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【Web版】追放されるたびにスキルを手に入れた俺が、100の異世界で2周目無双  作者: 日之浦 拓
第一八章 善なる破壊者と英雄魔王

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初めての勝利

今回は三人称です。ご注意ください。

 一〇〇人の魔法師から放たれる、一〇〇の攻撃魔法。炎が、氷が、雷が……雷の魔法が勇者の特権なのはバーンの世界だけなので、他の世界では普通に使う者がいる……凄まじい勢いで中央に立つエドに向かって飛んでいく。


 だが、そこに本来あるべき爆発や轟音は存在しない。その全ての攻撃魔法が、エドの体に触れた瞬間消えてしまうからだ。


「ほ、本当に消えた!?」


「呆けるな! 休まず魔法を撃ち続けろ!」


「は、はい!」


 勿論、一人が一発撃てば終わりというわけではない。話に聞いていたとはいえ、あれだけの魔法を打ち消す存在に驚愕していた魔法師の男が、近くにいた同僚の声に慌てて詠唱を再開する。


 二発、三発と、重ねて放たれる攻撃魔法。それは即ち二〇〇、三〇〇という大軍勢すら消し飛ばすほどの魔法の嵐であるが……中央にてそれを受けるエドは余裕の笑みを浮かべている。


「ハッハー! どうしたどうした? まだまだ全然余裕だぜ!?」


 魔法の飛翔音にかき消されて聞こえないだろうが、それでもエドは哄笑をあげる。その身には目には見えずとも、特異な力を纏っている。


「うむ、いい感じに魔力が集まっているな! さあ人間共、全ての力を振りしぼってあの男に魔力を叩きつけるのだ!」


「「「オーッ!」」」


 エドの持つ追放スキル、「吸魔の帳(マギアブソープ)」。その身に触れた全ての魔法を吸収して無効化する能力だが、エド自身は魔法を使えないし、魔力保有量も相応に低い。


 ならば無効化して吸収した魔力は何処にいくのか? エド自身の内側に入る余地がないのなら……その答えが今ここに在る。


「……そろそろいいだろう。おい小娘!」


「わかったわ!」


 エドの周囲には、吸収するだけして行き場の無くなった魔力が噴き出し渦巻いている。可視化されるほどの青白い光が尖塔のようにそびえ立つ様を見た黒騎士の言葉に答えるのは、この場でもっとも優れた精霊使いであるルナリーティアだ。


「さあみんな! 今こそこの地に精霊を呼び戻す時! 最も古き盟友に、我らエルフの声を届けよ!」


「「「オーッ!」」」


 その呼びかけに応じて、魔法師達と入れ替わるように一〇〇人のエルフが姿を現す。その全員が詠唱を始め、辺り一帯の精霊の力を喚起していく。


魔力(ごはん)は一杯用意したわ。だからお願い、力を貸して……!」


 否。それは詠唱ではなく呼びかけ。荒廃し弱り切った土地で消えかけていた精霊達はエルフの呼びかけにエドの周囲へと集まり、代わりに円陣の外側からは完全に精霊の力が失われてしまう。


 故に、これは危険な賭け。失敗すれば死にかけた大地にトドメを刺す行為となるが……その恐怖と責任を背負ってなお、エルフ達は力を振るうのを躊躇わない。


 一〇〇〇年の汚名を背負う危険があろうとも、健全なる明日の世界のために。エルフ達の願いは果たして結実し、エドが纏う高濃度の魔力を得て、契約してもいない精霊達がこちらもまたうっすら視認できるほどにその力を高めていく。


「…………いいわ! 次をお願い!」


「よかろう! さあ出番だぞ神官共! 貴様等の祈りを足蹴にした野蛮なる神もどきに、真の信仰の力とやらを見せつけてやるがいい!」


「「「ハッ!」」」


 黒騎士の呼びかけに、奥に控えていた一〇〇人の神官達がエルフ達の隣に並んでいく。


 日々神に祈り、神の教えを説く彼らにとって、羽付きの存在は決して認める事のできないものだ。なかには正義には犠牲がつきものだと言う者も、そしてその犠牲が自分であっても喜んで受け入れるというような者もいないわけではないが、世に生きる大半の人々はそうではない。


 故に神に仕える神官達にこそ、酷い混乱が広がった。あんなものは神ではないと否定する者、泣いて許しを請う者、ただひたすらに「何故?」と問い続ける者……様々な者が己の信仰に迷うなか、ここに並ぶのはその全員が己の内に信仰を見いだした者だ。


「外なる神がどうであろうと、我が神は我が内にあり!」


「人々を守り世界を救う! それこそ我が信仰なり!」


「世界に未来を! 人に希望を! 神とは何気ない日々の笑顔にこそ宿るのだ!」


 それは「羽付き」の元となった神に向けた祈りではない。彼らの信じる神が実在し、神としての力を持っているのかは誰にもわからない。


 だが彼らの祈りは確かに届き、エドに向かって癒やしの力が放たれていく。それもまた魔法であればエドの纏う「吸魔の帳(マギアブソープ)」により無効化、吸収されてしまうが、「世界を癒やす」という単一の方向性を持った魔力が精霊達に注がれることで、不確定だった精霊の力までもがその方向性を定められていく。


「凄い凄い! これなら、これならきっと…………エド!」


「最後の仕上げだ! やれ、我が本体よ!」


「おう!」


 ルナリーティアと黒騎士……いや、その場にいた全員の想いを受けて、エドはずっと手に持っていた一本の枝を地面に突き立てた。


 それはとあるエルフの里にて精霊樹となっていた、キルキアと呼ばれる木の枝。奇しくもルナリーティアの生まれた里の精霊樹と同じ種類だったその木は、羽付きの攻撃によって無残にもへし折れ、その力を失ってしまっていた。


 だが元とはいえ精霊樹。かつて多くの精霊が宿り、多くのエルフ達の惜しみない愛が注がれていたそれは今再び大地につながり、その細い枝に溢れんばかりの精霊の力が満たされて……そして奇跡は起きた。


「うおっ!?」


 突然成長を始めた木に、エドが驚いてその場を飛び退く。その間にも枝はグングン大きくなり、太い根は大地を走り伸びた枝葉には青々とした葉が茂っていく。


 三メートル、五メートル、キルキアの枝はドンドンと成長して……一〇メートルほどの大木となったところで成長を終えると、その身からパアッと光を放った。


 瞬間、木の根元から荒れ果てていた大地に柔らかな緑の草が生えていく。それは木と周囲の術者のちょうど中間、半径一〇〇メートルほどのところまで広がったが、そこで木が力を使い果たしたかの如く光を失い、草原の拡張はそこで終了した。


「……ふむ、これが限界か」


 それから五分ほど待ち、これ以上何も起こらないことを確認すると、黒騎士は飛行術式を用いて空を飛び、新たな精霊樹の上に移動した。そうして睥睨するように周囲を見回してから、大声で人々に語りかける。


「聞け! 下等な人間共よ! そして見るがいい、この光景を! 貴様等が総力を結集した結果がこれだ。屋敷の一つも建てれば終わりのわずかばかりの土地と、力を使い果たした木が一本。これが貴様等の成果であるわけだが……」


「……………………」


 黒騎士の微妙な言い回しに、人々の間に沈黙が満ちる。だが黒騎士はそれを一切意に介さず更に言葉を続けていく。


「誇れ! 神の意志を騙る羽付きの汚した土地を、貴様等人間が蘇らせたのだ! わかるか? 高尚な神の力に、下等な人間の力が抗い勝利したのだ!」


「……勝利? 俺達、勝ったのか?」


「そうか、そうだよ! だって見ろ、地面に草とか生えてるじゃん!」


「草って……でも、そうだよな。周り中何処もかしこも荒れ地だけだけど、ここには緑が蘇ったんだ」


 ざわめきが人々の間に広がる。目の前で起こった急激な変化に、その意識がようやく追いついていく。そしてその最後の一押しをすべく、黒騎士が抜いた剣を天に掲げて宣言する。


「もう一度言おう! 作戦の第一段階は成功! 人は自らの手で世界を蘇らせる礎を手に入れたのだ!


 照覧せよ! 歓喜せよ! 我々の…………勝利だ!」


「お……お…………」


「「「ウォォォォォォォォ!!!」」」


 湧き上がる歓声は大地を揺らすほどの勢いで響き渡り、何もない荒野に勝利の雄叫びがこだまする。


 こうして人と魔王の共同作戦は、その最初の一歩を見事成功で収めたのだった。

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