41.対象違い
ある程度採取したら小屋に戻り、ストレージを確認する。今まで食べてきた草の名前ぐらいは知りたい。
草は草(?)と草ァ!の二種類が表示されていた。圧倒的に草(?)の方が多い。42本と5本か。
まだハテナの方は分かるが、草ァ!とは何なんだ。小さなァとビックリマークには意味があるのか。更には個数表示が、小馬鹿にされるような感覚だ。
草(?)の説明文を読むと、"魔素の吸い込んだ草、草食魔物の餌"と表示した。つまりはこれで回復する俺は草食魔物ってこと?
草ァ!の説明文には、"魔物の血を浴びた草(?)、魔素をより多く含んでいる"と書いてあった。なるほど、草(?)の上位互換的な感じか。
とりあえず、草(?)をシンディさんの口に詰めた。それだけで、頬に赤みが戻った。やっぱり、すごいな草(?)。
そんなこんなしていると、30分くらい前に聞いた呻き声がゆっくりと近づいてくる。まさか、あのゾンビさんこっちに来てる?
慌てて《気配察知》を使う。四つ足の獣と運ばれている何か。えー、何これ怖。
後ずさりしようとするも、フレッドに阻まれる。フレッドの顔を見て誰が来るのか予想出来てしまった。多分四つ足の獣はウィルかな。
エリマキもキューキュー鳴いて怯え逃げようとして、失敗。小屋の屋根から降りてきていたウィンに首根っこを噛まれて持ち上げられ、必死にもがいている。エリマキも怖いんですね。わかります。
ところでなんで《気配察知》に引っ掛からないのかがわからない。この様子からして近くにいるはずなんだけど。
木々の隙間から悠々堂々と姿を表した先生とウィル。映画のワンシーンから抜き出したかのような光景に息を飲む。神秘的で神聖な、それでいて荒々しい。まるで森で生きる狩人のようだ。
ただ、その唸っているゾンビが全てを台無しにする。
ウィルがペッと吐き出すように俺の前にゾンビを放り投げた。
その時に先生が言った言葉に俺は耳を疑う。
「戦え」
うっそー、マジで?スライムにも負けたのに勝てるわけないでしょ。
ウィンに捕まえられていたエリマキが俺の隣に下ろされた。怖いという感情が直に伝わってくる。多分、ゾンビじゃなくて、先生になんだろうな。
あ、もしかしてちょくちょくいなくなるのは、先生から逃げるため?なんだかそんな気がしてきたぞ。そういえば、枝を突き刺されてたな。そりゃあ、怖ぇよな。
エリマキは逃げようとして、ウィンに前足で踏まれて阻まれてる。
先生からの視線が痛い。早くやれってそういうことですか?でも、俺はそんな力ないしな。エリマキが俺の近くにいるって事は····エリマキと一緒に、って事かな。
エリマキは聞いてくれんのかな、俺の命令。
とりあえず、草(?)を口に含んで、····この名前どうにかなんないかな。
「よし、エリマキ、やるぞ!」
そう声かけると、エリマキは混乱していたが、ウィンへの抵抗は止めて、隣に来てくれた。
よしよし、まずは小手調べだ。さっきやってた、威嚇をやらせてみよう。
「エリマキ、威嚇だ!」
俺の言葉の通りエリマキは従った。
「ッキシャー!」
さっきの威嚇よりもより強く鳴く。その声は高い金属音も混じっていた。
ビリビリとする感覚に鳥肌が立つ。凄い、俺の命令を聞いてくれた。本当に戦闘できるぞ、俺!ポンコツでも戦えるぞ!
かなり嬉しいが、冷や汗が垂れる。
エリマキさん対象違いですよ。
なんで、先生に威嚇するんですか!




