60.雑貨屋カザキリ
ログインすると、俺はまだポーターさんの背中に揺られていた。
気がつくと、今まで無かったものが辺りを照らしている。硝子のランタンようなものには、液体が満たされて、怪しげに輝いてそれが階段を照らしていた。
「あの、もう俺、歩きます」
「起きたのか」
ポーターさんは屈んで下ろしてくれた。
俺とポーターさんの声が反響する。
「ありがとうございました」
「また疲れたら言えよ。まぁ、そろそろ着くんだけどな」
感謝の言葉を言って頭を下げると、頭を撫でてくれた。
ポーターさんはまた歩き出し、後ろをついていく。数分ぐらい歩けば、古びた扉が現れた。
ポーターさんは、迷わずに扉を開けた。
「邪魔するぞ」
扉を開けた先の眩しさに俺は目を細めた。
風も無いのに、天井に吊るされた沢山の飾りがジャラリジャラリとうるさく鳴る。棚には、よくわからないものやリアルにもありそうな置物が陳列していた。
俺は物珍しいさから回りを忙しなく見ていた。なんか、土産屋みたい。
そんなしょうもない感想を俺が思っていたら、奥からしわくちゃな杖をついた老女が出てきた。
色とりどりの布を体に巻き付けて、重くないのかな。
「おや、珍しい客だね」
「久しぶりだな。ババァ」
「····全くお前はいつも失礼な子だね。おねぇさんとお呼びと何度言ったらわかるんだい?」
老女はタバコのパイプようなものを吹かす。
その会話の掛け合いに二人は親しい間柄だと、推測出来る。
「んな年でもねぇだろうが」
「何言ってんだい。私はまだ若い」
「だったら、若作りでもしろよ」
「本当に失礼な子だよ。はぁ。で、今日はどうしたんだい?」
「コイツの買い物をしたくてな」
ポーターさんは俺の背中を押して、老女の前に出す。
老女にじろじろと観察され、俺は固まることしか出来なかった。
「ふぅん、お前が新規を連れてくるなんて、お前の娘以来かい?あぁ、そうだ。あの子は元気にしてるかい?お前が連れてこないから全くわかりゃしない」
「そんなのババァの手下どもに聞けばいいじゃねぇか」
「バカだね、お前は。私はお前から聞きたいって言ってんだよ」
「····元気に冒険者ギルドの受付嬢やってる」
「そうかい。うん、良かった。そこなら安全だ」
うん、うんと老女は満足そうに頷く。
ポーターさんの娘さんが受付嬢?じゃぁ、俺もあったことあるかな。
「で、お前さんの買い物だったね。必要なものはどんなものだい?全部言ってごらん?」
ポーターさんに向けていた視線がこちらを向いて、驚く。
「えっと、櫛と小瓶と弓矢がとりあえず欲しいです」
「櫛と小瓶?なんだい、お前さん、愛の告白でもするつもりかい?」
アハハハと老女は笑う。
俺は意味がわからず、助けを求めてポーターさんを見た。
「あー、櫛と小瓶ってのはこの国じゃあ告白の定番なんだよ」
「そういえば、お前も盛大にやらかしてたねぇ」
その言葉に、え、と思いつつも、そういえばポーターさんにも似たようなこと言われたなと思い返した。
現代じゃ、ラブレターみたいなものなのかな?




