86.閑話
ポーターは森から連れてきた少女を自分の部屋では無く、雑貨屋に連れてきた。彼女は未だに目を覚ましてはいない。
「で?この子はどうしたんだい?」
「森で忌み子から渡された」
雑貨の店主である老婆、フェギスは、その珍妙な話に目を大きく開く。
「忌み子って、あの忌み子かい?」
「そうだ。おそらく10年は生きているだろうな」
「よくもまぁ、生きてこれたね」
フェギスも青い色素を持つ者の結末を知ってるが故に感心する。それと同時に、迷いの森で生き抜く強さも持っていることにも驚く。
「それで、調査はどうしたんだい?」
「途中で渡されたから帰ってきた」
「なるほどね。お前さんが帰ってこなきゃ死んでたろうね」
少女は、雑貨屋のバックヤードに置いてあるベッドに仰向けで寝かされている。少女のお腹辺りに親指ぐらいの大きさの透明な結晶が置かれていた。その結晶は、魔素の塊であり、少女の症状を緩和させるものである。
フェギスは良く良く少女の顔を見た。店に来たときよりは顔に色が戻ってきた。
じっと見つめていると、フェギスは気がついた。
「もしかしてこの子、共和国のフェンス家の娘じゃないかい」
「多分な」
ポーターの言葉に顔をしかめる。フェンス家といえば、共和国から追い出された魔人族の代表だ。その娘は神国に向かう途中で盗賊に襲われて、行方不明とされていた。それがここにいる。
「お前さん、少し厄介事を持ってきすぎやしないかい?」
「それはすまん。この娘を表に出しては置けねぇからな」
確かにそうだと思う反面、この状況にフェギスはため息をつく。フェギスは自分が王からの依頼を引き受けた方が良かったかもしれないと少し後悔した。
この男の中途半端に厄介事を引き寄せる体質は昔から変わらない為、いつもフェギスが諦めるしかなかった。
「で、この子、どうすんだい?」
「目を覚ましたら、話を聞く。事情を知ってるかもしれねぇしな」
「まぁ、それが良いだろうね。はぁ、依頼料は私も貰うからね」
「····わかった」
「半分。それ以上もそれ以下もないよ」
「わかった」
ポーターはその値段に不満はなかった。フェギスがその値段が掲示したなら、それが妥当だと信頼している。
「····もしこの子が目を覚まして、ここを望むなら私はそれを受け入れるからね」
そう宣言したフェギスを見る。それはつまりこの少女を利用させない、保護するという意味だ。
ポーターは了承して、頷いた。フェギスもポーターも、結局、お人好しなのだ。それらしい言葉を並べては、どの子供も見捨てることは出来なかった。




