25.彼らの遺品
休憩をとってからもう一度ログイン。長ベンチから立ち上がり、背中を伸ばす。
そこでハッとする。エリマキが首にまきついていることに気づいた。なんつー、あざとさ。俺の胸はときめき過ぎて、破裂しそうです。本当にエリマキが可愛い。
と、呆けている間に小屋の扉が開いて、シンディさんが入ってきた。今日、初めて会ったときの時よりも汚れていた。
もしかして、今の今まで特訓してたんですか?今は6時過ぎた頃だから、2時間くらい先生の相手してたのか。元気ですねぇ····。俺は無理です、ついていけません。
フラフラと彼女は歩く。そして、ベンチに座りテーブルに頭を突っ伏し、ふぅっと息を吐いて目をつむって眠ってしまった。とてもじゃないが、それで疲れがとれると思えない。しかし、他に休める場所というものもなく、仕方がないといえば仕方がないのかもしれない。
俺は彼女を起こさないようにそっと離れた。小屋の中の探索でもしよう。
今分かっているのは、この部屋にある長ベンチと長テーブル、中央にある高台の囲炉裏のようなもの、部屋の隅にある山積みの木箱だけだ。今日の昼飯であるぶら下げてある鍋の中に少しだけスープが残っていた。なに味なんだろうか?塩?不味いとしか分からなかったからなぁ。
俺は取り敢えずそこから離れ、木箱と反対側の位置にある扉を開ける。その部屋は2段ベッドが並んでおり、左右に4つ、合計で8人が寝られるようになっている。ここで寝泊まりは十分できるだろう。それにしても臭いな、この部屋。何の臭いだ、汗とカビか?
多分、盗賊達のアジトだったんだろう。じゃぁ、着替えとかあるかも?
そう思って、ベッドの下を覗き込むと麻袋が置いてあった。紐を緩めると、中にこれまた臭いがきつい服が入っていた。えっと、これに着替えた方が良いのか?今の状態よりはいい?血に濡れていたのが、カピカピしてきたもんな。でも臭いのか。どうしよう、このままでいるわけにはいかないしな。
「ちょっと、退いててな」
エリマキをベッドの上に置いて、俺は勇気をだして服を脱いだ。おえっと吐きそうになりながらも着替える。2回、3回と裾を折ってもまだダボダボしていた。足と手が見えるまで折る。カッコ悪いけど、背に腹はかえらないか。
「おいで」
エリマキに手招きしたが、目を見開き口を半開きして何かに驚いているような顔をしている。え、何その顔。
ピョンと肩に飛び乗り、体を擦り付ける。モフモフ感が少し足りないが幸せだ。そうか、楽園か。
今まで着ていた服と同様にそれぞれのベッドの下にあった麻袋をストレージに収納。明日の朝、洗濯しよう。
そう意気込みながら、今度はベッドの状態を確認する。ペッシャンコのマットレスと薄汚れているシーツ、それと掛布団であろう何かの毛皮は獣臭い。
どれもこれも洗濯行きだな。盗賊達の衛生管理どうなってんだ。もう居ないから聞けやしないんだけど。そういえば、俺もランドリーに行かなきゃ。無料のランドリーは3階だったような?行くとしたら、やっぱり早朝だな。4時起きの直で行くか。
「にゃぁん」
エリマキの声で我に帰る。その後にクゥと腹の虫が泣いた。可愛らしい音に口元が緩んだ。
何を食うんだろうか?肉?残り物のスープじゃ、塩分過多になるかな。でも、ゲームだしそこら辺まで詳しく作ってないかも?
そこまで考えると、エリマキは肩から飛び降りた。猫の特権というように、スマートな着地だ。俺の方を見てにゃぁんと、一鳴きすると数歩進む。動かないでいると、もう一度振り返りにゃあ、と鳴く。
これはついてこいってことなのかな?
俺はエリマキの元へ歩き出す。すると、尻尾をピンと立ててまた足を進める。隙間があった扉を片足で押して、囲炉裏を通りすぎ、木箱の元まで歩く。
木箱は横並びに3列、上に左と真ん中に1箱ずつ乗っかっていた。近くによってみるとそれは存外に大きい。1つ1つが俺の肩くらいの高さ、幅は俺の両腕を広げて丁度ぐらいだ。
エリマキはヒラリヒラリと階段のように上っていき、左の木箱の上に乗り、穴を掘るようにカリカリと木箱の蓋を引っ掻いた。
「開けろってこと?」
にゃんと、返事するエリマキ。
俺は木箱にゆっくりと登っていく。腕力だけではどうにも登れず手を伸ばし木の板の隙間を掴み、少しの段差に足を引っ掻けと、体全体を使い登っていく。それでも何度か失敗して落っこち、ようやく目的の木箱までたどり着く頃には、息を切らしていた。
少し深呼吸して落ち着かせ、若干の好奇心と共に蓋を目一杯、押し開く。
そこにあったには色とりどりに輝く宝石達で。その美しさに息を飲み、呟く。
「マジか」




