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【Web版】追放されるたびにスキルを手に入れた俺が、100の異世界で2周目無双  作者: 日之浦 拓
第一章 二度目のはじまり

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遅いよりは早い方が好感度が高い。が、あまりにも早すぎては愛想笑いすら浮かばない

 真なる聖剣の入手という新たな目標を得たことで、俺達は早速動き始めた。といっても俺の「失せ物狂いの羅針盤(アカシックコンパス)」で聖剣の在る場所はわかっているわけなので、あとはただ指示された方向に向かって進むだけだ。


 そうしてアトルムテインの町を後にしてから、二週間。俺達の目の前には地面に突き立つ聖剣が存在していた。


「うわ、本当に石に刺さってるじゃん。スゲーな」


 霧の立ちこめる深い森を抜けた先。突如出現した開けた場所の中央にはポコッと台座のように石が突き出しており、そこに刺さった聖剣と思わしき剣は風雨に晒され続けているはずなのに錆び一つ浮いていない。


「というか、何故こんな場所にあって今まで見つからなかったのだ? ワシの筋肉にも何の反応もなかったぞ?」


「筋肉は知らないけど、森全体に惑わしの魔法がかかってたわね」


「? それって逆に目立つんじゃね?」


 ぱっと見普通の森なのに全域に幻惑系の魔法がかかってるなんて、何かあると大声で叫んでいるようなもんだ。そんな場所を誰も調べない理由こそ思いつかなかったのだが、俺の疑問にティアはニヤリと笑って答えてくれる。


「そうね、凄く目立つわ。でも森の魔法を解くと、今度は生えている木の何割かにかかってる別の魔法が発動するようになってたのよ。で、幻を突破したと思っている人達を、如何にも何かありそうな湖に導いていたみたい。ほら、さっき通ったでしょ?」


「ん? ああ、そう言えば……」


 ティアの言葉に、ここに来る途中で通りかかった湖のことを思い出す。森の中なのに落ち葉一つ沈んでいない透明な水を湛える、真円の湖。あからさまに怪しかったのだが、俺の「失せ物狂いの羅針盤(アカシックコンパス)」がそこに聖剣はないと告げていたので、俺達はそれを特に調べることもなく通り過ぎていた。


「迷いの森を抜けた先にあんなのがあったら、誰だってあそこに何か秘密があると思うでしょ? 実際精霊の力が満ちている感じだったから、あの水には特別な力があったと思う。あれで回復薬とか作ったらそれだけで高い効果が得られるんじゃないかしら?


 ただ、それを持ってると精霊の力が干渉してこの場所までは辿り着けないようになってたんだと思う。エドの案内で先があるって知ってなかったら、多分私も気づかなかったと思うわ」


「なるほど。魔法を解除した先には、ちゃんとそれに見合った報酬がある。だがそれを手にすると真なる最奥には辿り着けないと……そりゃ騙されるわ」


 何処の誰が仕組んだのか知らないが、なかなかの悪辣……いや、狡猾さだ。とはいえ肝心の勇者すら辿り着けないのはやり過ぎだと思うが。


「なあアレクシス。お前なんか知らなかったの?」


「……姿隠しの森の奥に、清浄なる泉あり。その最奥には勇者の力が永き眠りについている」


「あるのかよ!? なら探せよ!」


「探したさ。最奥……つまり湖の底(・・・)をね。そうして見つけたのがこれさ」


 思わず突っ込んだ俺に、アレクシスが鎧の首元から金の鎖に繋がれた翡翠のペンダントを取りだして見せてくる。


「これには身につけた者の傷を癒やす力があってね。僕自身がここに来たのは初めてだけど、調査隊がこれを持ち帰ったことでその話は完結させてしまっていたんだよ。まさかその先に本物の聖剣が眠っていたとはね……」


「あー……」


 疲れたように苦笑するアレクシスに、俺もまた言葉を失う。まあ、うん。そうだよな。困難を突破し、言い伝え通りに探索していい感じのお宝が手に入ったら、それで納得しちゃうよな……ホントに底意地悪いな、これ考えた奴。何で勇者まで騙すんだよ。


「まあ、あれだ。強く生きろ?」


「フンッ! 君に言われるまでもない!」


 ポンと肩を叩いた俺の手を、アレクシスが鼻を鳴らしてパチンと叩き落とす。うむうむ、空元気も元気のうちだぞ。


「……エドって、本当にいつの間にかアレクシスと仲良くなったわよね? 何で突然そんなに?」


「フッフッフ、ティアよ。男の友情に時間は関係ないんだぜ?」


「そうだな。全裸で筋肉と筋肉と触れ合わせれば、その瞬間から筋肉仲間だ!」


「えぇ、エドとアレクシスって、そんなことしたの……?」


「してるわけねーだろ! いい加減なこと言うなよオッサン!」


「ガッハッハ! 筋肉は全てを解決するのだ!」


 あの日アレクシスに認められてから、俺はアレクシスと普通に会話するようになった。するとそれを聞いたゴンゾのオッサンが「アレクシスと普通に話す男が、ワシにだけ丁寧に話してどうするのだ! 寂しすぎて筋肉が泣くぞ!」と喚いたので、今の俺は勇者パーティの全員と普通に話すようになっている。


 ……が、勿論筋肉は関係ないし、触れ合ってもいない。「白い世界」に戻される度に体の時間が巻き戻る俺としては、鍛え上げた肉体に対する憧れというのがなくもないが、それとこれとは別の話だ。


「てか、もういいからさっさと抜けよアレクシス!」


「うむ……いや、そうだな。なあエド、試しに君が抜いてみてくれないかい?」


「は!? 俺? 別にいいけど」


 アレクシスに言われて、俺は石に突き立った聖剣の柄を握り、力を込めて引っ張る。が、当然ながら聖剣はびくともせず、「実は俺にも勇者の適性が!?」みたいなことは起こらない。


 ……なお、「彷徨い人の宝物庫ストレンジャーボックス」を始めとした追放スキルを駆使すると、抜けないまでも手に入れる(・・・・・)だけならばできそうだったが、流石にそんなことはしない。いや、アレクシスが万が一聖剣を抜けなかったら考えるけども。


「んぎぎぎぎ……抜けねぇ」


「そうか……」


「なら次はワシだな!」


「あ、私もやってみたい!」


 何故か少しだけホッとしているアレクシスを尻目に、ゴンゾのオッサンとティアもまた聖剣を引き抜こうとするが、やはり聖剣は抜けない。


「ぬぅ、ワシの筋肉でも抜けんとは……」


「残念だけど、当たり前よね。ほら、次はアレクシスの番!」


「ああ……」


 にこやかに場所を譲るティアに、アレクシスは聖剣の前に立つとその柄に手を掛ける。そのまま大きく深呼吸を繰り返し、その手に力が込められると……


「動いた!? 凄い、抜けてきてる!」


「うぉぉ! 頑張るのだアレクシス!」


「いけ! やれ! お前ならできるぞアレクシス!」


「ええい、うるさい! 少し黙って見ていてくれたまえ! んっ、ぐぅぅぅぅ……っ!」


 ズルッ、ズルッと少しずつ聖剣が引き抜かれていき、程なくしてその切っ先が石から離れる。そうして遂に全貌を露わにした聖剣をアレクシスが掲げると、その体が突如として光に包まれた。


「これは……っ!? 力が、溢れてくる……!?」


「おいおい、何か浮いてねーか?」


「あっ、本当だ! アレクシスが浮いてる!」


「ワシでもできぬ空中浮遊を為すとは、聖剣の筋肉とはそれほどなのか!?」


「聖剣の筋肉……っ!?」


 無機物にすら筋肉を求めてくるゴンゾの言葉に戦慄を覚えつつも、俺はほんの数センチほどとはいえ宙に浮かんだアレクシスを見つめる。まるで光の繭に包まれているかのようなアレクシスだったが、その光が徐々にアレクシスの体へと吸収されていき、程なくして全ての光を取り込み終えたアレクシスの体がストンと地面に落ちてくる。


「……………………」


「おいアレクシス。大丈夫か?」


「……ああ、問題ない」


 そう言いながら、アレクシスが近くの木に向かって横薙ぎに聖剣を振るう。するとその軌跡が輝く刃となって飛んでいき、大人の胴体ほどもある太さの木が三本くらい纏めて切り飛ばされた。


「うおっ!? 今の、『月光剣(ムーンスクレイパー)』か?」


「違う。何も意識せず、ただ剣を振るっただけだが……そうか、これが聖剣の、そして勇者の本当の力ということか」


 聖剣を握る手を、アレクシスがジッと見つめる。隠しようのない喜びと高揚に満ちた表情は、いつものアレクシスとは違って新しい玩具を貰った子供のようだ。


「しばらくはこの力に習熟する必要があるだろう。今のままじゃ無意識の攻撃で君たちを巻き込んでしまう可能性があるからね。でもそれが終われば……」


 そこで一旦言葉を切ると、アレクシスが力の籠もった視線を俺達に向けてくる。


「魔境だ。一気に魔境を抜け、魔王を倒す! 今の僕ならきっとやれるはずだ!」


「おお、遂に行くのか!」


「エドもいるし、今の私達ならきっと行けるわ! ね、エドもそう思うでしょ?」


「あ、ああ。そうだな」


 にわかに盛り上がる三人に対し、俺は曖昧な笑みを浮かべる。確かにこれだけ強けりゃ魔境くらい抜けられるだろうし、俺がいるから荷物持ちが逃げるってことも起こりえないんだが……


(ヤベェ、こんな一気に省略されたら、追放されるタイミングがねーぞ!?)


 こればっかりは誰とも分かち合えない悩みに、俺は内心で思いきり頭を抱えることになった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 筋肉の万能性。 やはり筋肉…… 筋肉は全てを解決する(濁った目
[一言] 筋肉親父の時もエピソード毎に熱く滾る浪漫を感じてましたが…こちらも開始数話でがっちり心を掴まれました。甲乙つけがたい…。
[一言] 過去に遡ってやり直す系も大好きです 楽しく拝読させて頂きます
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