47.貸し借り
シンディさんは木箱にしまってあったパンを取り出して皿に乗せた。あ、食材はそこに入ってたんだ。魔石の木箱しか見てなかったから、見落としていた。
ボールに入れたジャムをテーブルの上に乗せて、すくえるようにスプーンをそえておく。
シンディさんはちぎったパンにジャムを乗せて、美味しそうに食べ始めた。このジャムを俺は食べてもあまり意味が無さそうだった。
ただシンディさんの食事を見ているだけというのも気まずいので、気になっていた事を聞いてみた。
「昨日、ずっと寝てましたけど、体は大丈夫なんですか?」
俺の言葉に目が見開く。
「えっ!?昨日、ずっと?私、そんなに眠ってましたか?」
「少し起きて小屋に入った以外は、俺の知っている限りずっと寝てました」
シンディさんはパンを置いて、口に手を当てて、少し考えていた。
「もしかしたら、魔素不足に陥っていたかも知れません。昨日、····ではなく一昨日ですね。一昨日、カカオさんから借りた木の棒で素振りをしていました。その木の棒が実は特殊な木から採取された物だったので、つい加減を知らずに振って、魔素不足になったんだと思います」
「特殊?」
「はい、魔木という魔素を含んだ特殊な木です。その木から採取されたものは、武器であれば魔素を取り込ませ、放つことが出来るんです。それで、ちょっと、やり過ぎてしまいました。でも、もう大丈夫ですよ」
彼女の言葉を聞いて、ほっとした。目覚めないイベントだったらどうしようかと。
シンディさんはコートを開けて、内側にしまってあった木の棒を取り出してテーブルの上に置いた。
「貸して頂いて、ありがとうございました」
「あの、このまま使って頂いても良いですよ。俺には扱えないような代物みたいですし。なんだったら、シンディさんに上げますよ」
俺の言葉を聞いて、眉を下げてへにょっと困った顔をする。
「貴重な物を頂く訳には行きません」
「じゃぁ、ナイフを····」
しまっていたナイフを取りだし、渡そうとした。シンディさんは顔をブンブンと横に振る。
「それを貰ったら、カカオさんの武器が無くなってしまうでしょう?」
「それはそうですけど。でも、ここにいた人たちの武器はシンディさんも重くて持てないですよね?せめて、どっちか持っていてください」
それでも、受け取らないシンディさんに俺は言葉を付け足した。
「じゃあ、貸し出すってことでどうですか?」
引かない俺に、諦めたのか木の棒を指差した。
「····わかりました。こっちを借ります。必ず返しますから」
恐縮そうに答える彼女は、木の棒を大切そうに抱える。
「あとこの後、街に行くつもりなんですけど、何か買ってくるものありますか?」
「えっ、そこまでは····」
「あまり遠慮しないでください。あとで、返してくれたら良いですから」
「····では、弓と矢を」
ふんふんと頷いて、考える。弓と矢か。もしかして接近戦タイプじゃなくて、遠距離タイプのキャラ?
「弓が得意なんですか?」
「はい。····昔、父と狩りに出たことがあるんです。その時に教えてもらって以来ずっと傍にあったんです。でも、ここに連れて来られて、弓は先に売られてしまいました」
おぉ、気軽に聞いたら、思いのほか重い内容だった。
「あ、私に気遣って高い弓を買って来なくて良いですから。本当に安いので、良いんです。ただ無いと少し不安になるだけなので」
「····わかりました。買ってきます」
「お願いします」
シンディさんは頭をぺこりと下げた。
「にゃぁ」
エリマキの声に彼もまたお腹を空かしていることを思い出した。急いで魔石を食べさせながら、頭の中を整理する。
この後街に行くとして、帰るのは明日かなぁ?街にはきっと安宿があるだろうし。買うものも覚えておかなくちゃ。弓矢に、櫛、瓶、装備系、あと何かあっただろうか。まぁ、他はあとで考えよう。
エリマキが食べ終わる頃にはシンディさんも食べ終わって、食器を片していた。食器は彼女が魔法で洗うらしいので、それを任せて外へ出る。
彼女も見送りと外に出たときに、水溜まりに出来た結晶を見て何かを言いたそうだった。でもまぁ、何も言わなかったので、それを聞くことはしなかった。
「じゃぁ、行ってきます」
「お気をつけて」
俺は頷いて、フレッドに乗っかった。フレッドは俺の安全を確認すると、ゆっくりと歩き出す。
どのくらいで、街につくだろうか。エリマキの頭を撫でながら、うぅんと考える。
移動時間のログインは勿体無いから現実に戻るとして、街までどのくらいかかるかだよな。ちょこちょこログインして確かめる必要があるかな。




