58.階段でおんぶ
ポーターさんが歩きだしたので後ろをついていく。
右を曲がって左を曲がって少しまっすぐ進んで····。覚えられないくらいグネグネと進んでいき、徐々に建物がボロく古くなっていき、こちらを見る人の目は鋭く荒み、服も汚く汚れていく。
俺はその有り様に怖くなり、迷子にならないようにポーターさんの服のすそを掴んだ。迷子になったら最後、身ぐるみ剥がされて死ぬ!
プルプルと震えながら歩いていくと、ポーターさんはある浮浪者の前に立ち止まり、コインをその人に渡した。コインを貰った男は、その後ろの壁をまるで引き戸のようにズズズッと開く。
「いらさいませ、ポーター様、カカオ様」
男は頭を下げた。
ポーターさんは何一つ、男に喋りかけてはいないのに、俺の名前を知っていることに驚く。
「街一番の雑貨屋"カザキリ"にようこそ」
壁を開けた先は階段があり、下へと続いていた。男からランタンを受け取り、ポーターさんは暗い階段を降りていく。
カツンカツンと足音が響く。生ぬるい風が頬を触るように吹いた。
唐突に時間の経過を思い出した。あ、そろそろ休憩に入らないと····。
掴んでいたポーターさんの服を引っ張った。
「あの、ポーターさん、少し休んでも良いですか?」
「疲れたのか?」
「はい」
わがままみたいで申し訳ないが、ちゃんと休憩は取らないとな。
「しょうがねぇ、俺が担いで行くからほら、背中に乗れ」
そう言って、ポーターさんはしゃがんでくれた。俺は小さく、失礼しますと言って、乗った。
ポーターさんの背中は広く暖かった。もし父が背負ってくれたらこういうものなのかと頭に浮かんだ。けれど、父はポーターさんよりも細く病弱だったから、きっと出来ない。いや、もしかしたら出来たのかも知れない。あぁ、聞いてみれば良かったのかもしれない。
少しの後悔を胸に、俺は現実に戻った。




