67.王国図書館
ポーターさんに連れられてきた図書館の中は、赤を基調とした部屋だった。カーペットや天井から吊るされた明かりも赤い。
人の手が届かないほどに高い本棚にはびっしりと本が詰められていた。それほどの本があるというのに、埃が被っていることもなく、しっかり手入れしてある。
「久しいね」
俺が部屋を見回していると、ポーターさんの後ろから声をかけられた。いや、俺に話しかけたのではなく、ポーターさんにだが。
「新しい本を手に入れたのかい?それなら、早く私に見せておくれ!」
その人物は、ふんふんと鼻息が荒かった。薄緑の髪はうしろでお団子状に束ねて、前髪は斜めに流れて右目にかかっている。
背中には、トンボみたいな薄い羽が生えていてパタパタと動いて空を飛んでいた。まるでおとぎのなかに出てくる妖精のようだった。
「本は持ってない」
その言葉に、チッと舌打ちをする。
「····何のよう?」
あらかさまにテンションが下がりましたというように声も小さく、顔もしかめっ面をしている。
「森に生えている食べれる物の図鑑と冒険者の心得の複製がほしい」
「はぁ?なんでお前が···」
言葉を切ってちらりとこちらを見て、なるほどねと言って、妖精さんは近くのイスに座り、テーブルにどこからともなく出した白紙の紙の束を置く。
あー、ストレージから取り出す時ってこうみえてんのね。
妖精さんは羽ペンで、白紙の紙にカリカリと書いていく。まるでそれは印刷機でコピーされていくようだ。
「そういえば、一人雇った」
視線は紙に向けたまま妖精さんは静かに口を開いた。多分、ポーターさんに話しかけているんだろう。
「お前がか?」
「そう。色々な本を持って来てくれる。それに本に敬意がある子だから」
「お前がそういうならそうなんだろうな」
「今はお使いに行って貰ってるから、後で紹介する」
ポーターさんと少し会話しているうちに書き終わったのだろう。あっという間に書き上げた紙を丁寧に糸と針で束ね、赤い厚紙で表紙を作り見事な本が出来上がった。
「ハイ」
出来上がった本を俺に渡してきた。俺はポーターさんの顔を伺い、その本を受け取った。
「あ、ありがとうございます」
本を受けとると、妖精さんはフッと消える。
「あのお金とかは····?」
「いらん」
「え、でも」
「じゃあ、貸しだ。あとで返してくれ」
そういうと、図書館から出ていくポーターさんの後を追いかけた。




