表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣に封印されし女神と終を告げる勇者の物語  作者: 星時 雨黒
第1章 裏切りの聖王
65/178

第64話 陰謀の影

 アリシアの姿を捉えたエスティアの瞳孔が見開かれ、続いて大きく揺れる。


「あなたは、あの時の……」


 驚愕、戸惑い、焦燥。彼女の瞳の中に様々な感情の色が見える。そりゃそうだろう。殺したと思っていた相手が生きていたのだ。

 隣にいるアリシアの身体が強張るのが分かった。彼女の手が無意識に俺の服の袖を握る。

 俺はできるだけ不自然ないよう、静かに臨戦態勢に移行した。いくらこちらが戦力差で優位に立っていようと、エスティアがいきなりアリシアを襲ってこないとも限らない。

 しかしそんなことの必要性は欠片も要らなかった。なにせ彼女の口から出た言葉、それは――。


「生きて、いたんですね。……良かった」


「え――?」


 アリシアの安否を心から安堵するものであったからだ。

 だが、ここで残るは疑問だけ。


 どうして、と――。


 アリシアの受けた奇襲は恐らく――いや確実に勇者(ブレイブ)であるアリシアを狙ってのことだろう。同じ日に襲われたディルモットとセレスの2人も、魔王軍幹部に席を置いている強者だった。


「――あ、いえ。突然の強襲、そしてお仲間のことも。悪いとは思っています。すみませんでした」


 やはり、エスティアは望んでいなかったんじゃないのか。アリシア達を襲うことを。

 人質を取られている? わからない。

 天使が絡んでいるのか? わからない。

 わからないと言えば、ライム・イーパーの件も気になる。

 わかることは、今この国で何かが起こっているということ。そして誰かが"嘘"をついている、ということだけだ。





 町は静まり返っていた。情報によると60万以上の人間が住んでいる王都のはずだが、不気味なほどに何一つ物音がしない。

 他国の者が町に入るのだから、当たり前と言えばそれまでなのだが。生活音すらも聞こえてこないというのは、4ヶ国を回って始めてのことだった。

 いくらなんでも町中で戦闘にはならないと思うが、敵陣内にいる以上警戒を怠るわけにはいかない。

 無言で歩き続けること数十分。ちょっとした傾斜のある坂道を登りきったところに、ルクシオンの王城は立っていた。

 下から上まで汚れ1つ、傷1つない真っ白な城だ。ヴェルリムの魔王城や、リントヴルムの王城に負けずとも劣らない。

 城門の前に立つ2人の門番が、お互いの槍で門を塞いでいる。しかしエスティアの姿を見るや否や、直ちに槍をどかし門を開けてくれた。

 そのままエスティアは場内へと入っていき、師匠も続くが、俺は門の前で足を止めた。


「どうしたの、ヴィレンくん?」


「やっとここまで来たんだなと思ってな」


「ヴェルリムを出てから2週間と5日。長かったようで、短かかったような気がしますね」


「19日間一緒にいれた俺は毎日が幸せだったよ、フィーナちゃん」


「・・・・・・」


 未だミーティアでの件を引きずっているらしく、フィーナはぷいっとカルラをスルーして、先に場内へと足を運ぶ。そのフィーナを追いかけていくアリシア。ポンポンとウィーに肩を叩かれながら、死にたそうな顔のカルラ達も中に入っていった。


「気を抜くなよ?」


 最後に残ったリヴィアに「ああ、わかってる」と返し、俺はもう一度城を見上げた。恐らく最上階。あの大きな硝子が見える部屋に、聖王はいることだろう。


「んじゃそろそろ、最後の王様に会いに行くとしますか」


 そう言って、リヴィアと一緒に俺は城門を潜った。

 ここから先、何が起こっても不思議ではない。

 「気をつ抜くな」というリヴィアに対して俺は「わかってる」と答えた。

 ――しかし。俺は何一つわかってなどいなかったのだ。

 どんな敵が待ち構えていようが、白の王国、あるいは天使と戦うことになったとしても、俺は傲慢にも仲間を守りきれる自身があった。

 故に。俺にはまだ覚悟が足りていなかったとしか言う他あるまい。なにせ、まさかあんなことになるなど、この時の俺は想像もしていなかったのだから――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ