94.閑話
天井からぶら下がるシャンデリアはオレンジの光を放つ。城の大きなホールに集まるのは、幾人かのプレイヤーだ。彼らは、尾端祭という祭りが行われる日に城内のパーティに出席するもの達であり、そのために社交ダンスを学んでいる。
短い金髪の人族であるミカヅキ。黒髪を長く伸ばした妖精族のヨル。ヨルとまるで双子のようなそれでいて、髪の色が薄ピンクの小人族サクラ。赤く波打つおかっぱ頭の大鬼族であるサカヅキ。黒髪をポニーテールにしている蚕族のノブナガ。この5人は、プレイヤーの中で一番、この国に信用されているもの達である。
他にも、人魚族の三人の少女だったり、大狼族の男とそれに付き添う人族の女がいた。
合計で10人、それが300人の中から選ばれた人数である。
彼らが選ばれた理由は、王国の復興に貢献していること、概ね良識ある存在であること、誰かの信用を得ていることの3つだ。本当ならばこの3つさえ満たせば、他にも呼ばれる可能性があった。
逆に言えばこの3つを満たせない者の方が多かったということだ。
今現在の彼らの服は、パーティ用の服だ。オーダーメイドであり、一部を除き、王国から贈られたものだった。それゆえに豪華であり、また着心地も良い。
ダンスの練習の時も着るようにと、贈られた当初は着たことのないもの達が多く、羞恥や戸惑いがあった。しかし袖を通すと、その感情を忘れ、ただ練習に没頭するものや見とれていることの方が多くなった。
その礼服を着ながらオーケストラが音楽を奏で、本番さながらに練習を行うことになった。それを見守るのは、この国の公爵家の当主ルイス・アディソン。
ミカヅキのダンスの相手はこの国の姫であるトーリーだ。彼女は、ただ淡々とダンスをこなす。慣れていないミカヅキはついていくのがやっとだった。トーリーの目には彼は写っていなかった。彼女が思うことは一つ、この茶番を早く終わりたいということだけ。
トーリーとダンスをするミカヅキを横目で気にするサクラ。彼女はミカヅキに恋をしていた。サカヅキは、ダンスに集中出来てない彼女を注意する。時々彼女が、サカヅキの足を踏むからだ。
そんな彼はこのプレイヤーの中で一番社交ダンスを知っていた。それもそのはず、現実の彼は社交ダンスを踊ったことがあるのだから。
息の合わない二組とは反対に、のんびりとしているヨルと穏やかな気質のノブナガは、意外にも呼吸が揃っているように見える。しかし、実際にはノブナガがスキルを使って、やる気の無いヨルを動かしているだけだった。
同じく、他のものも上手く踊れていない。人魚族の少女達はどうも相手(王国の少年達)の方が見とれてしまい、踊れず。大狼族の男と人族の女はお互いに照れあっていて練習になっていない。
ルイスはため息をついた。この状態で本当に尾端祭を迎えられるのか、心配になったからだ。
尾端祭には他国からの賓客が訪れる。国としては、彼らに客人達とも踊って欲しいのだ。それが今のままだと、不敬になりかねない。
そこでルイスは、ダンスの相手を交換することを提案した。
トーリーとサカヅキ。サクラとノブナガ。ヨルと大狼族の男。人魚族の少女の一人とミカヅキ。その他のものも相手を交換した。
しかし結局上手く踊れていたのは、1組、トーリーとサカヅキのペアだけだ。交換したことによって余計に気がそぞろなもの達が現れた。
トーリーが相手で無くなったことにより余裕が出来たミカヅキはヨルを。サクラはミカヅキを。大狼族の男は人族の女を。人族の女は大狼族の男を。目の前の相手ではないものを追ってしまうのだ。
前途多難な様子にルイスは頭を痛めるのだった。




