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俺と剣と魔法の世界  作者: 小山 静
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 セバスチャンから金を借りる事に成功した俺は早速ギルドへトンボ帰りしていた。

 そして先程の巨乳受付嬢のいるカウンターへ並ぶ。

 相変わらず冷めた態度だが、俺を見ると微かに瞳に哀れみの様なものを浮かべる。


 ――悲しく無い。悲しく無いぞ。


「登録手数料です。」


 借りた5Gを受付嬢へ渡す。

 チラリと確認して受付嬢は一枚の紙を差し出した。


「登録前に筆記試験と実技試験を受けて頂きます。これは受験票です。こちら2箇所にお名前をお願い致します。必要でしたら代筆致しますのでお申し出下さい。」

「...大丈夫です。」


 日本語で良ければ書けるが、この世界と文字が違う為通じるのか分からない。だが一応受験票の名前にカタカナでノアと書いた。

 受け取った受付嬢は一瞬眉を寄せる。元々キツい顔がさらにキツくみえる。


「異国の方でしたか。書いて頂いて申し訳御座いませんが、こちらで代筆させて頂きます。」

「あ、はい。よろしくお願いします。」


 日本語が通じる、という訳では無いらしい。言葉も文字もわかるし話せるが、今の俺は日本語を話しているつもりでいて全く別の言語を操っている事になる。不思議だ。


「試験は本日受けられますか?筆記試験が御座いますので1度勉強されてから後日、という方もいらっしゃいますが。」

「難しい内容なのですか?」

「いえ。良識を説く為のものですので、余程で無ければ合格します。こちらに一応教本が御座います。ご覧になりますか?」

「お願いします。」


 教本には貸出用と書かれている。薄っぺらいそれは一見するとパンフレットの様だ。

 中を開いて見ると、順番待ちはちゃんと並んで。とか、人を殴ってはいけません。とか、ギルド内は走らない。とか確かに良識を説かれていた。

 直ぐに受けても大丈夫そうだ。

 そっと教本を閉じると受付嬢へ返す。


「試験は今日でお願いします。」

「かしこまりました。案内の者が向かいますので、あちらの席でお待ち下さい。」


 そう言って指したのは受付カウンターと買取カウンターの間にある通路に置かれたベンチであった。

 しばらくそこに座っていると女性の職員が一人近づいてきた。


 ――ギルドって言うのは荒くれ者を相手にするイメージだが、女性職員が多くないか?


「初めまして!登録試験の方ですよね?ご案内致します!」

「お願いします。」


 活発そうなポニーテールの女性職員は見た目通りハキハキと元気よく喋る人だった。

 女性職員に案内されたのは奥の小部屋である。入り口の扉横に多目的室と書かれている。中はこじんまりとした簡素なテーブルがあるだけの会議室の様な部屋だ。

 職員が端にまとめて置かれている丸椅子の一つを引っ張り出して座るように促す。

 俺は丸椅子に座った。座ってすぐに女性職員が紙を一枚、目の前に伏せておく。裏側からはよく見えないが何か文字が書かれているようだ。おそらく筆記試験の用紙だろう。


「えっと、ノア様ですね!文字は読めるとのことでしたので口頭での試験となります。そちらの紙に書かれている問題を解けましたら、「第一問、〇〇」といった要領で口頭でお応えください。こちらで記録を取ります。終わりましたら合否を発表致しますので、合格でしたら2次試験になる実技へご案内致します。試験時間は30分です。時間を過ぎる様でしたらまた後日やり直しになるので気をつけて下さい。以上ですが、ご質問はありますか?」

「大丈夫です。お願いします。」

「はい。では行きますよ?....試験始めッ!」


 目の前の用紙をひっくり返して問題を読む。


 第一問

 あなたは依頼を終えて受付カウンターへ並んでいます。すると後から来た他の傭兵が列の間に割り込んで来ました。さて、あなたはこの後どう行動すれば良いでしょう?


 1. 気に入らないので拳で実力の差を知らしめる。

 2. 職員へ相談して対応してもらう

 3. 泣き寝入りする。


 ......簡単過ぎないか?これ。


「第一問、2で。」

「はい。2、ですね!」


 第二問

 あなたは依頼の為、森に来ています。すると他の傭兵が魔物に襲われて負けてしまいそうです。その魔物はあなたの力では倒すことが出来ません。さて、この後あなたはどう行動すれば良いでしょう?


 1. ギルドに戻り傭兵の窮地を伝え、応援を呼ぶ。

 2. 勝てないので見て見ぬふりをする。

 3. 傭兵の金が欲しいので、死ぬまで待ってから持ち物を奪い取る。


 ......3は無いだろッ!?何で追い剥ぎなんだよッ!?


「第二問、1で。」

「はい。1、ですね!」


 全部で5問。どれもこんな調子だった。何かしらおかしい回答と泣き寝入りとギルド関連の3択問題である。他を選ぶ奴がいるのか気になるところだ。


「はい、ノアさんは合格しました!おめでとうございます!」

「....ああ。ありがとうございます。」


 ――嬉しく無いのはどうしてだろうか?





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