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街道沿いで一台のシンプルでしかし上品な作りの馬車が止まっていた。その車輪は無惨にも壊され、繋がれた馬達も怯え逃げ出そうとするが、馬車から伸びるハーネスがそれを許さない。周りにいる、護衛だろうか?騎士らしき統一された鎧を着た男達が膝をついている。中には既に事切れて倒れている者もいた。その周りを囲う様に装備のバラバラな汚らしい男達が下品な笑みを浮かべていた。彼らはこの辺りでは有名な盗賊団であった。
「おうおうっ!今日はついてるぜ!こんな上等な獲物が取れんだからよぉ!」
「お前らの金は貰って行くぜ!俺たちで有効に使ってやるよ!ガハハハハッ!」
「ついでに中にいる嬢ちゃん達は俺たちで可愛がってやるからよぉ、夜もたっぷりな。げへへへへへッ!」
その声に護衛達は悔しげに顔を歪めた。
どう見てもこちらが劣勢。勝てる隙が無かったのだ。今までなら撃退することができたが今回の襲撃には魔導師がいたのだ。
遠距離から飛んでくる見えない風の刃は容赦なく護衛達を追い詰めていた。
「.....クソっ!こんなところで....。」
「.....せめてお嬢様だけでも!」
再び盗賊達が襲いかかる。
守ろうとするが多勢に無勢、呆気なく馬車の扉は破られ小柄な人影が引きずり出された。
「きゃぁあああああああッ!」
「ギャハハハハハッ!こいつは上玉だぜ!今夜が楽しみだ!」
上品なドレスを身に纏うまだ幼さが残る女性はその顔を恐怖に歪めて涙をいっぱいに溜めていた。
それを嘲笑う様に盗賊は顎を掴み顔を向けさせ、値踏みをする。
「.....ッ!お嬢様!」
女性を掴んでいた男はいきなりの体当たりでよろける。男が女性を手放した一瞬の隙をついて間に入り込んだのは白髪の混じる執事服の男だった。
護身用のナイフを構え盗賊達に向き合う。
残る盗賊はざっと見ても20人。こちらは負傷してない護衛は居らず、立てる者は3名。明らかに不利な状況だ。
盗賊達は勝利を確信し、弄んで殺そうと気味の悪い笑みを浮かべていた。
そこに不釣り合いな間延びした声が響いた。
「すみませーん。通るのに邪魔なんですけどー」
その場にいた全員が視線を声のした方に向ける。
そこには男が一人立っていた。
若いようだが、髭は伸び放題で頬はこけ、服は何かしらの返り血やらで汚れている。どう見ても浮浪者という装いの男は腰に1本の黒い剣らしきものをぶら下げている。
「おいおい、状況が見えねぇのかよ?頭イカれてんのか?」
いち早く復帰したのは盗賊団を指揮していた男だった。
「あ゛?通るのに邪魔って言ってんだよ!?」
浮浪者は気にもとめず、むしろ喧嘩を売りつつ歩いてくる。
「おい、お前ら!この訳の分からねぇ奴を叩きのめせ!状況を解らせてやれッ!」
「「「「「「「「おおッ!」」」」」」」」
盗賊が一人、男に飛びかかった。
そしてそのまま、盗賊の男は倒れ、事切れたのだった。
それを見て指揮していた男は唖然とする。
「.....は?」
何が起きているのか理解出来ないままにまた一人また一人と倒れていく。
訳が分からなかった。
よく見ればいつ間にか男は剣を持っていた。
妙な反りのあるやたら細い奇妙な剣は鈍色に輝いて切れ味の良さを主張していた。
部下が切られている。
理解した時には既に半分もの部下が奴の餌食となっていた。
テンプレ展開ですね。王道が一番考えやすいですよね。
次の更新はきっと11/23ですよ。