63.新規客プレゼント
見た目は同い年の店員さん達に囲まれて、一つ一つ説明を受ける。殆ど、右から左へと聞き流してるだけだけど。彼らが誇らしげに説明する姿は微笑ましい。
店員さんは獣耳を持っている子達が多く、そのフサフサした耳ごと頭を撫でてやりたい。ワシャワシャっと。
「欲しいものは見つかったかい?」
ポーターさんとの話が終わったのか、老女は杖をカツンカツンと鳴らしながら近寄ってきた。
店員さん達に色々な物を見せてもらったが、結局欲しい物は見つからなく、首を横に降って返事をする。
「そうかい、なら、何か困ってる事があれば、言ってみな」
その言葉に俺は少し不安に思った。
ん?もしかして、この人さらに買わせようとしている?金むしりとられるフラグ?
「····あぁ、安心しな。何かを売り付ける訳じゃない。ここに初回として来た客人には一つ私からプレゼントをさせて貰うのさ。今後、御贔屓って事でね。勿論、金額の高いものは少し交渉させて貰うが。」
老女は、俺の不安を読み取ったかのように説明した。
その説明を受けて、納得する。しかし、今後ここを俺が利用するとは思えなかった。何故なら、ここに来れたのは一重にポーターさんのお陰だからだ。道順を覚えているかと言えばそうでも無いし、またポーターさんに案内してもらうというのも気が引ける。ということで、俺が今後ここに来る事は無さそうなのに、プレゼントを貰うのは少し虫が良すぎるんじゃないかな。
黙った俺を心配してくれたのか、ポーターさんに声をかけられた。
「貰える物は貰っておけば良い」
「そうさ。例え、お前さんが来なくてもお前さんの子が来るかも知れない、孫が来るかも知れない。私たちはそういう長い時を見ているのさ。だから、遠慮なく言っとくれ。あんまり、気にしいだと幸運を逃がすよ」
俺は恐る恐る自分の中で一番の問題を伝えた。
「今、一番、困っているのは魔素不足になって力が入らなくなってしまうことです」
力が入らなくなる原因は慢性的な魔素不足とシンディさんが言っていたし、やっぱり力が入らないとなかなかレベルも上がりにくい。これを解決出来れば、難易度がナイトメアからノーマルまで下がる気がする。何よりも、普通に駆け回りたい!エリマキとか、ウィン達と遊びたい!草を食めば、マシにはなるけど、草から卒業したい!
老女は、静かにパイプの煙をはいた。
「····魔素不足ねぇ。全く若いのに可哀想に」
そう言って、懐から巻いてある布を取り出した。布を開くと、その中にパイプが5、6本しまってあった。
「さて、どれが良いかね」
老女は、一本取り出してはくるくるとペン回しをしてしまっていく。
「お前さんはどれがいい?」
尋ねられて、意味が分からずに、えっと、と言って黙る。
「ああ、説明してなかったね。魔素不足を解消するには、魔素を体に取りいれれば良いだけさ。私もね、魔素不足になりやすくて、いつもこうしてパイプを吹かしているのさ。魔石をそのまま取り込むっていう方法もあるけど、煙にして取り込む方がより魔素が体に行き渡りやすい」
へぇ、そうなんだ。でも種族の説明には、解決方法は食事って書いてあったけど、そこら辺どうなんだろ?パイプは救済処置的なものなのかな?
「まぁ、私のお古で悪いけどね。パイプは出回らないから物がないのさ。魔素不足に陥るほどの奴が生きてること事態おかしな事なんだよ」
出回らない?ってことは貴重品だってことじゃ?え、そんなの貰っちゃうの?やばくない?
「これがいい。全体的に細いから小さな手でも扱いやすく、一つの木材で出来ているからメンテナンスも吸い殻を捨てて、洗うだけでいいし、何よりも頑丈だ」
老女が見せてくれた物は、パイプって言うより煙管に似ていた。
「あの、貴重品なら、俺····」
俺が断ろうと口を開いた。
「良いから、受け取りな」
グッと押し付けられたそれを俺は有り難く貰った。
「ありがとうございます」
老女に頭を下げる。
「ただ、葉は買ってもらうよ」
え?どういうこと?




