29.横になりながら
すぐさまログアウト、ダッシュしてベッドに転がった。うー、うー、唸りながら口を押さえる。リアルにこんなダメージが来るとは思わなかった。
この分だと痛覚もリアルに痛むんじゃないか?····鬼人族で良かった。うん。痛みなんてゲームで感じたくないもん。他の種族を選んだ人達にはご愁傷さまとしか言いようがないな。
今もカカオ君が気を失ったままグルグル回されていると思うと、呑気というか滑稽というか。
ピコン
サイドテーブルに充電しっぱのタブレットから音が鳴った。体を起こし確認してみると、メールの通知音だった。DWM運営からのメールだ。
タブレットを取って仰向けになり、掲げながら眺める。
内容を簡単に言えば、情報交換の場を作るから来てくださいというもの。
3日後か、どうしようかな。ゲームが終わってから覗きにいこうかな。それに来場者プレゼント的なものも用意してあるみたいだ。何を用意されているんだろうか。お菓子かな?お菓子だといいな。チョコだとさらに良し。
あっ、チョコ大福が食べたくなってきた。今度何か頼むときに餅も買おう。
「もちもち、おもち~」
人指し指でさっとメールを閉じて口座を開く。金額は、18万7000とちょっと。働きもせずに貰うってなんか罪悪感がある。いや、働いてるとも言えるのか?まぁいいや、ここを考えると泥沼に陥りそうだ。
そうだ、後で死んだ時の非常食でも用意しよう。今は米のストックはあるが、備えに備えてカップラーメンとか、他にも日用品とかもついでに。あー、使い込み過ぎないように考えなくちゃ。
今度は貢献度を見ようとして
「いって!」
手が滑り、タブレットが落ちてきた。鼻を痛めながらすぐに持ち上げて画面を確認した。良かった、どこも壊れていない。
気を取り直して、貢献度を見てみよう。1位は案の定、ミカヅキ。2位はヨル、3位はサクラさんか。やっぱ、彼らはパーティなんだろうか。上位陣ってパーティ組んでるから安定的に順位もとれるんだろうし。
人気度は、っと。1位、マシマロ。2位、チョコ。3位、ミカヅキとドレファ?えっはじめての名前だ。ドレファ?誰?凄いなミカヅキさんと同じに並ぶなんて。どんな人なんだろうか。人気者になるくらいだからきっと派手で俺とは程遠い人に違いない。
俺はタブレットをサイドテーブルに置いた。ゴロンっと反対に横向きになり目を閉じる。はぁ、と息を吐き出した。
何も聞こえない静かさに平和だと思う。怒鳴り声も喧騒もない、自分だけの空間に心が凪いでいく。
「家族には感謝してもしきれないな····」
春の暖かさに意識が深く遠く、黒い闇の中で微睡んだ。
最近はよく眠れるになった。それどころか、昼寝も朝寝もばっちこいの勢いだ。多分社員だったころと違って責任という重みがなくなり、ゆとりが出てきたからだろうな。
眠れなくなったり、料理がおいしいと思えなくなったり。精神的にあの環境は負担だったらしい。
きっと家族にも心配かけていたんだ。だから母はココアをいれてくれたし、妹は家に顔を見せに来た。弟は、俺をこれに誘ってくれた。
ふわふわと心暖かい想いが浮かんでいく。




