40.スライムはゼリー
先生へ
暖かな日差しが照らす中、いかがお過ごしでしょうか?
今、俺はピンチです。視覚的暴力にさらされています。お肉が蠢いています。
これ、そのうち立って襲ってくるのでしょうか?
お返事待ってます。まぁ来ないでしょうけど。
なんて目の前の光景に少し現実逃避をしてしまった。
「マジできしょいな」
湖に到着して目を覚ますと、一部が地獄のようになっていたなんて誰が思うだろうか。
ナイフでチョンチョンっとつつくと、それは呻き声をあげる。
「これじゃ、食うに食えないな」
死体を放置すると、ゾンビ化する。ひとつ勉強になったな。このまま食べたら、お腹壊しそうだしどうするかな。
「フレッド、燃やして?」
盗賊達のようにフレッドの炎で燃やせば倒せると思ったが、フレッドは首を横に振る。
えー、なんで?とも思わないわけでもないが俺がテイムした魔物じゃないし、先生の魔物だから俺のお願いを聞き続ける義理もない。それどころか、俺のお守り役をしてくれることに感謝しなくては。
まぁ、そのフレッドが攻撃しないのだから、危険はないんだろう。
チクチクと軽くナイフでつつく。その分だけ呻くからちょっと楽しい。
「っと、こんな事してる場合じゃなかった」
ゾンビ達は今は置いとこう。今は草を取り来ただけだ。ゾンビ退治は予定にない。
適当に湖の回りの草をナイフで刈ってはストレージに入れていく。
万が一を考えて、草は口に入れておく。
黙々と作業してると、隣でエリマキがスライムにちょっかい出した。ぶよんと跳ね返る感触が気持ちいいのか、何度も繰り返している。
スライムはエリマキのその行動に反撃をするように、彼の顔を覆った。おぉっ、と少し焦ったが伝わってくるのは怒りだけで焦りや苦しいという感情は伝わってこないので安心する。
エリマキはスライムを剥ぎ取るために、スライムを引っ掻きながら転がっていく。激おこのエリマキには悪いが、端から見れば必死な行動は微笑ましい。フレッドも俺と一緒でエリマキの行方を見守っているらしい。
ようやくスライムを引き剥がすと、後ろに飛んで距離を取った。すごい怒ってるのがわかる。
「キシャーッ!」
エリマキの威嚇が辺りを震わした。俺の体も弱い電気が通っているようにビリビリして、ゾンビ達も若干静かになった。
威嚇されたスライムや他のスライムも一斉にエリマキから逃れる為、ピョンピョンと跳ねていく。だが、それで逃がすエリマキではなかった。
蛇の姿になって巻き付いて絞めていく。エリマキさんや、多分スライムって呼吸しないからそれ意味ないと思うんだ。
その行動を見てると、雑巾を絞ってる様子が連想される。一生絞れないスライム雑巾····。
限界まで体を巻きつけるとエリマキは大きく口を開け、スライムを捕食していた。今度は透明な赤い色が相まってイチゴのゼリーに見えてきた。
丸々飲み込んでいき、体がでっぷりする。エリマキ、お前そんなこと出来たのか。
目を反らせず見ていたら、そんな俺に気づき猫の姿になって近寄ってくる。猫の姿ではちょっとお腹がふっくらしてるような感じがするくらいで違和感はない。スライムが一匹が腹の中にいるように思えない。
彼は褒めて褒めて、というように頭を差し出す。可愛いなと思いながら、優しく撫でる。
「おー、ヨシヨシ」
とりあえず、スライムはゼリーで、エリマキの遊び道具ということだな。あ、こんなこと思うと、先生に怒られるかな?




