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【Web版】追放されるたびにスキルを手に入れた俺が、100の異世界で2周目無双  作者: 日之浦 拓
第一章 二度目のはじまり

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新しい玩具を手に入れたら、はしゃぐのはむしろ義務ではないだろうか?

「さて、じゃあこれが最後です」


 そう前置きをして、俺は鞄から「彷徨い人の宝物庫ストレンジャーボックス」経由で最後の武具を取り出す。だがそれを見た二人は驚きに目を丸く見開く。


「え、何それ!?」


「刃のない直剣……というか、ミスリルの棒? おいエド、これはどうやって使うんだい?」


 俺が手にしているのは、銀色に輝く剣……のような形のもの。と言うのも刀身と言うべき部分がただの四角い棒になっており、形こそ剣に近いがこのままでは棍棒のように殴る事しかできないからだ。


「これは……っと、流石に室内で振り回すわけにもいかないんで、ゴンゾ様と合流して試し切りといきませんか?」


「あ、それいい! 私もこの剣、もっとちゃんと使ってみたい!」


「ふむ、いいだろう。ゴンゾならどうせすぐに見つかるだろうしね」


「じゃ、そういうことで」


 あっさりと話がまとまり、俺達は宿を出て町を歩く。すると微妙に町がざわついており、その騒ぎを追いかけて町を出れば、町壁のすぐ側でゴンゾのオッサンが雄叫びを上げながら拳を振り回しているのを発見した。


「いたいた。おーい、ゴンゾー!」


「む? おお、お主達か! どうしたのだ?」


「ふふーん。私もエドに素敵な剣を貰ったから、試しに来たの!」


「そうかそうか! おい小僧……いや、エド! お前のくれたこれは実にいいな! まるでワシの筋肉の延長であるかのように腕に馴染む!」


「ははは、それは良かったです」


 いくつかの追放スキルを組み合わせてオッサン専用に造ったものだから大丈夫だとは思っていたが、それでも本人のお墨付きが得られてまずは一安心だ。


「エド! エド! 見て! 水がピューッてしたり! 火がボーってなったりする!」


「はっはっは、そうだな」


 そしてそんなオッサンの横では、ティアもまたはしゃぎながら俺の渡した剣を振るっている。様々な属性の精霊魔法を付与して手応えや効果を確認する姿は何とも絵になる鍛錬風景だが、俺からすると子供がはしゃいでいる姿にしか見えない。


「さて、じゃあ俺も試してみるか」


「あ、そうよ! そのミスリル棒をどうやって使うの?」


 ミスリル棒って……いや、間違ってはいねーけど。だが俺の剣をそんな風に呼べるのは今だけだ。


「フフフ、見てろよ……羽ばたけ、銀翼の剣!」


 ミスリル棒……もとい、銀翼の剣を掲げて俺が叫べば、刀身の片方に銀色の羽が生えていく。それと同時にもう片方が鋭角に体積を減らしていき、最終的には六枚の羽の生えた片刃の直剣へとその姿を変えた。


「何それ何それ!? ズルい! 格好いい!」


「いや、狡くはねーだろ。格好いいのは間違いないけどな。この剣はこうやって刀身の片側に任意の枚数の羽を生やすことで反対側の刃の角度を調節できるようになってるんだよ」


 六枚ほどならごく普通の剣くらいで、最大の一二枚まで生やすと薄命の剣には遠く及ばずとも相当に薄い刀身となる。そこまでいけば大抵のものは一刀両断できるはずだ。


「ふーん。凄いのはわかるけど、何でそんな風にしたの?」


「そりゃお前、刀身が薄くなればそれだけ脆くなるからな。どうでもいい雑魚を切る度に刃こぼれされたら修理が大変だし。


 普段は予備の剣を使うって手もあるけど、せっかく造ったんだから普段使いしたいじゃん?」


「確かに!」


 せっかく心血を注いで造り上げた剣なのだから、使わないのは勿体ない。特にこれは造ったばかりだから、手に馴染ませるという意味でも日常から使い込んでいかねば、いざって時に本領を発揮できない可能性すらある。


「うぅ、私もこの剣を今すぐ使いたい……でも付与魔術(エンチャント)がすむまでは駄目なのよね?」


「ああ。ゴンゾ様に渡したのと違って、ティアのは総ミスリル製だからな。耐久あげる付与魔術(エンチャント)をする前に使うと、割とあっさり折れると思うぞ?」


 銀がミスリルになって高まるのは魔力との親和性なので、魔力が通ることで多少強度が上がったとしても鉄にすら及ばない。柔らかい肉を切り裂くなら問題ないが、手元が狂って骨でもぶっ叩いたらさめざめと泣くことになるだろう。


「うぅぅぅぅ……え、エドは付与魔術(エンチャント)できないのよね?」


「無理だな。俺は魔法使えねーし」


「うぅぅぅぅぅぅぅぅ……アレクシスー!」


 大好きなおやつをおあずけされたみたいな顔で、ティアがアレクシスの方に走っていく。きっと高名な付与術士を紹介してもらうんだろう。どうしてもすぐに使いたいからと適当な店で付与魔術(エンチャント)しない理性が残っているなら、放っておいても大丈夫なはずだ。


「さて、それじゃ俺も試し切りしてみますかね」


 ダバダバ走って行くティアの背を苦笑で見送ってから、俺は「彷徨い人の宝物庫ストレンジャーボックス」から握りこぶしほどの石炭を取りだし、宙に放る。俺の頭より一メートルほど高くまで昇った石炭が、やがて重力に従い落下してきて……それを俺は銀翼の剣で切り払う。


「フッ!」


 ガキンという音がして、石炭が砕ける。一応斬れてはいるが……まあ普通の厚さの刃ならこんなもんだろう。石炭に当たった部分の刃をしっかりと観察するが、刃こぼれもしていない。


「よしよし、いけてるな。なら次は……一二枚だ」


 銀翼の剣を手に「見様見真似の熟練工(マスタースミス)」を起動して、その背に一二枚の羽を生やす。すると限界まで薄くなった刀身は鏡の如く光り輝き、ほんの少し指でこじっただけで割れてしまいそうなほどになる。


「いい薄さだ…………フッ!」


 新しく取りだした石炭を再び宙に放り、同じように斬る。だが今度はキィンという高く澄んだ音が僅かに鳴っただけで、小さな破片一つこぼれることなく完全に真っ二つになった。それを拾い上げて断面に指を滑らせれば、熟練の職人が丁寧に磨き上げたかのようにツルツルだ。


「よーしよしよし! これなら鋼くらいは斬れるだろ。肝心の刀身は……あー、やっぱりこうなるか」


 凄まじい切れ味の代償として、刀身はぱっと見でわかるほどに刃こぼれ……というか、ガッツリ欠けている。これはもう剣の腕がどうとかではなく、素材の強度的な限界なので流石にどうしようもない。


 が、それは想定内。全ての羽を回収してミスリル棒に戻してから再度羽を出現させれば、刃こぼれのない美しい刀身が蘇る。


「ミスリルの消費量も計算通り……これなら最薄でも一〇〇〇回くらいは使えるはずだ。間に合わせとしてはまずまずの出来だな」


「ほぅ?」


 と、そこでいつの間にやらこっちにやってきていたアレクシスが、俺の呟きを聞きつけて小さく声をあげる。そのまま足下に落ちていた石炭の片割れを拾い上げると、その断面を見て涼しげな目を僅かに細めた。


「見事な切り口だ。まさか僕に迫る剣の腕を持っている君が、これほどの鍛冶師でもあったとは……一体どれだけの手札を隠しているんだい?」


「ははは、俺はそんなに大した者じゃ――」


「エド。僕は勇者だ」


「っ……」


 静かな、だが有無を言わせぬ迫力を込めた口調に、俺は一瞬言葉に詰まる。それは今までの俺が……ただひたすらに追放され続け、最後まで成し遂げることのできなかった俺がどうしても持ち得なかったものだ。


「僕の目は決して節穴じゃあないんだよ? これほどの剣であっても間に合わせ……なら君が目指す完成形はどんなものなんだい?」


「あー……そう、ですね。どんなものでも斬ることのできる剣です」


「ふむ、言うだけならば誰でもできるが、実現するとは思えない途方もない目標だ。だが君はそれを実現したんだろう?」


「……何故、そう思われるので?」


「君自身が言ったんじゃないか。これほどの切れ味を誇る剣を『間に合わせ』だとね。通過点や試作品というならともかく、間に合わせという言い方をするのであれば、君は既にこれより優れた剣を造ったことがあるのだろう? 今回それができなかったのは、時間か材料かが足りなかった……ありきたりな理由はそんなところかな?」


「…………どっちも、ですね。どちらも金では買えないものですから」


 薄命の剣を造るために必要な材料のいくつかは、この世界では手に入らない。そしてあの柄を造るには相当な時間がかかる。作り方は俺の頭に入っているが、だからこそこの世界ではどうやっても造れないことも理解できてしまっている。


「そうか…………なあ、エド。君に話したいことがあるんだ。今夜一人で僕の部屋まで来てくれるかい?」


「俺に話したいこと……ですか?」


「ああ、君にだけ……君一人にだけ話したいことがある。皆が寝静まった頃に訪ねてくれ。待っているよ」


「は、はい……?」


 いつも飄々としているアレクシスには珍しい思い詰めたような表情でそう言うと、アレクシスは俺の答えを待つことなくそのまま歩き去ってしまった。あんな顔をされてしまっては、俺にそっちの趣味は無いんだが……などと冗談を言う気にもなれない。


「何だってんだ、一体……?」


 疑問符で頭を一杯にした俺の呟きは、誰に聞かれることもなく風に吹かれて世界に溶けてしまった。

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[一言] そんな二人きりでなんてけしからん
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