まっくらオノマトペ
会えたらいいな。
会いたいな。
追いつきたいけど、追いつけない。
ここで待ってるから、早く来てね。
多分、私は歩いている。
まっくらで自分の手も見えないけれど、きっと歩いている。
だって音が聞こえる。コツン、コツン、と足元から。
でも、なんで歩いているんだろ?
いつから歩いているんだろ?
見回してみても、まっくらで何も見えない。
「誰かいませんかー」
ちょっと響いた。
そんなに大きな声を出したつもりはないのに、くわんくわんする。
「いるよー。早くおいでよー」
声が聞こえてきた。
「今行くよー。待っててー」
ちょっと嬉しくなって小走りになる。
コツ、コツ、コツ。
誰がいるんだろう?
どんな人なんだろう?
一緒に歩いてくれたらいいな、なんて。
「ねえー。まだー?」
ありゃ。まだちょっと遅かったみたい。
走るスピードを上げないと。
コッ、コッ、コッ。
まだ追いつけないかな?
どれくらい離れてるんだろ?
「どこにいるのー?」
「ここだよー」
どこなんだよう。
はあ、はあ。息が切れてきた。
足もなんだかもつれるし、休憩しちゃだめかな?
結構走ったはずだし、いいよね?
ちょっと自分に甘えて、小走りに戻してみる。
「待っててって言ったじゃーん」
別に怒ってなんてないけど。
文句なんて言いながら、それでも追いつきたくて。
コツ、コツ、コツ。
止まっちゃうと追いつけなくなっちゃう。
並んで歩きたいだけなんだけどな。
「待ってるよー。そっちが遅いんだよー」
「遅くないよー。走ってるよー」
嘘じゃないよ?
ちゃんと走ったし、今も小走りだもん。
でも疲れちゃったな。全然追いつけないし。
コツ、コツ、コツ。
もう追いつけなくていいや。疲れちゃったし。
あの人には悪いけど先に行ってもらおっか。
「ごめんねー。先に行っててー」
「そっかー。わかったー。また後でねー」
くわんくわん、とする音もこれで終わり。
また一人で静かに歩くんだ。
コツン、コツン。
そういえばこれ、どこに向かってるんだろ?
この暗いの、どこまで続いてるのかな?
歩いている。
多分、私は歩いているんだろう。
まっくらなのは変わらないけれど。
速いのか遅いのかもわからないけれど。
それでも私は歩いている。
「誰かいませんかー」
頭がくわんくわんした。
誰か来たみたい。どこにいるんだろ?
ぐるっと見回してみたら、あっちの方がなんだか光ってる。
「いるよー。早くおいでよー」
嬉しくなって返事をしてみる。
「今行くよー。待っててー」
来てくれるみたい。
じゃあ、私はここで待ってよっかな。
コツ、コツ、コツ。
足音はするけど、遠くなのか近くなのかわかんない。
あの人が来たら、暗いのもなくなるかな?
周りの景色もちゃんと見えるようになるのかな?
それにしても全然来ないなあ。
「ねえー。まだー?」
待ちくたびれてないよ。待ち遠しいだけだよ。
あ、ちょっと焦らせちゃったみたい。
コッ、コッ、コッ。
走ってるみたいだから、そろそろ追いつくかな?
その割にはなんだか光ってる位置が変わってないような?
「どこにいるのー?」
「ここだよー」
手を振ってみるけど、見えてないだろうなあ。
こっちからはちゃんと見えてるんだけどな。
しょうがないよね。まっくらなんだもん。
もう、こっちから行ってみようかな?
そしたらすぐ会えるよね。
コツン、コツン。
「待っててって言ったじゃーん」
あれれ。遠ざかってると思われちゃったかな?
違うよ。私もそっちに向かってるんだよ。
コツ、コツ、コツ。
ちょっと早足で歩いてみる。
怒らなくてもいいじゃん。
私だって早く会いたいんだよ?
「待ってるよー。そっちが遅いんだよー」
「遅くないよー。走ってるよー」
そんなこと言ったって遅いんだもん。
だから私もこうやって歩いてるんだから。
コツ、コツ、コツ。
そんなに離れてないような気がするんだけどなあ。
なんでこんなにも会えないんだろ?
なんだか歩くのも疲れちゃったなあ。
「ごめんねー。先に行っててー」
「そっかー。わかったー。また後でねー」
会えなすぎていじけちゃったのかな?
でも、うん。待ってればすぐ会えるよね。
コツン、コツン、と最後に鳴らして立ち止まる。
静かだなぁ。ちょっと寂しいかも。
なんだか歩きすぎて疲れちゃった。
ちょっと眠いかも。寝ちゃっていいかな?
いいよね。まだあそこで光ってるし、気付いてくれるはず。
ちゃんと起こしてね?
また、後でね。おやすみ。
おやすみなさい。