゃ、いくぞ。一、二の三で回すんだ。一、二の……三!」


「ギョッ!」


 グッと力を込めて鍵をひねると、ガチッという音がして扉が開き始めた。白と黒に分かれていた扉が吸い込まれるように外枠のなかに消えていき、残ったのは直径三メートルほどの金の枠から奥に続く、吸い込まれそうな暗黒の通路。


「開いたけど……中も真っ暗だギョ」


「行くか……順番は俺、ギンタ、ティアだ。ギンタは俺が指示しない限り、ヤバくても逃げるなよ? 下手に動かれると却って守れなくなっちまうからな」


「つまりいつもの通りだギョ? わかってるギョ」


「ならいい。ティア、明かりを」


「ええ」


 隊列を整え、俺達は闇の中へと足を踏み入れる。中も外も同じ暗闇だというのに、何故かこちらの方が光の広がりが悪く、おまけにどうにも肌寒い。


「何か、進んでいるって言うよりも落ちてるって感じね。床に足がついていなかったら、上も下もわからなくなりそう」


「そうだな。奥に行くのは簡単でも、絶対に外には出させないって感じか?」


「なんで二人ともそういう怖いことを言うギョ!? ここはもっと楽しい話をするべきだギョ!」


「この状況で楽しい話は、なかなかの無茶ぶりだろ。ギンタは何か思いつくのか?」


「ギョォォ……? じゃ、じゃあ二人はお宝が手に入ったら――」


「シッ!」


 せっかくギンタが話し始めてくれたが、俺はそれをすぐに制する。目の前は未だ闇。だがその先に、確かな気配と違和感を感じる。俺は背後に手振りで警戒を促すと、そのまま慎重に歩を進め……そこに待っていたのは、黒い世界で鮮烈なまでに赤い玉座に腰を下ろし、半身を白いナニカに冒された俺の姿であった。


「来た、か…………」


「ギョェェェェ!? エド!? 凄く調子が悪そうなエドがいるギョ!? え、でもエドはこっちにもいるギョ!? ど、どうなってるギョ!?」


「落ち着けギンタ。あれは多分……魔王だ」


「魔王!? 魔王って、ずっと昔に『丘の人(エルタータン)』に封印されたっていう、あの魔王ギョ!? 何でそんなのがここに……あと、何でエドと同じ顔をしてるギョ!?」


「悪いギンタ、その辺の説明は気になるならあとでしてやるから、今はこいつから話を聞くのを優先してもいいか?」


 目の前の魔王は明らかにやつれており、俺の直感があまり時間が残されていないと告げている。ギンタには悪いが、いつでもできる話に時間を割きたくはない。


「わ、わかったギョ……でも後で絶対に教えるギョ! オレとエドは仲間なんだから、隠し事は無しギョ!」


「仲間、か……フッ、そうだな。約束する」


「じゃあ黙って聞いてるギョ!」


 そう言って、ギンタがわかりやすく口を閉じる。その配慮と心持ちが嬉しくて俺は内心で笑みを零しつつ、改めて魔王に向き直った。


「悪いな、待たせた」


「待たせた、か……フフフ、ああ、待ったとも。本当に長い間……だがギリギリ間に合ったようだ」


「そいつはよかった。ちなみに間に合ったってのは……」


「勿論、この世界の崩壊に、だ」


「っ!?」


 魔王の言葉に、俺達全員が息を飲む。特にギンタはさっきの約束を守るためか、必死に口を押さえて我慢している。


 もっとも、その台詞は魔王の姿を見た時から予想できていたものだ。半身を冒すあの白いものには、嫌というほど見覚えがある。なるほど、もし俺が「隔離」を失敗していたら、あんな感じになってたってことか……


「時間はあまり残されていないが、語らねばならぬことも多い。それにその……ギンタか? その者だけは、この世界の住人だろう? ならば彼にはきちんと話をしておきたい」


「お、オレに話ギョ?」


「そうだ。だからこそ……ふぅ、最初から語るか」


 短く息を吐いてから、魔王が玉座に背を預ける。ただし動いているのは右半身だけで、左半身は白いナニカが根を張るように体を侵食しており、指先一つすら動く気配は無い。


「どのくらい昔なのか……この世界には、かつて地上があった。水中が主であることは当時から同じだが、それでも三分の一ほどは地上だったのだ。そしてそこに、私は部外者として降り立った。


 当時の私には自我と呼べるほど高度な思考はなく、それこそ赤子の癇癪のように特に理由も無く暴れていたのだが……その結果、私は水の中より来たる勇者に討ち取られてしまった」


「えっ、負けたのか!?」


「そうだ。魔王が勇者に倒される……そんなに不思議か?」


「いや、それはいいんだが、ならどうしてってのが……続きを話してくれ」


 二周目の最初の頃、俺が追放された後の世界でアレクシスやワッフルは魔王を倒している。なので魔王が勇者に負けることそのものは不思議ではないが、ならば何故こいつはここにいるのか? そしてどうしてそのタイミングではなく、今俺がこの世界にやってきたのか? 謎は尽きないが、その答えは急くまでもなくまもなく語られるはずだ。


「わかった。勇者に倒された私は、魂……と言っていいのかはわからないが、純粋な力の固まりとしてこの世界に漂い、そしてとある存在に出会った。この世界を生み出した、神、ヌオーだ」


「神様に会ったギョ!? っていうか、神様って本当にいるのかギョッ!?」


 流石に我慢も限界だったのか、遂にギンタが声をあげた。俺達が視線を向けると慌ててその口を両手で押さえたが、魔王はそんなギンタに柔らかい顔で声をかける。


「ああ、いるぞ。ヌオーは今も、お前達を見守っている……が、それはまた別の話だ。とにかく私はヌオーと会い、そして意思を交わすことができた。


 互いに時の流れなど無関係な存在。刹那とも永遠とも言える時を語り合い、気づけば私には確たる自我が形成されていて……故に私はヌオーに言った。『私が私となれたことに礼をしたい。何か私にできることはないか?』とな。


 するとヌオーは『水の上』を任せたいと言ってきた。水中は己の領分だが、その外は違うからと。私はその願いを聞き届けることにし、ヌオーはそのために必要な肉体を用意してくれた。


 その結果、私は外様の存在ではなく、この世界の一員となった。世界の理に組み込まれ、この地で生きて死ぬ存在……お前達が『丘の人(エルタータン)』と呼ぶモノは、全て私の眷属なのだ」


 突如として判明した、何ともスケールの大きな事実。驚きを内に押し込めつつ、俺達は魔王の話の続きを待った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ