57.門番
ポーターさんとともに路地裏を歩いてると、反対側からフラリと人が向かってきた。
「よう、ポーター」
顔を真っ赤に染めた男が、酒の瓶を持った方の手を挙げながら声をかけてくる。近寄れば、酒の臭いが濃くなった。
「また飲んでんのか」
「はぁ、全くお前がめんどくさい報告なんかしなきゃめんどくさい事しなくてもすんだのによー。あぁ、めんどくさい」
そういって、酒を煽る。最後の一滴まで残さぬよう瓶を逆さにして、舌で受け止めた。ポーターさんは、その様子に何かを察したのか、俺を背中で隠す。
男は飲み干した瓶を近くの壁で投げ割った。ガラスが涼やかな音をして飛び散る。
「で、その魔物っつーのはどこにいんだよ」
「知らねぇ」
「それとも何か、お前隠すつもりか?へっ落ちるとこまで落ちたな」
会話が成立してない気がする。ポーターさんが苛立ちはじめ、空気が悪くなる。
男が言ってる魔物って何の事だろうか。もしかして、エリマキのこと?それで怒られてんの?ヤバくない?
俺は口を開こうとして、ポーターさんに頬を少し叩かれた。叩かれたといっても音を鳴らす程度、痛みのないようにかなりに手加減されていた。これは黙っていろということなのだろうか。
「なぁ、役立たず。お前、早くその二つ名に恥じない活躍してみせろよ」
「····」
「それとも父娘共々、俺がその羽根、むしってやろうか?」
男の言葉に、ポーターさんを見た。背中には何も無い。羽根?そんなのポーターさんにあんの?しまってるとか?
「知らねぇもんは知らねぇ」
その言葉にポーターさんが怒っているのが分かる。つれてさらに雰囲気が重く苦しくなる。
だが、一瞬の内にその空気は消えた。
ポーターさんは左の角に目を向けた。そこからニュッと手が伸びて、その手は男の襟を掴んだ。
「何をしとるんだ。こんのバカ息子が」
角から出てきたのは、老人だった。男は老人に舌を出す。
「うへぇ、真面目に仕事したらこれだよ」
「嘘をつくのは、この口け?」
老人は男の頬をギリギリとつねる。思わず自分の頬を押さえるぐらいに痛そうだった。
「ポーター、すまんかったなぁ。この阿呆が後始末をすると言って出掛けりゃ何をするかと思いきや、まさか責任を押し付けるとは思わなんだ」
すまんかった、と老人は頭を下げる。
「この阿呆を探すついでに魔物にも会ってきた。確かに上位の魔物に敵意は無かったが····」
老人は言葉を途中で区切り、静まり返る。
「とりあえず、招いちまったもんはしょうがねぇべ。よろしく頼むぞ、ポーター」
男の脇に垂らしてあった袋を奪い、ポーターさんに差し出した。男は未練たらしく、あっ俺の酒代····と呟いた。
たぶん、袋にはお金が入っているんだろう。チャリチャリと音がした。
「あぁ」
ポーターさんは頷いてその袋を受け取った。




