8
レオンハルトの視点です。
国王にユエのことについて報告を済ませ、執務室に戻ったがレオンハルトは手元にある書類に集中できずにいた。
ボーン ボーン ボーン。
12時を示す柱時計がなった。
そう、昨日もそうだった。夜遅くまで執務室で書類に目を通し、12時の鐘を聞いた時だった…。
突然、窓の外から目が眩むほどの白く強い光が現れた。
咄嗟に、剣を掴み外に出ると思いも寄らない光景に言葉を失った。
夜空に眩いばかりに輝いた少女がいた。全身黒い服で髪の毛は銀色に輝いており、思わず見入ってしまった。
髪の毛がふわりと流れる様子は天の川のように流れて美しい…。
少女の服は飾り気がなく、スカートも膝までの丈で、この長さのスカートをはく者はほぼいない。
徐々に光が弱まって、少女の髪の毛は銀色ではなく黒い髪だとわかった。
そしてゆっくりと落ちてきた少女を抱きとめた。
華奢な身体は力を入れたら折れてしまいそうだ。
ずっと抱きしめていたいと言う思いが自然と溢れてくる。
「「レオンハルトっ!!!」」
イザークとケイが駆け込んできた。
レオンハルトは振り返って声をかけ、落ち着かせた。
「大丈夫だ。心配ない。」
「…っ!?これはっ!!」
イザークの額に深いしわが刻まれる。
「俺にもよくわからない。…だが、光と共に降りてきたんだ。」
「「「………。」」」
思わず三人で黙り込んでしまう。
三人が同じことを考えていることが分かった。
そう、この少女は『月の加護を受けた存在』ではないかと……。
少女に声をかけて起こしたが反応がない。深い眠りについているようだ。
少女は一体何者なのか…。
「…ト」
「レオンハルト!」
「!?」
急にケイの顔が近くにあり驚く。
「レオンハルト!昼飯の準備できたらしいぞ?」
「すまない。ちょっと考えごとをしていて…」
「ふーん?…ま、早く食べようぜ。」
「……ユエはどうしてる?」
「あ〜、さっき食べたばかりでお腹空いてないから食べないらしい。そんで少し休むってさ」
「そうか…。」
ユエは異世界から来たばかり…きっと疲れが出たのだろう…。
「…??どうかしたのか?」
「何でもない、行くぞ。」
机に書類を置き、レオンハルトはダイニングに向かうのだった…。
ユエが安心して過ごせるように環境を整えて行かなくてはいけないな…。
彼女が…ユエが『月の加護を受けた者』であってほしいとつい願ってしまう。
彼女の瞳を見た時に感じた心臓の鼓動が忘れられない。
ずっと…ずっと前から知っているような気がする。
だから彼女に「会ったことがある気がする」と言われて、心の底から嬉しかった。
永遠に待っていたのかもしれない…。