2.スライムポコポコ
ギルドに着いて俺は、当たりを見回して、受付に向かう。
いや、ゴツい人ばっかだな。そこはファンタジーらしく美女とかいないんですかね?紙装甲みたいな鎧を着てるおっぱいプルンプルンな人···いなさそうですね。はい。期待した俺がバカでした。雄っぱいならいっぱいあるんだけどね。それは俺、いらない。
「こんにちは、ボク君。ギルドの依頼かな?」
受付嬢は、そばかすがある赤毛の眼鏡っこ。美女って感じではない素朴な人だが、コアなファンがつきそうな感じがする。
「冒険者登録したいんですけど、出来ますか?」
「あら?登録料は1000ゴールドだけど、持ってる?」
「はい」
俺は、硬貨袋から硬貨を出した。
「金貨1枚、確かに頂きました。もしかして、ボク君は召喚された人?」
「そうです」
「そう、分かったわ。···はい、このカードに触れてちょうだい」
受付嬢に手渡された真っ白いカードに触れると、じわっと、黒く染まっていく。白い字で自分の名前と種族、ランクが写し出された。始まりはEランクからなのか。
「へぇ、聞いたことも無い種族だけども、分類的には人種なのね。取り敢えず、そのカードは無くさないように。再発行の手続きは、とても大変だから」
受付嬢はすいっと沢山の紙が貼られている掲示板を指差した。
「Eランクの依頼は常時貼ってあるわ。でも、腕試しにスライムでも倒してきたらどう?スライムを倒せなきゃ話にならない依頼ばかりだからね。スライムの魔石は、1つ5ゴールドよ。他の魔石も随時買い取りしてるからスライムになれたら、倒してくるといいわ。城門は来た道を戻って、大通りを神殿とは逆方向に歩けばつくわ。通行税は、500ゴールドね。冒険者カードを見せると、半額になるから見せた方が良いわよ」
俺は受付嬢の指示に従って、ギルドを出た。
ちょうど、すれ違いにプレイヤーの団体が入っていった。おぉ、もうパーティー組んでる人達がいるのか。なんとまぁ、コミュニケーションが高い人達だなぁ。
走ることが出来ないのでテトテトと歩く。城門まで来ると、街を出ていく人で行列が出来ていた。
待つ間にストレージの確認をしていた。
ナイフと木の棒、HPポーション3つ、MPポーション3つ、SPポーション3つ、串焼きか。
木の棒を取りだし、腰のベルトにさして装備。だってナイフとか、いきなり振り回したら危ないじゃん。ただでさえ、謎の虚弱体質でLUKが少ないのに、ナイフとか装備したらざっくり自傷しそうで怖い。
「次ぃ、····ってなんだ子供か。遊びじゃねぇんだ。けぇれ」
手招きされて前に出ると、衛兵がジロジロと見定め、今度は手で追い払う動作をする。やる気無さそうな衛兵だな。
俺はすっと冒険者カードを見せると、ふぅんと納得し、手のひらを差し出した。その手に硬貨を渡す。
「銀貨2枚に銅貨5枚、ちょうどだな。通って良いぞぉ」
城門を抜けると、草原が広がっていた。また外にも街に入るための人達が並んでいた。
少しうろつくと、プレイヤーらしき人達が既にスライムと戦っていた。このプレイヤー達は俺と同じくソロなのだろう。
《気配察知》のおかげでスライムはすぐに見つけることが出来た。
スライムは緑色のプニプニだった。あー柔らかそう。けど、直接触れたりはしない。溶かされそうだから。
木の棒を右手で持ち、殴ってみた。少しでも力を入れると体がふらつくので、手首のスナップをきかして、落とす感じで殴る。
ボヨンボヨンと感触が手に伝わってくる。ところで、これダメージ入ってますか?スライムも俺のことを攻撃したり、逃げ出したりしない。敵とみなしてないのか?もしかして、ダメージはいってない?
回りを眺めてみるが、他のプレイヤーは戦っていた。飛び付かれたり、巻き付かれたり、皆さんのスライム、とても元気ですね。えぇ、本当に。
ところで、俺のSTR12はどこにいったんでしょうか?行方不明です。誰か探してください。
ふと、城門の方を見ると、冒険者らしき人達が続々と出てきた。多分、パーティーを組んでる人達だな。
ソロで活動するのは少し早まったかなぁ。でも、ゲームの中でも気を使う人間関係なんて作りたくないしなぁ。
順調に倒していくプレイヤー達を横目に、スライムの隣に座って、ポコポコと殴った。
攻撃もしてこないので、俺は虚弱体質の謎を解くためにステータスを開き、説明文を読むことにした。