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俺と剣と魔法の世界  作者: 小山 静
11/21

10

 


 ノアと名乗る人物が長風呂を満喫している間、セバスチャンは当主の元に走っていた。


「旦那様、御報告が御座います。」

「セバスチャンか、入れ。」

「失礼致します。」


 ハーヴェイ辺境伯当主、ニコラス・ハーヴェイは王族と連なる証である美しい金髪と深い青の瞳の美丈夫だ。いつも通り執務に当たっていたのだろう、机の上は書類で山積みだ。

 書類仕事をこなしつつ、セバスチャンから報告を聞いている。しかし、ノアの話になると手を止めセバスチャンに向き直った。


「.........ということで御座います。現在お客様は湯殿へ入って居られます。」

「.....そうか。盗賊に魔導師がいた、ということが気にかかるな。」


 本来魔導師は希少な職である。その戦闘力は常人の10倍とも言われ、各国の貴族達がこぞって囲い込みを行っている。その為、盗賊団などに所属するなど考えられないのだ。十中八九、何者かが送り込んだ、あるいは手を組んでいる証拠だろう。


「そのノアという人物、他国の間者とは考えられんか?」

「...分かりかねます。あのような優秀な人材を果たして間者に使うでしょうか?」

「ふむ....。」

「さらに湯殿を常用しているような口ぶりでしたから、少なくとも何らかの地位を持った人物では無いでしょうか?」


 この世界で風呂というものは非常に贅沢だ。大量の薪を燃やし、あるいは高価な魔道具を惜しげも無く使わないと風呂を沸かすのは難しい。

 そのために贅沢品となり、自然と貴族の中でも上流階級と呼ばれる人達の嗜みとなっていた。

 つまり、ノアという人物が贅沢品である風呂を常用しているということで上流階級の人物である可能性を危惧しているのだ。

 他国の上流階級がこの街に潜伏するということになれば間違い無く争いの火種となる。

 故に慎重な判断を2人には求められていた。

 しかし実際はただの行く宛てのない浮浪者である。2人の心配は幸か不幸か杞憂であった。


「いや、もう少し先方の出方を見よう。このまま普通にもてなしてくれ。私も晩餐では注意しておく。」

「畏まりました。その様に。」

「頼んだぞ。」


 恭しく頭を下げ部屋を出ていくセバスチャンを見送り、ニコラスは深いため息を着いた。

 実はクリスティアが遠方へ出ていたのは母の病を治す医者を探すためであった。先程の報告によって治る術が無いと分かったのだ。

 クリスティアの母は生まれつき心臓が弱く長くは生きられない身だった。ニコラスと大恋愛の末、結婚して症状が落ち着いたと安堵した矢先、流行り病にかかったのだ。何とか一命を取り留めたものの再び心臓は弱り、今はほとんど動けず死を待つばかりであった。

 クリスティアの母マリアを救う方法はあとひとつ、王家に伝わるという伝説の秘薬『エリクサー』だ。しかし、それは国宝であり、一貴族の当主程度が手を伸ばせるものでは無い。何か手柄を立て、褒美としてエリクサーを所望しようとニコラスは画策していた。


「マリア....。どうか、もう少し待っていてくれ。必ず君を救ってみせる。」


 だがその前に目の前の仕事を片付けなければならない。

 ニコラスは椅子に座り直し、再び書類へ向き合った。



次はきっと12月7日更新かな?

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