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兎に角、俺は無事2次試験へ進むことが出来た。2次試験の会場はギルドのさらに奥。闘技場の様な場所だ。周りには観客席の様な作り付けベンチが並び、グラウンドの上だけ天井が空き綺麗な空が見えていた。
これがあるから建物が大きかったのか、と納得のいく広さだ。小さめの小学校のグラウンドくらいあるだろうか?
「ここは演習場です。傭兵の方は申請すれば貸切にも出来ますのでパーティーでの連携の練習などにお使い頂けます。他にも魔法や弓の的当ての出来る部屋や、剣士の方の試し切りが出来る場所もありますのでぜひご活用ください。」
意外と充実した設備がある様だ。案内人によると、さまざまな街のギルドにはここの様な演習場があり、借りることが出来るそう。この街のギルドはこの国で二番目に大きいらしく、設備だけなら国一番だ、と誇らしげに語っている。
演習場には俺より先に若い男女の四人組が居た。
いづれも十代中頃の様に見える。
男2人、女2人で服装から予想するに騎士、剣士、狩人、僧侶と中々バランスの良いパーティーだ。
相手にしているのはスキンヘッドの強面のマッチョだ。
剣士の様で騎士、剣士の二人の男を相手に軽々とあしらっている。隙を縫うように狩人の女が仕掛けるが、見た目に似合わない俊敏な動きでそれを避けていく。僧侶の女は後衛でバフ掛けをやっているようだがそもそも実力に差がありすぎる。
「マスター!次の人来ましたよー!」
「おうッ!ちょっと待ってろ!」
戦闘中にも関わらず余裕のよそ見でこちらに手を振るスキンヘッドの男。よく見れば片手しか使っていないようである。
相手がいくら若く拙いとはいえ、一人で4人相手に片手だけ、というのはかなり不利な状況だろう。
それでも平然と、いやむしろ圧倒している男はかなりの手練であることが伺える。
男が勢いをつけて剣を振れば剣士と騎士は簡単に跳ね除けられ尻餅をつく。
その間の僅かな時間に狩人へ距離を詰めると、トン、と膝裏を押す。それだけでバランスを崩した狩人はその場に座り込み、残るは僧侶だけとなった。
「皆さんっ!?」
次々と倒れる仲間に気を取られた僧侶は自分の首に木刀が当てられていることに気がついた。
完全なる完敗である。
「ほい、おしまい。」
軽い口調で終わりが告げられた。
自分たちとの明らかな実力の差に若者たちは目をキラキラさせて尊敬の眼差しを男に送る。
「すげぇッ!!さすがロドリゲスさんだぜ!」
「これがAランクか....!」
「流石ね、分かっては居ても避けれないわ。」
「一瞬でしたね。」
次々と賞賛の声をあげる少年たちを片手で制し、ロドリゲス、と呼ばれたスキンヘッドの男はにかっと笑う。
「お前らはまだまだ伸びしろが十分にある。これから傭兵になってからも訓練を続けりゃ俺みたいになれるからな。頑張れよ!」
「「「「はいッ!ありがとうございます!」」」」
少年たちをその場に残してロドリゲスは俺のいる場所まで来た。
「おうっ!悪いな、待たせちまって。」
「また無償で指導してたんですか?手合わせにもちゃんと手続きがあるんですから、規則は守って下さい!」
「悪い、悪い。気をつけるわ。」
案内人の言葉を全く悪びれずに適当に流しているロドリゲス。その視線が俺を捉えるとにかっと笑う。
「で、お前さんが今日二組目の登録者だな?」
「そうですよ。ノアさんと仰るそうです!」
答えたのは俺じゃ無く案内人だ。
人の話を聞いてない、とまだぷりぷり怒っている。