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剣に封印されし女神と終を告げる勇者の物語  作者: 星時 雨黒
第1章 裏切りの聖王
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第30話 宿願の乾杯

「いやー、久々に楽しかったなー」


 右隣を歩くカルラが伸びをしながらそんなことを言った。


「見てるこっちは楽しむどころじゃなかったんだが?」


「私も同感だ。大戦が起きるかと思ったぞ」


 人の気も知らずに、カルラはケラケラと楽しそうに笑う。こっちは肝が冷えたっていうのに。


「だが、魔剣レイヴ。なかなか面白いものを見せてもらった」


 カルラの腰に下がっている純白の剣を見据えながらリヴィアがそう言う。


「だろ?」


「だろ、じゃねぇよ」


 確かにあの時、カルラの魔剣はフウガへと突き刺さった。しかし。そう見えただけであって、実際はフウガの腹部をすり抜けただけだった。いや、すり抜けたという表現が正しいかどうかは分からないのだが・・・・・・。


「斬りたいものだけを斬る魔剣、か」


 つまり、カルラが斬りたくない物は、さっきの模擬戦のようにすり抜けさせることができるのだ。


「いやいやそんな大層なもんじゃねえって。斬りたい物だけを斬れるっていっても俺の力量じゃあ限度があるし、レンレンのみたいに魔力ごとぶった斬ったりはできないし。ってかアレは反則だし」


「私なら空間ごと斬れるぞ?」


「いやいやそれは反則を超えてもはやチートな」


 遠回しに鍛錬不足だと言われている気がしたが、いくら鍛錬しようと空間なんて斬れる気がしねぇ。ってか、斬っちゃいけない物だろ空間て。


「そう言えば。フウガの小僧が言っていた、確か……捌徹(やてつ)だったか?」


「そ、捌徹」


「他にはどんな代物があるんだ?」


 どうやらカルラの魔剣が余程お気に召したらしい。いつもよりもリヴィアは上機嫌だ。


「んーと・・・・・・有名どころで言えば『覇剣』ヲリキスとか、『霊刀』五月雨(さみだれ)。他にも『龍剣』とか『妖刀』っつうのもあるぜ?」


「お前、やけに詳しいな?」


 俺が知ってるのは、昔々あるところに超一流の鍛冶師がおりました。そんでその超一流の鍛冶師は、超一流の刀剣を打ちまくりました。で、人々はその8本の刀剣を捌徹と呼びましたとさ、ぐらいの豆知識である。


「まぁ、俺情報通だから」


「自称だろ?」


「そ、自称」



✽✽✽✽✽✽✽✽



 その晩。自由王もとい騎士王主催の宴会が終わり、皆が寝静まった午前0時。王都リントブルムにおいて1番高く、街全体を見下ろせる場所で、1人の男が酒の入ったグラスを片手に夜景を眺めていた。


「――こんな場所で晩酌とは、いいご身分だこった」


「いい眺めだよね? ボクのお気に入りの場所なんだよ」


 男に言われるがまま、金髪の男は視線を傾けた。


「確かに、――いい眺めだ」


 街を見下ろすと、まだ起きている人がいるのか、チラホラと明かりがついていて・・・・・・21時頃ならもっと綺麗だろうに。

 金髪の男はそんな感想を胸に、男の正面、ここに座れと言わんばかりに1つだけ設置してある椅子に腰掛けた。

 金髪の男が椅子に座ると、その様子をにこやかに見守っていた男がテーブルの上に置いてあるワインのコルクを開けながら言う。


「何年ぶりかな?」


 キュポンッといい音が鳴り、空のグラスに酒を注いでいく。


「さぁな」


 金髪の男が一言そう告げると、男は満足そうに酒の入ったグラスを金髪の男に渡す。


「それじゃ、久々の再開に乾杯……」


「――の前にまずいいか?」


 グラスを掲げかけた男の言葉を切り、金髪の男は静かにそう言い放つ。


「フィーナくんのことかな?」


「ああ、そうだ」


 どこまでもお見通しな男の発言に、金髪の男の声色と語尾、そして空気が変わる。


「俺がどれだけアイツのことを探してたのか知ってたろ?」


「うんうん。知ってたよ」


「んじゃ、――なんで黙ってた?」


 金髪の男から溢れでる殺気の篭った魔力(リア)に、グラスがキンキンと震える。


「・・・・・・」


 だが、男は応えない。顔色1つ変えずに、正面から金髪の男の瞳を見返している。

 

「答えろよ、マーリン」


 金髪の男の怒りが沸点をこえかけたとき、男は――マーリンは視線を街に移して、ポツリと呟いた。


「・・・・・・確信がなかったんだよ」


「……確信?」


「そうそう、確信がなかった。だから、あえて言わなかったんだよ。

 いやいや、違うか。言わなかったんじゃなくて、言えなかったの方が正しいのかな。この場合は」


「どういことだ?」


「簡単なことさ、ボクには自身がなかった。確かにフィーナくんはあの子によく似ている。蒼みがかった銀髪に、蒼銀色の瞳。目元や口。でもそれだけだ。もしフィーナくんが"あの子"じゃなかったらと考えると、気が引けて言えなかったんだよ。

 だってボクは、君がどれほど必死だったのかを知っているからね」


「・・・・・・」


 マーリンの言葉を聞き、理解し、考え――。

 金髪の男から殺気が消えた。


「でも、今君がフィーナくんと一緒にいるということは、やはりフィーナくんが"あの子"で間違いなかったんだね?」


 マーリンの言葉を受け、金髪の男は頷いた。


「ああ」


「君がそういうんだ。ならそうなんだろうね」


 金髪の男の言葉を、マーリンは疑わない。

 その場に沈黙が降りた。怒声を上げ、勘違いで旧友に殺気を向けてしまった申し訳無さに、次の言葉が浮かんでこない。そんなことをするために、今日ここにやってきたのではないのに。


「いきなり怒鳴って悪かった。今日は、礼を言いにきたんだ。アンタには色々と世話になったからさ」


 思い切って口に出した言葉。


「いやいや、ボクは前に君に助けてもらった借りがあるからね」


 マーリンは何事もなかったかのように優しく微笑む。こういうやつなのだ、彼は。昔から変わらない。良い奴なんだ。


「……ありがとな」


「どういたしまして」


 そう言って、マーリンは酒の入ったグラスを手に持った。それに続き、金髪の男もグラスを掴む。


「それじゃあ、カルラくんの宿願を祝って。――乾杯」


 グラスとグラスのぶつかり合う心地良い音が響いた。


2019年6月1日


 まずは、大変お待たせしました。待っていて下さった方々本当にありがとうございます。

 次に、いくつか変更点をお知らせします。


・題名が変わります。

ブレイブリー・サーガ〜モノクロに佇む1人の少女〜

RAINY HAWK―終を告げる勇者の物語―


・全体的に修正を加えました。大きく変わったのは28話と29話(一から書き直しました)です。


自己満小説ですが、頑張って書くので最後までお付き合い頂ければ嬉しいですっ

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