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俺と剣と魔法の世界  作者: 小山 静
4/21

3

 








 あれから一週間、俺は幽鬼の様な顔で森の中を彷徨(さまよ)っていた。


 正直に言う。

 異世界なめてた。


 森の中に一歩入ればオーク...二足歩行の筋肉マッチョな豚、やウルフ...目付きのヤバい黒っぽい狼、の魔物が襲ってくる。昼夜問わずだ。


 家は安全だろ?って思うだろうが、俺は馬鹿だった。


 こんなとこに家があっても仕方ないって思って畳んじまったのさ。

 ゲーム内でこの森は俺にとって楽勝だったから必要ない等ととち狂った判断をした訳だ。


 ――本当に舐めてたわ。


 ここはゲームじゃ無い。昼夜問わず戦い続ければ精神が悲鳴をあげる。それに引きずられて動きも緩慢(かんまん)になり、寝不足は判断を鈍らせた。

 幸か不幸か俺にとってこの森の魔物は大したことは無かった。魔法のぶっぱなしてオーバーキルをひたすら続けた。


 ちなみに俺の職業は『魔導師』では無い。『錬金術師』なのだ。

 錬金術師は魔法系職業でありながら、魔導師ほど魔力は無く、防御力や攻撃力も他の職業と比べてそれほど高くない。ちょっと使い勝手の悪そうな職業である。

 だが、魔力さえあれば魔法は使える。レベル上げに(いそ)しんだ俺は錬金術師でありながら剣も魔法も使えるオールラウンダーになっていた。

 但し魔導師でない俺の魔法は魔力をやたら食うのだが。それでも俺は見境無しに魔法で魔物達を蹂躙(じゅうりん)する。


 何故そんな無駄に疲れそうな真似をするか?って。


 ....最初はまともに切りあったのだ。ゲームの容量で楽しく。

 しかしここは現実だった。切れば血が飛び散り鉄の匂いが充満する。

 べしゃり、と音を立てて倒れる姿は生々しい。

 そしていつまで経っても死体は消えることが無い。足場を悪くする一方だった。

 死体に気を取られた俺は(つまず)き、オークの斧を思いっきり袈裟(けさ)斬りに受けてしまった。

 痛いというより熱い。傷口は切られたと理解すると(すさ)まじい激痛へ変わった。

 このままでは殺される。

 それは俺が明確にこの世界での死を予感した瞬間だった。

 オークの仲間に周りを囲まれた俺は無我夢中で魔法を打った。

 選んだ魔法は上級炎魔法。


超爆発(エクスプロージョン)


 ドゴぉおおおおおおおおッ!!!!


 凄まじい音と共に周りにいたオークは消し飛んだ。いや、オークだけじゃない。俺を中心に見渡す限りのクレーターが出来ていた。

 超爆発(エクスプロージョン)は文字通り大爆発を起こし周囲を吹き飛ばす広範囲攻撃魔法である。

 魔法のあまりの威力に怪我さえも一瞬忘れてその場で(ほう)けてしまう。


 肩に走る激痛がここが現実だ、と。遊びじゃ済まさねぇよ、と訴える。


 そこまできてやっと俺はゲームじゃ無いことを、実際に死ぬのだということを理解した。


 そこからは魔法も合わせて撃ち、より安全に死なない様にと必死になった。

 魔力切れを起こし、気絶した一瞬で囲まれたりしたが異空間収納(インベントリ)内のポーションを湯水の(ごと)く使い無理やり生き長らえた。俺は戦略何てクソ喰らえの勢いでただがむしゃらに戦い続けた。

 街のありそうな方角へひたすら歩き続ける。

 地図があったのは幸いだった。自分がどれほど進んでいるのか?どちらへ向かえば良いのか?方角を読む(すべ)を持たない俺にとって歩いた跡がわかるのは非常に有難かった。

 明日向かう方角を確かめて俺は木の根元で低い草に身体を隠して休む。ちゃんと休息出来るわけない。完全に眠るのは危険すぎるのだ。夜は身を潜め、昼間に移動する。ここ数日で学んだ事だ。

 食事は倒した魔物を魔法で焼いた。血抜きはラノベ知識で適当に首を落として逆さ吊り。焼いても生臭さは消えず、調味料も無いからただ純粋な臭い肉の味が口いっぱいに広がる。水は魔法で出せば飲めることが分かった。


 ...但し、不味いが。


 魔法様様である。食べれそうな草を見つけては食し、いつの間にか俺にはサバイバルに順応しつつあった。



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