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剣に封印されし女神と終を告げる勇者の物語  作者: 星時 雨黒
第1章 裏切りの聖王
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第80話 世界の裏側

 遅れてすいません。

 光が収まると、玉座の間にいるのはザインとサリエル、そしてエメの3人だけになっていた。


「ここは……?」


 ザインは軽く周囲を見渡すが、ヴィレンやエスティア達の姿はない。

 そればかりか、先程戦闘で傷ついていた床や壁は綺麗に修復されている始末。

 一言で言って、異様な空間だ。ここがさっきまでいた玉座の間ではないということを、ザインは直感で察した。

 そしてそれを裏付けてくれる1番の証拠は――。


「……」


 サリエルの右側。ヴィレンやウィーがいた場所が床ごと抉られ、玉座の間の分厚い壁に大きな風穴が空いている。

 風穴の向こう側。視界にちらつく赤い光は、恐らく街が燃えているのだろう。

 それだというのに住民の悲鳴一つ聞こえないのは、やはり異質である。


「――ここは異界。世界の裏側(・・)


 ザインの問にエメがぽつりと応えた。


「ほお。ここがそうか!」


 ザインはその一言で納得する。昔、領域の勇者は現実とは違うもう1つの世界を創り出すことができるといった噂を耳にしたことがあったからだ。


「質問いいか、譲ちゃん?」


 ザインは確認のため、一応聞いておく。


「ここにゃ街の住民はいねぇのか?」


「ん。いま異界(ここ)にいるのはわたし達3人だけ」


 それを聞き、ザインは安心した。これで手加減をする必要はなくなった。


「じゃついでにもう1つ。この異界とやら、どのくらい保つ?」


「いつまでも。"こっちの私"か"あっちの私"が生きてる限りは」


 つまり。どれだけザインがこの世界で暴れようが、向こうの世界には影響がないということだ。

 太刀を握りしめ、首をゴキゴキと鳴らして、


「そりゃいい。最高だ。街も人も時間も気にせず、本気で殺れる――!!」


 満面の笑みで眼前の化け物に飛びかかった。


「ふふっ、血の気が多い人ですね。いいでしょう。時間はたっぷりありますので、少し遊んで差し上げます」


 次の瞬間、盛大な音とともに玉座の間が爆ぜた。





 一方、現実世界の玉座の間では――。


「……きえ、た?」


 光とともに消えたザインとサリエル。何が起きたのか、アリシアは状況が掴めなかった。


「羽の生えた変なおじさんと変なおじさんは異界に飛ばした」


「異界……?」


 聞き慣れぬ単語に首をひねるアリシア。それを見てウィーが説明を付け加えた。


「領域の勇者の能力っす。うちも詳しくはわからないんすけど、簡単に言うと、この世界とは違うもう1つの世界を創り出す、みたいな認識でいいっすよ」


 そのウィーの説明に、今度はカルラが補足を入れる。


「厳密に言えば、世界を創り出すんじゃなくて、この世界の裏側に存在(ある)もう1つの世界とを行き来する《扉》を創る能力だけどな」


「ちょっとちょっとカルラさん。簡単に言うとって言ったじゃないっすか、うち」


「お前の説明じゃシアちゃんが余計混乱しちまうよ!」


 ピーキャー喧嘩しながらも、2人は手を止めない。深刻なフィーナの状況、疲労や緊張やらで2人の額には汗がじっとり浮かんでいる。

 そんな中、突然エメの頬が切れ、白い肌を赤い血が伝う。


「大丈夫。向こうのわたしが、かすっただけ」


 アリシアの視線を受け、聞かれる前にエメは素っ気なく応えて頬を拭う。


「それより。変なおじさんが苦戦してる。羽のおじさんがすごく強い。このままじゃ、まずいと思う」


 エメは表情一つ変えないが、サリエルが優勢でザインが苦戦しているということはちゃんと伝わった。

 あのザインでさえ、やはり天使を一人で抑えるには無理があるのだ。


「エメ、扉を開いて下さい。わたしも行きます」


 そう言って最初に立ち上がったのは、エスティアだった。


「何があったのかはわからないけど、無理しないほうがいいと思う」


 エメの言葉通り、エスティアの表情は未だ優れない。

 しかしエスティアは首を横に振って、


「そうも言っていられないのですエメ。この国で起きている問題を、赤の王であるザイン様ばかりに頼る訳にはいきません。

 レオ様亡き今、勇者(ブレイブ)であるわたしが戦わずして誰が闘うのです。

 わたしは、……わたしがあの天使を討たなければならない。

 我が王の仇がそこにいるというのに、今無理をせずして何時(いつ)しましょうかっ!」


 顔は蒼白く、剣を握る手は震えていた。それでも、彼女の藍緑色の瞳だけは強く輝いていた。


「わかった。ティアがそこまで言うなら、わたしは止めない」


「ありがとう、エメ」


 そう言って、エスティアはエメに笑いかけた。丁度そのとき、タイミングを見計らったように、玉座の間に力強い声が響く。


「――我らも、助太刀致そう!!」


 エスティアの次に続いたのは、ガドロフ()3人である。


「傷の方は大丈夫なのですか?」


 サリエルに吹き飛ばされ、3人とも傷だらけの埃まみれだ。


「いやぁ、ぼくは無理かなぁ。だって肋骨逝っちゃって……」

 

「――やられたまんまで引き下がれるわけねぇだろォ。あのフザケたクソ野郎をぶちのめさねぇと気が収まらねェ。なぁ、ノーさんもそうだろ?」


 弱気なノウの言葉を、上からウェルガーがかき消した。


「いや、だからさぁ? おじさん助骨逝っちゃって……」


「――ははっ! 肋骨が折れようが亡き聖王様のために闘いたいとは、いやはや流石はノウ殿だな!!」


 剛笑とともにガドロフがノウの背中をバシッと叩く。

 うぎゃッと小さな悲鳴が上がる。


「ガドロフくん肋骨折れてるって言って……」


 衝撃で一歩前へ踏み出したノウの手を、エスティアの手が優しく包んで、


「ありがとうございます。皆さんが一緒に戦ってくれるとは、心強い限りです!」


「いや、あの、だからおじさんはさ……」


「ならとっとと行こうぜェ! 扉出せ、エメ!!」


「ん」


 エメが左手を前へ向けると、指輪が光り、何もない場所から白い扉が生まれた。


「お願いだからみんなおじさんの話を……!!」


 悲痛な声を漏らすノウにかまわず、ガドロフとウェルガーは彼を連れて扉の中に消えていった。

 今年の目標は『なろう毎日開く!』

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