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【Web版】追放されるたびにスキルを手に入れた俺が、100の異世界で2周目無双  作者: 日之浦 拓
第一章 二度目のはじまり

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勝ち確の答え合わせは、何故こんなに楽しいのだろうか?

「たっだいまー!」


「……戻りました」


 町にある一番豪華な宿の一室。その室内に入った俺達を出迎えたのは、何とも渋いアレクシスの顔だ。そりゃ新人に試験を出したつもりが、仲間の試験官がそれをガン無視してウッキウキで同行したらこんな顔になるわな。


「おかえり、ティア。で、どうだったんだ?」


「ほえ? どうって?」


「…………そうか。まあ君にその手のことは最初から期待していないから、別にいいんだけどね」


「むーっ! ほら見てエド! アレクシスったら早速意地悪な事を言うのよ!?」


「あはははは……」


 呆れたように首を横に振るアレクシスに、ティアが思いきり頬を膨らませて俺を見てくる。が、俺に出来るのは苦み走った愛想笑いが精々だ。


「では、改めて君の働きを確認させてもらおうか?」


「わかりました。ここに出しても?」


「ああ、構わないよ。それで駄目になるようなものを買ったりしていなければね」


 ニヤリと笑うアレクシスに、俺は特に反応することなく鞄に手を突っ込んで、こっそり発動させた「彷徨い人の宝物庫ストレンジャーボックス」から買い込んだ品々を取りだしていく。


「まずは食料品ですね。ティアさんの話によるとすぐに町を発つということではないらしいので、今回は保存食のみを購入してあります。三ヶ月保つものが一〇日分と、一年保つものが同じく一〇日分です」


 ふかふかの絨毯の上に積み上がっていく食料の山。俺も含めて四人分となると、これだけでも相当な量だ。


「ふむ、梱包もしっかりされてるね」


「そこはきっちり調べましたから。多少割高でしたが、信頼できる大店のものを買い込んできました」


 物というのは、安けりゃいいというわけじゃない。食料という命に直結する物を一山幾らの露店で買いたたくような奴は、世間知らずのお坊ちゃんか石を食っても死なないような強靱な胃腸の持ち主だけだろう。そういう追放スキルも無くは無いが、みんなが普通に食事をしているなか、俺だけその辺の石ころを囓るとか割と本気で泣くので使う気はない。


「で、次は……これです!」


 そんな食料の山を避けて、今度はドスンという音を立てながら大型の魔導具を取り出す。俺の腰の高さまであるずんぐりとしたそれは、当然ながら携帯を前提としたものではない。


「…………明らかに鞄の口より巨大なものが出てきたことは、この際目を瞑ろう。が、これは何だい? 見たところ何かの魔導具のようだけど?」


「フフフ、これは……水を生成する魔導具です!」


「水?」


 ドヤ顔で言う俺に、しかしアレクシスは露骨に眉をしかめる。


「どういうことだい? うちのパーティはティアに水を出してもらっているから、そんなもの必要無いだろう? ティアから聞いていないのかい?」


「違うわよ! 私も何度もそう言ったのに、エドがどうしてもって言って買ったの! これだけで銀貨五〇枚もしたのよ!」


「……理由を聞こうか?」


「勿論。まず最初に、おそらくご存じないでしょうから説明させてもらいますが、中古とはいえこの魔導具で銀貨五〇枚は破格です。新品を買えば普通に一〇倍しますから」


「えっ!? そんなに高いの!?」


「そりゃそうだよ。魔力さえあれば無限に水が出るってのは、そのくらい凄いんだ。言い方は悪いけど、これと同じ働きをしているティアだって、自分の力がどのくらい便利かは実感してるだろ?」


「それはまあ……うん。お水って重いもんね」


 そう、水は重い。にもかかわらず人が生きるには水が大量に必要で、だからこそこういうものが普及する前は、大規模な人の生活圏は水辺に限られていたのだ。


「だが、ティアと同じというのならそれこそ必要無いだろう? まさか転売して差額を儲けるために買った……なんて言わないだろうね?」


「違いますよ! 確かにこいつも魔力を消費しますけど、その分は事前に魔晶石に込めておけば問題ありません。それはつまり、安全な場所で消費した魔力を用いることで、危険な場所での魔力消費を抑えることにも繋がります。


 それに万が一ティアさんが怪我をしたり、何らかの理由でパーティが分断されたりしたときも、これがあれば一定量とはいえどんな場所でも水が確保できます。これから先町から離れた場所での長期活動を想定するなら、たったの銀貨五〇枚でこれを手に入れられたのはかなりの僥倖だと思いますよ」


「…………なるほど。確かに一理あるね」


 説明を聞いて頷くアレクシスに、俺は内心でガッツポーズを決める。見た目ではわかりづらいが、これはかなりの高評価を得られたということだ。


 ま、これは本気で掘り出し物だったからな。一周目の時にたまたま道に迷って辿り着いたあの怪しげな店でこれを見つけた時は、自分の手の中に銀色の貨幣が一枚しかないことに歯噛みしたものだった。


 その時もここに戻ってアレクシスに「あれは絶対いいものだ」と熱く説明してみたけれど、あの時は「ティアがいるから必要無いだろう?」という言葉を押し切ることができず、結果としてこれを買うことはなかった。そしてそれが後の悲劇に繋がったりしたのだが……それはもう昔の話だ。


 ちなみに、万が一これを売っていなかった場合、代案としては大量の水筒を買い込んで水を詰めて持ち運ぶというのを考えていたが、水筒の手入れと管理が極めて煩雑になりそうなので正直やりたくはない。古いのと新しいのを間違えて、一年前の汲み置きを飲んで腹を壊すとか笑えないしな。


「後は細々した消耗品なんかですね。野営の道具なんかは既に皆さんが持っているとのことなので、今回は控えさせてもらいました。くたびれてきているからそろそろ買い換えたいということであれば、ご要望をお聞きしたうえで新しい物を用意しますけど?」


「いや、そこまでは必要無い。流石に日帰りの冒険ばかりをしていたわけじゃないからね」


「なら良かったです。そして最後は……」


 そう言って俺が取りだしたのは、鈍い輝きを放つ鉄の剣。折れてしまった愛剣を下取りに出し……なお銅貨五枚だった……手に入れた、新たな相棒だ。


「ほぅ、ちゃんと剣も買ってきたのか」


「そりゃそうですよ。俺ほどの戦力を遊ばせておくなんて、それこそ馬鹿ですから」


 今日加入したばかりとは言え、俺はもう勇者パーティの一員だ。ならば俺の戦力はパーティの戦力であり、俺が戦うために必要な武器の出費はパーティの資金から捻出して然るべきである。


 もしここで俺が「貰った金で自分の武器を買うなんて……」と不必要な遠慮をして武器を調達しなかったら、おそらくアレクシスはここぞとばかりに俺を罵倒してくれたことだろう。


「だが、見たところあまり質のいい剣とは言えないようだね。正直、僕は君の剣に渡したお金の殆どを注ぎ込むんじゃないかと思っていたんだが……」


「それも一つの手段として考えてはいましたけど、今回はもっといい手段があるので、とりあえずの間に合わせですよ」


「いい手段?」


「はい。つきましては勇者様。遠征の練習と俺を加えた戦闘の習熟、おまけに素晴らしい武具の入手もできるお得なご提案があるのですが……」


「……聞こうじゃないか。何だい?」


 まるで悪徳商人のようにニヤリと笑う俺に、アレクシスが若干引きながら言う。


「アトルムテインに行きません? あそこにね、いーいお宝があるんですよ」


 そうとも、これは悪巧み。自重なんてしてやらない。せっかく二周目なんだから……世界を半年先取りだ。

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