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剣に封印されし女神と終を告げる勇者の物語  作者: 星時 雨黒
第1章 裏切りの聖王
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第77話 天の使い

 エスティアたち白の王国の冒険者は、その脅威に驚愕せざるを得なかった。

 対してザインやウィー、アリシアたちはここに来る前からその存在を予感していた。故に驚きは彼らほどではないにせよ、彼の大戦に参加した者は2年ぶりに、そうでない者は初めて目にするのだ。


 その汚れなき絶望を――。


 その白き悪夢を――。


 一瞬でこの場の支配権を握った男は、その背から生える白い翼をはためかせ、腰をおり丁寧に頭を下げた。


唯一神(ゆいいつしん)様の眷属が一翼"第七天使"サリエルと申します。以後、お見知り置きを」


「天使、だと……?」


 その尋常ならざる威圧感に、誰しもが息を呑み、

 その尋常ならざる存在感に、今の今まで気づけなかったことに恐怖を抱く。


「左様です」


 警戒心をよりいっそう高め、思考を巡らせる。


 いったい何時(いつ)から入れ替わっていたのだろうか、と――。


 そんな彼らの思考を読んだように、不条理を形にした化物は、さきほどまでとなんら変わらぬ口調で続ける。


「そして最後に、聖王レオボルト・レイジングの居場所ですが」


「「――――ッ」」


 サリエルが左腕を持ち上げる動作に皆が身体を固くし、


「「……?」」


 その手が自身の頬を指差したことに表情を固くした。

 まるで野良猫のような反応を見て、愛らしいとばかりにサリエルは微笑む。

 そして彼は、どこまでも悪気のない笑顔で、残酷なことを口にした。


「さきほどまで私が"着ていたモノ"が、そうですよ」


「――――ッ」


「え?」


 理解する者できない者。サリエルは"脳が理解を拒んだ"エスティアに視線を送り、


「ほら。あなたの頬にもついているではありませんか?」


「…………」


 エスティアは自身の頬に左手で触れた。


「……………………」


 そうして左手を目の前に持っていく。赤い血のついた左手を。


「うそを……」


 数歩後ろによろめき、信じたくないとばかりにエスティアは首を左右に振る。――それがいけなかった。


「―――――――――あ、ぅ」


 足元に転がっている、―――眼球。


「ぁ、あぁ……ああぁぁぁぁぁぁっ!!!」


「あなたの言うとおり、いくら天使であれど、声帯や匂いなどは再現できませんからね。ですから、死体を再利用させて頂きました」


 エスティアが膝から崩れ落ちると同時に、ガドロフらがサリエルに飛びかかっていた。

 "不殺の誓い"は天使との戦いのために存在する法だ。相手が天使ならば、不殺の制限(リミッター)は外される。彼らは殺す気で、全力でサリエルに牙を剥く。

 3方向からの同時攻撃。しかしサリエルは動かない。奴が動いたのは、ガドロフらの攻撃がサリエルに直撃する直前だった。


「ぐッ―――!!」

「うがッ―――!!」

「あハッ―――!!」


 先に攻撃を仕掛けていたにも関わらず、後から動き出したサリエルの攻撃のほうが先にガドロフらを捉えていた。

 そのまま彼らの身体は、玉座の間の四方の壁まで吹き飛ばされる。


 天使との間には、絶望的で圧倒的なまでの、絶対的な力の差があった。

 彼を除いては――。


「天地断絶 無我之太刀――」


 彼の太刀筋は美しい弧を描き。振るわれる太刀は一切の音を殺し。過ぎ行く剣線の後には紅色の残光を置き去りにする。


「――斬空!!」


 彼の剣技は音を殺し、光を超え、空を割る――。

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