78.逃げ癖
俺は倒れたシンディさんに服をかけて、休憩した。
ソファに座り、重たい息をはく。
「どーしよ」
今、すごく重い。重たい。重いのは辛い。重たいストーリーは求めてない。つまり、逃げたい。何、黒い魔物って。どーいうことだよ。確かにさぁ、シンディさんの過去は重い話だったよ。でも、ここでフラグ立てなくても良いじゃん。別にそこまで、介入するつもり無かったんだ。
うぅ、モフモフしたい。癒されたい。辛い。
気持ち悪さを我慢して、気合いをいれて考える。頑張れ、俺!
ゆっくり考えればいいんだ。事実を思い出しながら、整理していこう。
まず1つ。黒い魔物は、DWMの世界の中の人たちが大勢で戦っても勝てないほど強い。んで、シンディさんの父親は黒い魔物に殺された。
確かに、エリマキやウィン達は強かったはず。先生がばか強いだけであって、かなり強めの部類に入っている····と思う。
2つめ。黒い魔物はあの湖で、ただの魔物になった。水でじゃぶじゃぶすれば、正気になる?そもそも、黒い魔物と魔物の違いって何?黒い魔物のモヤって何?
これは少し疑問点が多すぎる放置しよう。
3つめ。シンディさんの様子がおかしかった。
確かに、仇だから、正気じゃなくなるのはそうかも知れないけど、こんなにも殺気だつ人だったのかな?んー、これもシンディさんのことを全部知ってる訳じゃないしな。とりま、これも放っておこう。
4つめ。なんで、俺はあの鹿を守ろうと思ったんだろう。自分のことながら、不思議に思う。別に、シンディさんに仇を討たせてあげたら良かったのに、何故か俺は先生に助けを求めた。
エリマキ達が元は黒い魔物だったから、情が移ったのかな?エリマキはどう思ってるんだろ。俺の命令に従ってくれた。辛かった?でも、そんな感情は伝わって来なかった。同族意識が無い?でも、エリマキはウィン達と共に一緒に行動してたんだよな。んー、分からん。
最後、これが一番重要だったりする。これからシンディさんをどうするか。
シンディさんを小屋に置いていく?いやいや、女の人を森のなかに一人はヤバイだろ。黒い魔物が来ないとも限らないし。
じゃあ、シンディさんを王国へ送る?それはダメだ。彼女は嫌がっていただろう。
「あ"ぁ"、分からんんん!」
俺は頭を抱える。
出来ることなら、逃げたい。それしかない。
良い案はどう考えても俺の頭じゃ無理だった。
「良し、シンディさんに丸投げしよ」
全部、話して、どうするか考えてもらおう。もし敵対したら、今度こそ本気で逃げよう。うん、そうしよう。
そう考えると気が楽になった。
グーッと体を伸ばし、体をほぐす。そして、俺は自嘲した。
この年になっても逃げ癖は治らないらしい。きっと、弟や妹なら違う結果になったろうに。きっと、もっとちゃんと考えてくれたんだろう。シンディさんが納得いくような形で。
「俺はいつもダメだなぁ」
シンディさんを頭の隅に追いやって、エリマキ達の事を考える。
エリマキは今回頑張ったし、いっぱい魔石を食べさせてあげよう。あぁ、そうだ。あの鹿も、もやをとってやらなくちゃ。沢山撫でて櫛で毛並みも整えてやろう。あの鹿の名前は何にしようかな。




