54.魔石の方が食いつく
目を覚ますと、にゃん、と一番先にエリマキに声をかけられた。可愛くお座りしてこちらを見ている。
おぉ、お前はいつも神出鬼没だな。
「坊主、目が覚めたんだな」
ベッドに腰掛けながら、おっちゃんもとい、ポーターさんはそう言った。
「あ、はい」
「ちょっと用が出来たから少し外に出てくる。この部屋のものは勝手に使っていいからな。食べもんは、この箱に入ってるから好きなだけ食え」
「ありがとうございます」
ポーターさんはベッドの下から横長の木枠の箱を見せた。そこにはジャガイモらしきものや葉物野菜が乱雑に入っていた。
「あ、買い物は明日ちゃんと連れて行く」
「はい」
ポーターさんは立ち上がり、ポールハンガーに掛けてあったコートを羽織って部屋から出ていった。
それから少し待って、扉から顔を出して左右を見渡し、一人になったのを確認してからエリマキに話しかける。
「急にどうしたんだろうね」
休憩する前までは、忙しそうではなかったのだから、本当にさっき急に用事が出来たのだろう。
ただぼーっとするだけではつまらないので俺は、食材の入った箱を見てみた。
「ジャガイモっぽい、小松菜っぽい、レタスっぽい、キャベツっぽい」
ジャガイモは好きだが、野菜はいらんなぁ。とりあえずストレージに突っ込んで説明文を読んでみよっと。説明文を読んだ物は元に戻す。
ジャガイモっぽいものは果物だったらしい。果物?この見た目で?え?で、国民の主食らしい。
葉物野菜の説明は簡単に野菜。え?それだけ?もっと他にあるだろう?え?でも、野菜ならエリマキでも食べられるかな?
とりあえず小松菜みたいな野菜をむしってエリマキの前にゆらゆらと揺らしてみた。
「エリマキ、食べるか?」
「にゃー」
エリマキは揺れた葉に飛び付き、俺の手から取られてしまった。そのままゴロゴロと転がっていく。無様にボロボロになっていく葉っぱ。
「えーちょっと、エリマキさん食べないんですか?」
「なん」
「野菜、嫌い?」
その言葉に、エリマキはにゃぁと返事する。えー、じゃぁ遊ばずにそう言ってよ。掃除しなきゃじゃん。まぁ、いいけどさぁ。
「じゃぁ、こっちは食べる?」
売らずに残して置いたスライムの魔石を見せると、にゃ!と喜び、駆け寄ってきた。
魔石は食い付きがいい。カリカリと食べてしまう。
「美味しい?」
「なん」
エリマキは、首を振った。そんなに食いつきがいいのに、美味しくはないんだ。へー。でも、食べるんでしょ?
「もう一個食べる?」
「にゃん!」
ツンデレかな?




