52.おっちゃんの部屋
おっちゃんの質問にただ黙りしていると、
「まぁ、答えられないこともあるよな」
チラリとこちらをうかがい、そう言って会話を切った。
気まずい雰囲気のままけれど、おっちゃんは俺のゆったりとした歩調に合わせて歩いてくれる。
路地裏とあり、その辺にゴミが散乱している。落ちているゴミに足をとられないように気をつける。
「この階段を上がるぞ」
おっちゃんは建物との狭い隙間にあるコンクリートに似たような素材の階段を指差した。そこらじゅうにヒビが入って、今にも壊れそうだ。
おっちゃんの一歩に合わせて、ビシッとヒビが入るのを見た。いや、壊れるのも時間のうちだろ、これ。
階段の途中に扉があり、おっちゃんはそこで止まる。見るからに古い扉を軽く蹴り、何やらガタガタとしてからゆっくりっと開けた。金具が錆び付いているのか、ギイィとまるでホラー映画の効果音のような音だった。
部屋の中は、あちらこちらにヒビやら蔦やらが生えているが、思ったよりも綺麗だった。ベッドのシーツが少し乱れているだけで洋服も落ちていないし、テーブルの上も片付いている。
え?妹の家の方が汚いんですけど····?少し、妹の汚部屋を思いだし、ゾッとした。アイツ、俺が片しにいかなくても大丈夫なのか?いや、もう自分で片付けられると信じたい。
おっちゃんはベッドの近くに椅子を寄せ、俺を座らせる。
「街によったってことは何か用があるんだろ?」
「はい、買い物をしようかと」
「買い物か、何を買うんだ?」
「色々です。櫛とか弓とか小瓶とか」
「弓?坊主は弓を扱えんのか?」
「あ、いえ、俺じゃなくて、友人が」
「その友人とやらは一緒に来てねぇんだな」
「まぁ、色々ありまして」
おっちゃんは俺の言葉を聞いてニヤリと笑った。
「ハハン、つまりは坊主のプレゼントって事か?それもって愛の告白でもすんだろ?」
あり得ない勘違いに、俺の体は固まった。どうしてそうなった?
「え?違いますよ?」
「照れるな、照れるな」
ガハハハっと笑うおっちゃんにため息をつき、諦めた。説明するのもめんどくさいし、根掘り葉掘り聞かれるのも困るし、もうどうにでもなれ。
「予算はいくらくらいだ?」
「全部で8000ゴールドくらいです」
「8000か」
「よし、大丈夫だろ。俺のイチオシの店も案内してやるよ」
ニカッとおっちゃんは、笑った。おおぅ、頼りになるなぁ。おっちゃんのイチオシの店、楽しみだ。
「それと、飯とかちゃんと食ってるか?」
「まぁ、一応····」
「一応って、おめぇさんなぁ、ちゃんと食わねぇと守れるもんも守れなくなるぞ」
呆れた顔をして、頭を掻く。あーと言いながら、何やら考えているようだった。
「そうだな、ブロウのところにでも寄ればいいだろ」
考えがまとまったのか、そう呟いてうんうん、と頷いていた。




