17.さらに放送事故
俺は赤色の狼の背中に乗せられ、森を駆け回ることになった。灰色も置いてきぼりにはできないので、ポケットの中にしまった。全然起きないのがまた凄い。
俺は必死にしがみつく事しか出来なかった。凄まじい勢いで駆け抜けていき、景色をまともに見れないし、左右にも動くからひどく酔う。景色なんて森の中だから、ほとんど変わんないだろうけど。
『止まれ』
先生の言葉で狼はゆっくりとスピードを緩める。狼達が止まると、先生は白色の狼の背中から降りて、近くの木に登りはじめた。登るといっても普通じゃない。まるで段飛ばしに走ってるかのようだ。枝や葉が邪魔してあっという間に見えなくなった。
先生が何をしているか分からないので取り敢えず、赤色の毛並みを堪能する。狼の背中は昨日よりマシな手触りだった。櫛が欲しい。
『人数を確認をしろ』
えー、マジで何してるんすか?と思いつつも俺は言われた通りにスキルを使う。
少し前方に10人ほどがたむろっている。その内の1人は小さい。子供か?というか今、気配察知さん、あんたレベルアップしましたね?範囲が広くなりましたよ。って、先生の気配がしない。どこにいるんですか?
「人数は10人です。その内の1人が子供っぽいです」
ここから届くか分からないが、声に出して伝える。
『お前のナイフを出せ』
「おわっ」
急に後ろから気配がして、驚いて目を開ける。振り向くと先生がいた。え、何、瞬間移動とか覚えているの?というか、そんなスキルあるのか?
疑問は遠くに置いておいて、俺はしまっていたナイフを取り出す。血でべちゃべちゃだ。先生が手を差し出してきたので、ナイフを手の上に置いた。
「何するんですか?」
『人には家という住み処が必要なのだろう?用意してやる』
「は?」
『お前は後で来い』
ナイフの血を払う為に一振りして、確かめるように握り直す。おおカッケー。見た目が似てんのにこうも格好良いのは何故なのだろうか。あれか、カカオ君の中身がポンコツじゃないからこんなに変わるのか。
『行くぞ』
先生の言葉を合図に白色と白っぽい緑がついていく。俺もついて行こうと赤色から降りたが、すぐさま赤色にうなじを噛まれて地面に押し倒される。体は前足で押さえつられた。ヒイィィィ、怖いぃ。鼻息が、牙が、垂れてくる涎が、喰われるという恐怖を誘う。なにしてんの、この赤は!仲間じゃないのか!?
じっとしていると、動きを封じるための行動だとわかった。だが、しかし恐怖が薄れるわけでもない。
さっきの言葉は先生は俺に言ってたのかと、バイブレーションのように震えながら一人納得していた。
「誰か早くアイツらを止めろ!」
「こっちくんな!」
「何なんだ、こいつらは!」
ここからでも微かに聞こえる悲鳴と戸惑いの言葉。先生は何してるんすか?ちょっと怖くて、スキルも使えない。あー、あー、聞こえませんー。俺は何も聞いていません。
『来い』
先生の声が聞こえて、赤はようやく俺の首を離しゆっくり歩き出す。俺も立ち上がり、砂埃を払いながら赤についていく。赤は先生の居場所知ってんのかな?
少し開けた場所に着き、俺はその光景を見て卒倒した。
想像以上の血塗れ惨状。内臓ぶちまけ。狼達は肉片に食いついてるし、先生は真っ赤な血を全身に被るように立っていた。ここはどこの地獄ですか?俺の視界にモザイクプリーズ、今すぐに!
「先生何してんですか!?」
リアルでそう叫んだのは、致し方あるまい。




