1.走れない、このキャラクター
目を開けると、神殿だった。ここが日本支部の神殿か。そのうち国対抗とかやりそうだなぁ。
回りにはごちゃごちゃと、プレイヤーが溢れているため、ちょっと人酔いしてきた。
早くここから出よう。
俺は小さく細い体をいかして、人の合間を抜けていく。
うむ、この体型モヤシ悪くないのぉ!見た目ヤバイけどね、アハハハ。
神殿をでると、街があった。ファンタジー感溢れる中世ヨーロッパの街並みだ。これぞ、剣と魔法の世界って感じだな。
まずは冒険者組合?冒険者ギルド?でも探そうか。
街を歩くと、肉の焼けた良いにおいがする。串焼きかな?ついついにおいに誘われて、出店に足を運ぶ。
ステータスで所持金を確認する。
5000ゴールドか。
「おっちゃん、これ一本ください」
「ん、100ゴールドだ」
人のよさそうな店主は、串焼きを一本渡す。俺は串焼きを受け取り、空いた手のひらに100ゴールドを置いた。
「なぁ、坊主。おめぇさん、神殿の儀式から召喚されてきたお人かい?」
「そうですよ」
「こんな子まで召喚されるのか」
おっちゃんはなんかしんみりしてたけど、返事もそこそこに俺は肉串にかぶりつく。いただきまーす。
がぶっ
瞬間、俺は吐き出したくなった。肉は固く、まずい。生臭いし、飲み込めなかった。口を押さえて必死に飲み込もうとするが、喉が拒否するように、口の中に残った。
こんなの予想と違うんですけど!ナニコレ?俺のSAN値がガリガリ削られていく気がする。
「···泣くほどうまいのか?」
不味いです!とは言えず、首を何回も縦に降る。
「そうか」
ひたすら肉を噛んで、細かくして少しずつ飲み込む。吐き出さないようにしっかり口を押さえて。これはなんの地獄ですかね!?ガタガタと震える右手に気づかないでね、おっちゃん!
数分かけて飲み込み、おっちゃんに聞いてみた。
「えっと、冒険者ギルド?はこの近くにありますか?」
「あぁ、この通りをまっすぐいけば、冒険者ギルドの建物が立ってるよ」
「ありがとうございます」
俺はここからすぐさま離れようと、足に力を入れた。
ズサー
え?なに?
気づけば俺は地面と衝突していた。
「おい、坊主大丈夫か?」
おっちゃんは俺の脇に手を入れて起こし、土がついた顔を袖で拭ってくれた。
ただ俺は呆然とする。力入れたら、力が抜けた?え?どういうことですか?
地面に落ちた串焼きは、虎視眈々と狙っていたらしい野良猫が持ち去った。お前早いな。
それを一緒に見ていたおっちゃんは何を思ったのか、ため息をついて
「はぁ、串焼きはもう一本やるから、落ち込むな」
焼いていた串焼きを一本、俺の手に握らした。
いらねぇー!そう言えたらどんなに良いか。
「今度は転ぶなよ、坊主」
おっちゃんは、頭をポンポンと優しく叩く。あぁ、その優しさが辛いんじゃぁー!
復活した串焼きを憎々しく思いながら、俺はうんっと頷いて出店から離れた。
本当にどうしようこの肉。
取り敢えず、ストレージに突っ込んだ。後で食べよう。
冒険者ギルドに向かう途中でさっきの現象を確かめてみた。
走ろうとすると、力が抜けてずっこける。それも盛大に。なんなのこの体。モヤシどころか病弱体質なんですかねぇ?AGIとか意味ないじゃん!中々、いい感じにあるのに!
この体で何をしろっていうんだよ!
と、思いながら歩いていたら、いつの間にか冒険者ギルドに着いていた。俺はその事を考えるのを止めた。
うん、どうにかなるかな。つんだら、つんだで良い思い出だ。ハハハ。




