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剣に封印されし女神と終を告げる勇者の物語  作者: 星時 雨黒
第1章 裏切りの聖王
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第79話 領域の支配者

 莫大な魔力はどこへ消えたのか――?

 ウィーやアリシアが唖然とする中、サリエルは困った表情で、まるで幼子を叱るように優しく口を開いた。


「残念です。このきに乗じて侵入者が来るかもしれないと、あなたには城門の警備を任せたはずですよ、エメ」


 それに白銀の少女――エメは素っ気なく返す。


玉座()()の"マーカー"がぜんぶ消えてたから」


「ええ。あらかじめ私が壊しておいたはずなのですが……」


 魔力や能力さえも封じるウィー・リルヘルスや、人類最強と名高いアイシャ・クラウリーなど、世界に十数名しか存在しない勇者(ブレイブ)の中で、【領域の勇者】エメ・ラドクリスはサリエルが最も警戒を抱いていた人物である――。



 かつて神々が神器に封印される以前の話。

 神の戦に勝利し唯一神の座を手に入れしサリエルの主でさえも、まともに戦えば勝ち目のない圧倒的な力を持つ神々がいた。

 始まりの神である"アダム"と"イヴ"の主権能を継承せし3人の神が存在(いた)のだ。

 その内の二人。世界に形を与える"権限"を与えられし神と、世界に終わりを告げる"役割"を託されし神。


 無から有を生み出し、有を無に帰す。


 相反する力を持つ彼らが争い合えば、一昼夜で世界の大半が作り変えられる。それほどまでに強大な力を、彼らは有していた。

 しかし。アダムとイヴが造りしこの世界は、その負荷に耐えられない。

 世界を構築している器が許容量を超え限界を迎えたとき、世界は根本から消滅する。


 崩壊でも破壊でもなく、消滅してしまうのだ。

 そうして幻想も終焉も抗えぬ、永劫の無が訪れる。


 そうなってしまっては手遅れなのだ。


 そうなってしまう前に、手を打たなければならぬのだ。


 だからこそ。もう一人神が必要だった。


 『創世』と『破壊』の間を保ち、世界のバランスを『維持』する神が――。



 室内を照らす豪勢なシャンデリア。玉座の間最奥の椅子。そして5つある入り口にそれぞれ1つずつ。

 領域の勇者の能力であるマーカーと呼ばれる印を、サリエルは戦闘が始まる直前全て破壊したはずだったのだが、


「ああ、なるほど。納得です。彼女にもつけていたのですか」


 サリエルの視線の先にはエスティアの姿があった。

 エメの所有する神器ラ・フィアレに殺傷能力はない。彼女の神器の能力は、"領域を支配する"という一点にのみ特化されているからだ。

 彼女の領域内(テリトリー)では、彼女を殺すことはおろか傷一つつけることはできない。


 その能力の1つが、マーカーをつけた場所に瞬時に移動することができるという転移能力である。

 付け加えるならば、大まかな場所にしか飛べず、べらぼうに魔力を消費するだけのマーリンの転移魔法の完全上位互換にあたる。


 エメはサリエルの独り言には反応する様子もみせず、周囲に軽く視線を送り、


「あなたはだれ? レオはどこ?」


 冷めた声と表情(かお)で淡々と言った。どこまでも笑顔の絶えないレオボルトは、さきほどと同様に腰をおり深く頭を下げる。

 

「私は、第七天使サリエルと申します。聖王レオボルト・レイジングは私が殺しました」


 その答えにエメはただ一言。


「そう」、とだけ。


 エメは興味を示さない。ただあるがままに、起こった現実を受け入れるだけ。

 そんなエメが次に発した言葉。


「あなたがティアを泣かせたの?」


「厳密に言えば、彼女は聖王レオボルト・レイジングの死に対して……」


「――あなたがティアを泣かせたの?」


 無感情の言葉から発される、反論や否定を一切許さぬ無機質的な圧力があった。


「……結果的にいうなれば、肯定です。私が彼女の心に傷をつけてしまったことは確かでしょう」


「そう」


 ポーカーフェイス。その機械的なまでに無感情の表情からは、エメが心中どんな感情を抱いているのか全く読み取れない。

 しかし――。


「なら、あなたは敵」


 言葉の意味合いからして、彼女が怒っていることだけは確かだった。


 ―――絶対領域(サンクテュエル)―――


 エメの小さな胸の前に掲げた、左中指につけてある白い指輪が蒼白い輝きを放ち始めた。


「どうやら私は、一番厄介な勇者を怒らせてしまったようですね」


 言葉とは反対に、サリエルの表情は幾分楽しげに見える。嬉しげに見える。

 エメ・ラドクリスが何かしようとしていることは、誰の眼から見ても一目瞭然だった。

 仮にも彼女を一番厄介と称するサリエルだったが、しかし彼は動こうとはしない。


 自分が天使であることに絶対的な自信を持っているのか。それとも今から何をしようと、エメの領域内では無駄であることを知っていたのか。

 恐らくその両方で、サリエルはただただひたすらに魅入っていた。


「顔に出さなくとも私にはわかります。見えます。感じます。あなたの激昂する表情。あなたの哀しみに満ちるその表情が。……ああ。とても美しい」


 挑発でもなければ侮辱でもない。彼は本当に、本当に心の底から感動しているのだ――。


「ティアを泣かせたあなたを、わたしは許さない」


 部屋を照らす蒼白の閃光が一際眩く輝き、そして――消えた。

 今年中に1章完結することはできませんでしたが、来年もお付き合い頂ければなと思います!

 それと気分転換に書いてた小説アップしたのでよろしければ読んでみてください。

『異端者ですが、なにか?』という適当極まりないありきたりな題名ですが、個人的にはかなりよく書けたと思っているので!


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