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剣に封印されし女神と終を告げる勇者の物語  作者: 星時 雨黒
第1章 裏切りの聖王
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第76話 真実の真相

 聖王レオボルト・レイジングは言う。


「――質問です。魔力、心拍、呼吸全て止めていたのですが……どうして(わたくし)が生きていることに気づいたのか、参考程度に教えて頂けますか?」


「よく当たっちまうんだ、俺の直感は」


 レオボルトは、ふむと小首を傾げて、


「感、ですか。……それは対策ができませんね。賞賛です。さすがは戦神アレス様の選んだ人間だ」


 楽しそうに笑うレオボルトに向け、エスティアが声を震わせた。


「なぜ、生きている……確実に頸動脈を斬り裂いたはずです!」


「いったいなにを斬り裂いたと?」


 レオボルトは首を横に傾け、傷一つない綺麗な首筋をエスティアに見せつけた。


「そんな、傷が……」


 首の傷だけではない。ザインとの戦闘で付いた傷も、恐らくは巨剣に貫かれた腹傷も……。

 致命傷のはずだった。死んでいてもおかしくない。否、死んでいなければおかしかった。


 神器ミョルニルに、回復系統の能力は備わっていないはず。なら残るは魔法の類か……いや、不可能だ。回復魔法にも限度があり、傷一つなくあそこまで完璧に傷を治すことはできない。そもそも回復魔法は傷を治す魔法ではなく、身体の自然治癒力を高める魔法なのだから。

 しかし、あれは回復というより、不死の勇者カルラ・カーターの持つ再生に近い……。


 動揺するエスティアらに構わず、レオボルトは1つ嘆息してから続けた。


「各国の勇者(ブレイブ)が集結しここへ向かっていると耳にし、黒の王国を攻めずにいたのですが……。不覚です。私としたことが、少し欲をかきすぎましたかね。まさか味方に刺されるとは、夢にも思っていませんでしたし」


 あまり表情を外に出さないさっきまでとは打って変わって、残念そうで、それでいて嬉しそうな表情。普段のレオボルトからは想像もできない。


「今の今まで半信半疑でしたが、確信致しました。奴は聖王様ではない」


「まるっきり口調が変わっちゃったねぇ。何者なんだい君は?」


「何者かどうかなんて関係ねェ。まず、てめェの右手に持ってる神器、どうやってレオさんから奪ったぁ? まさか雷神トールがてめェみてェな偽物につくわきゃねェからよぉ」


 ガドロフ、ノウ、ウェルガーが臨戦態勢に入る。


「レオの居場所を吐くんなら、楽に殺してやるぜ。(にせ)ボルト」


 無精髭を撫でながらザインが言うと、レオボルトは少し困った顔で、


「落ち着いてください。一度に聞かれましても、1つずつ……」


「――まず、その変装を解きなさい無礼者!!」


 エスティアの怒声を受け、レオボルトはようやく気づく。


「おっと。そう言えばそうでしたね。長らくこの姿のままでしたので、完全に忘れていました。――脱ぐの」


「え」


 瞬間。レオボルトの身体が弾けた。そう、この場合"弾けた"という表現が最も適当だろう。辺り一面に血と肉片が飛散し、エスティアの頬にも赤い血が付着した。


「――――」


 弾けたのは外面だけなのか、そこには真っ赤に染まったレオボルトの姿がある。しかしよく見ると、血に(まみ)れているだけで、その中身はレオボルトとは違うものが入っていた。

 男だ。黒い長髪に、美しく整った顔つき。身体つきは筋肉質とまではいかないものの、長身に見合う程よい肉付きがあり、正に絵に描いたような芸術品(ルックス)をしている。

 男は、自分が何も身に纏っていないことに気づいたようで「おっと失礼」手の平で頭から下まで自身の身体をなぞっていく。すると血まみれの身体が綺麗になると同時に、見る間に服が男の身体を包んでいく。

 服を作り出すなど、見たことも聞いたこともない魔法。それだけで、男が只者ではないことが知れる。しかしザイン達の視線は、男の右手に釘付けだった。


「コレですか?」


 男は右手を掲げて見せた。右手に握る神器を掲げて見せた。


「見てのとおり、力づくで抑えていたまでのことです」


「――――」


 絶え間なく放電し続ける雷槌を握る男の右腕は、電熱で焼け焦げ黒く変色していた。思わず顔をしかめてしまいたくなるほど痛々しい。


「ですが、もうその必要もいりませんね」


 そう言い、男は右手の力を抜いた――と共に。槌から今までとは比にならぬ規模の稲妻が溢れだし、膨張し、そして――消えた。


「ではまず、私が何者かという質問ですが」


 消えた神器や焼け焦げた右腕など気にも止めず、両腕を広げ勿体つけて男は言うのであった。


「私、こういう者にございます」


 ばさり――――。音を立て、白く汚れなき悪夢が、神々しい絶望となって舞い降りた。

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