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浮いた気持ち  作者: みつ
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娘の抜けた穴

娘が抜けた事で俺の負担はとても大きくなった。

目の悪い社長はデスクワークが全く出来ず、

仕事を引き継いだ同期は出ていった為、

何もわからない状態だった。

幸い娘も手が空いていた時は農場に出ていたくらい

デスクワークが少なかったが、

それでも徹夜で働いたこともあった。


食事は俺が昼間に買ってきた総菜を食べる事が多くなり、一人で食事を済ますことが多くなった。

社長と娘と三人で食事をしていた、

あの楽しい空間は見る影もなかった。


人手不足は深刻で

収穫期までに人を探さなければ

このままでは仕事が捌けなくなり、

契約先に迷惑がかかるので、

即戦力になる人員が必要だった。


俺は米農家の高校時代の知人に冬の収穫期だけでもいいから手伝ってくれないかと頭を下げに行った。

深刻そうな俺を見て、知人は難しい顔をしつつも了承を得た。


社長は娘のことを忘れようとするかのように

仕事をしていた。

社長は仕事が終わると同時に居間でやけ酒をしていたが、心身共に疲れていた俺は構う余裕は全く無かった。


娘が出ていき一ヶ月が経つ頃には、

デスクワークの要領を掴み徹夜でする事は無くなった。住み込み先で食事をするのは気分が進まず時間に余裕が出来た為、俺は外食が増えた。


この日も俺は隣町に外食をしに来ていた。

仕事が早く終わったので少々時間が遅いが、飽きつつあった通い付けの飯屋に行くのを辞めて、隣町の外れにある飯屋に行くことにした。


驚いた事に、

そこの飯屋には、出ていった娘が働いていた。

今は飯屋の店員だが一ヶ月経っても、肌の色は土をいじっていた頃の名残があった。

娘に気づいた瞬間、店を出ていこうとしたが引き止められた。

あと一時間もすれば、閉店だから待ってほしいと言われ奥の座敷で待った。


40分ほど経った頃に最後の客が帰り

娘が定食を持って座敷に来た。

娘は泣きながらあの事を俺に謝った。

仕事の負担の増えた俺は、泣いて謝ったら済むのかと怒りを覚えたが、

怒鳴る元気も無かったので、適当にあしらった。


泣きやんだ娘は、父が元気にしているか仕事は捌けているかと、心配そうに聞いてきた。

俺は、社長は元気にしているし仕事もちゃんと捌けていると言いたかったが、

これは当事者の社長と娘の問題だと思い直し

正直に答えた。


すると娘はデスクワークは教えられるから

休みの日に持って来たら教えて上げれるといい

来週の月曜日に教えてもらうことにした。


昼頃、夕方の潅水を社長に頼み、

分からなくて放置していた大量の書類を、

鞄に詰め家を出た。

娘に貰ったメモの住所に行くと

古いアパートがあった。

部屋はとても狭く、ものが少なかった。

同期はどうしたと聞いたが、あの日以来連絡も取れていないらしい。


娘に大量の書類を見せると、

先に終わらしてから教えた方が早いと言われ、

書類の処理の段取りをみながら時間を潰した。

夕方頃、一通り書類を終えた。

時間が遅くなったから後日教えようかと言われたが、

収穫期になると時間がなくなるので、

お願いしますと言い教えてもらった。


結局その日だけでは時間が足りなかった。

帰ろうとした時に娘は少しうつ向いて、

ご飯食べて行かないかと言われた。

断ってコンビニで済まそうとも思ったが、

一ヶ月振りの手料理という誘惑に負け

食べていく事にした。




農業は楽しいなり

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