62.夜市の同意
小さな手が硬貨を渡していく。それにしても随分と痩せている子供だね。
「丁度だね。····お前さん、少し店の商品でも見てっておくれ。良いものがあったら、安くしとくよ」
「えっ?」
「ほら、お前たち客人に店の中を案内してやんな」
「「はぁーい!」」
小さな客人を小さな店員達がズルズルと引きずっていく。小さな客人は助ける求めるようにポーターを見たが、ポーターは手をふって見送る。
「あれが、例の余所者かい」
「あぁ」
「それにしても、随分とまぁ、痩せすぎてるんじゃないかい?」
「まぁ、そうだな」
ポーターに適当な話をふってみるが、小さな客人の事を詳しく話すつもりはないらしい。私も別に客人の詮索は特にするつもりはないので、この会話が続くとは思っていない。
ポーターの目的は別にあり、客人の買い物はあくまでもついでだ。
「で、本当の目的はなんだい?」
パイプの煙を吸って、吐く。焦げた苦さを匂いついた炎が誤魔化す。年を食うと魔素が溜まり難くて仕方がないね。
「夜市の合意を取りに来た」
「ようやくかい」
まぁ、なんて久しぶりの言葉か。あれから数年、いや十年くらい経っちまったのかね。
「フェザートの一族、フェギスよりこれを合意する」
昔は儀式なんぞがあったらしいが、今じゃ廃れて等しく言葉だけの簡易なものになった。この言葉も既に建前だけのようなものだ。それでも、建前というのは必要なのだ。
「後は蜘蛛のところかい?」
「まぁな」
「今蔓延ってる余所者どもはどうするんだい?」
「そうだな。宿は、蜘蛛のところにでも押し付けよう。あそこはまだ一線を越えてねぇ。それに今の女達の拠り所にもなってる。仕組みを知りゃぁ、従う理性がある。だが、あの二つはダメだ」
ポーターの言うあの二つは、どうにも好き勝手が過ぎていた。その二つとは宗教で扇動し、暴動をさせようとしている集団と人浚いの集団だ。今の今まで、余所者はルールの外にいた。なれど、夜市の王が動いたのならば、そこに余所者もまたルールの中に組み込める。
「あれどもは、追い込む。徹底的に」
ポーターはそう宣言したのならば、必ず実行する。
「だが、今はまだダメだ。正体が知れん。変に手を出して報復されたら、困る。だから、他を仲間に率いれるか、せめて弱点でもと思ったんだが···」
「で、あの子かい?」
私が指で示すと、ポーターは頭を掻いた。
小さな客人は小さな店員達が囲まれて騒がれていた。
「ありゃぁ、ダメだ。手を出したら、余計にとんでもねぇもんが返ってきそうだ」
「そんなにかい」
「····別のやつを見繕うしかねぇな」
私にはポーターがそう言うほど、大層なものとは思えなかった。




