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【Web版】追放されるたびにスキルを手に入れた俺が、100の異世界で2周目無双  作者: 日之浦 拓
第二〇章 水の勇者と深淵の王

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いきなりドカンは恐ろしいので、まずはコツコツ積み上げたい

 初日にして「割と動ける」ということが判明したことで、その後の訓練もまた順調に進んでいった。一週間の慣らしを終え、俺達は勿論、未成年ということでギンタも経験のなかった野営を含む軽い遠征も行い、露見した問題点を潰しながら数をこなすことで習熟していって……俺達がこの世界に来てから、おおよそ二ヶ月。その日遂に、俺達は本格的な遺跡探査に踏み出すこととなった。


「ほ、本当に借りてしまったギョ……」


「何だよ今更。借りる前はスゲーはしゃいでたじゃねーか」


「それはそれで、これはこれなんだギョ!」


 動揺するギンタが声をあげているのは、椎の実を横倒しにしたような乗り物の中。これこそがこの世界の「船」であり、俺達の言うところの馬車に相当する乗り物だ。


「これが船の中なのね……凄い、前が透けて見えるわ!」


 言うまでもないことだが、当然船にはティアも乗っている。そしてティアの注目は、向こうが透けて見える不思議な材質の何かだ。


「硝子……じゃないわよね? これって何でできてるの?」


「グラスシュリンプの甲羅だギョ。軽くて丈夫で向こうが見えるから、船の前は大体これだギョ」


「へー。便利なものがあるのね」


 ちなみに、船の区画は大体四つに分かれている。下部前方が倉庫で、後方が動力室。上部前方が操舵室で、後方が待機室だ。透明な材質でできているのは上部前方のみで、それ以外は深い緑色の何か……おそらくこれも魔獣の素材だろう……で構成されている。


「それじゃ、早速出発だギョ! エド、どっちに進めばいいんだギョ?」


「ちょっと待て」


 問うてくるギンタに、俺は「失せ物狂いの羅針盤(アカシックコンパス)」で方向を確認する。相変わらず目的地までの距離はわからねーが、今回の指定は「売却価値が一〇万シェル以上になる遺物の存在する、最も近い遺跡」なので、そこまで遠いということは無いはずだ。


 ちなみに、シェルはこの世界の通貨で、一〇万シェルは俺達の感覚とこの世界の物価を照らし合わせると、おおよそ銀貨一〇枚ほどになる。正直船のレンタル料と大差ない金額ではあるが、あまり高い遺物を対象にしてしまうととんでもない遠方まで行かされる可能性もあるから、初手としてはこのくらいが妥当だろう。


「何回見ても不思議だギョー。そのなかに遺跡の情報が入ってるギョ?」


「ああ、そうだぞ。一回でも行ったことがある範囲なら正確な場所もわかるんだが、流石にその範囲にはなかったからなぁ」


 戦場なんかで便利な「旅の足跡(オートマッピング)」と「失せ物狂いの羅針盤(アカシックコンパス)」の組み合わせは、当然だが「旅の足跡(オートマッピング)」が反映された範囲でしか活用できない。なので今回みたいに初めての場所に赴く場合は、当然ながら使えない。


「地形は時間が経つと変わっちゃうし、それは仕方ないギョ」


「だな。で、方角は……あっちだな」


「了解だギョ! それじゃ、発進するギョーッ!」


 ギンタが操縦桿の足下にあるペダルを踏むと、それに合わせて船が小さく振動をして動き出す。水流を生み出す魔導具が、船体後部の穴から水を噴き出し始めたのだ。


「おおー、景色が流れてく! 思ったより速いのね?」


「地上を行く馬車と違って、道とか障害物とか無いしな。魔導具だから疲れたりもしねーし、こりゃ快適だ」


「ギョギョギョ、これはトレジャーハンター仕様の船だから、速くて当然ギョ。普通の人が使う荷船ならもっと小さいし、動かすのもアクアタートルとかの獣だから、動きもゆっくりだギョ」


「あ、やっぱりそっちもあるのね」


「というか、そっちの方がずっと多いギョ。水流を生み出す魔導具は結構な数見つかるとはいえ、それでも遺物は遺物だから相応の値段がするギョ。大きな商会が高速かつ大量に荷物を運ぶでもなけりゃ持て余すだけだギョ」


「ふーん。いつかそっちの船にも乗ってみたいわね」


 ギンタの説明に、ティアが楽しげな顔でそんなことを呟く。そうして雑談を続けていれば、船はあっという間に目的の遺跡へと辿り着いた。徒歩……というか普通に泳ぐなら一週間かかるような距離も、この船なら五時間ほどだ。


「着いたギョ……そして、本当に遺跡があったギョ!」


「そりゃあるだろ。何だ、信じてなかったのか?」


「そういうわけじゃないギョ。でも実際にあったら、そりゃビックリするギョ! じゃあ早速調べるギョ!」


 本当に遺跡があったことに興奮したギンタが、止める間もなく船を飛び出して行く。慌てて俺達も追いかけると、そこではしたり顔で遺跡の壁を調べるギンタの姿があった。


「ギョギョォ、なるほど……年代的には最後期の遺跡ギョ」


「へぇ、わかるのか?」


「もの凄ーく大雑把な分け方くらいでならわかるギョ。誤差は一〇〇〇年以内に収まってるはずだギョ」


「えぇ……? それはわかるって言えるの?」


「細かいことを気にしたら駄目なんだギョ! 最近人が出入りした形跡もないし、これは本当に期待できるギョ! さあ、遺跡探査の始まりだギョ!」


「一〇〇〇年を細かいなんて、エルフでも言わないわよ……フフッ」


「ま、本人が楽しそうだからいいんじゃねーか?」


 張り切って遺跡に入っていくギンタの背を、肩をすくめて笑いながら見送る。勿論俺達もすぐに後を追い、そうして探査が開始された。四角い遺跡の内部はつるりとした触感の白い壁で構成されており、表面を覆っている水草や苔は指でこするだけで簡単に落ちる。


「不思議な材質の壁ね。これも船のやつみたいに、魔獣の甲羅とかなのかしら?」


「どうだろうな? 確かに金属とは違う感じだけど……」


「最後期の遺跡の壁は、大体みんなこういう感じなんだギョ。ちなみに一番古いのは金属の壁で、次が石の壁だギョ」


「? 石と金属が逆じゃないの? 何でそんな順番なのかしら?」


「さあ? そういうのは歴史とかを調べてる人の領分だから、オレにはさっぱりわからないギョ」


「ふーん。本当に謎が多い文明……種族? なのねぇ」


 話しながらも、俺達はきっちり遺跡内部を調べていく。バラバラに分かれた方が探索効率はいいだろうが、未知の場所で一人になるなんて迂闊な真似はしない。慎重に、かつ丹念に、ギンタの言っていたセオリーも無視して、崩れた瓦礫の隙間まで調べに調べ尽くし……


「……お? おい、来てみろ」


 瓦礫の下、床の上に俺は小さな扉のようなものを見つけた。俺が声をかけると、二人も寄ってきて顔を寄せ合う。


「何だギョ? 床に四角く線が引かれてるギョ?」


「いや、これ多分扉か蓋か、そういうのだと思う。ほら、叩くと少しだけ音が違うだろ?」


「確かに……でも、取っ手とかは無いわよ? どうやって開けるの?」


「それなんだよなぁ……」


 一辺が五〇センチほどの正方形であるそれはぴっちりと閉じており、指で触ると壁と同じくツルリとした触感がある。境目である線の部分にすら何の引っかかりも感じないので、これを引っ張り上げるとかは無理だろう。


「実は押したら開くとかは無いギョ?」


「それは流石にねーだろ。てかそれで開くなら、適当に誰かが上を歩くだけで……いや、ひょっとしてあるのか?」


 地上であれば、誰かが踏むだけで開いてしまう欠陥品だ。だがここは水中。みんなが泳いでいるとか、仮に踏んだとしても大きく減じられた体重しかかからないなら、思い切り押し込まなければ反応しないということはあるかも知れない。


「ふむ、やるだけやってみるか」


 線の内側、開くと思われる部分に、俺は両手を当ててグッと力を入れる。が、床は不動であり、特に変わった手応えはない。


 チッ、流石にそこまで安直な仕掛けじゃねーか。その程度なら誰かがとっくに開けてても……ん?


「今ここ、光らなかったか?」


「え、そう? ごめんなさい、気づかなかったわ」


「そっか。でも、うーん……?」


 周囲が明るいせいで極めてわかりづらかったが、俺が手を置いて三秒くらい経ったところで、不意に線の内側に青白い光が走ったような気がしたんだが……光の反射か? いやでも、水全部が光源になってるような不思議空間で反射なんて――っ!?


『魔王因子の存在を確認。ゲートキーΩ(オメガ)を解放します』


「ぬおっ!?」


 頭の中に響いた、不思議な声。それと同時に俺が手をついていた部分がスッと消え去り、俺はそのまま無様に床に転げてしまった。

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勇者に反応して開く扉はそこそこあったけど、ここにきてエドに反応する扉とは!
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