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剣に封印されし女神と終を告げる勇者の物語  作者: 星時 雨黒
第1章 裏切りの聖王
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第26話 絶対防御の盾

 どのくらい闘っただろうか。あれからかなり時が流れたと思う。

 俺はフウガとライガの隙のない完璧な連携の前に、攻撃に出られず防御に回るしかなかった。


「おらおらヴィレン! 逃げてばっかじゃあ俺達には勝てないぜ!!」


 と、フウガとライガに認識させた頃だろうか。


――そろそろ、か。


 フウガの弾を左方向に回避しながら、ライガとフウガが一直線上に並んだ瞬間――俺は行動を開始する。


 こまめに進路を変えながら、ライガを壁にフウガから隠れるようにして突き進む。ライガの後ろにいるフウガが自由に攻撃できないようにするためだ。


「ちいっ!」


 フウガは前のライガが邪魔で上手く攻撃に回れず、舌打ちを漏らす。


 俺は剣を構えなおし、目の前に迫るライガへと向け剣を振り下ろした。

 剣は美しい弧を描きながら、ライガへと超高速で迫った。


 しかし。ライガに届く1メートル手前で、俺の剣が何かに衝突し、バチチチッと盛大な火花が散った。

 力の限り全力で押し込むが、剣は全く前へと通らず、後ろへと後退せざるをえなかった。


「――絶対不可侵防壁(アブソリュート・キャッスル)!」


 ライガの持つ神器の能力で生み出される、魔力防壁。歴代の豪傑は、鋼よりも硬い防壁を創り出すと聞いてはいたが、今の感触からして、ライガのそれは鋼の強度を軽く上回っている。

 まさに難攻不落の城塞といえよう。


「流石に硬いな……」


「残念だが、この防壁をやぶんのは無理があるぜヴィレン? なんてったってこいつぁ、騎士王(おやじ)の攻撃さえ防ぎ切るからよぉ!」


「まぢかよ」


「まぢだ!」


 ライガが勝ち誇ったように、鼻を高くして胸を張った。


 あの男は手加減という言葉を知らない。何をやるにしても、自分が勝たなきゃつまらねぇというような思考の持ち主なのだ。

 それ故ザインが防壁を破れず、悔しがる顔が容易に浮かんだ


「そうか。あの(ちから)バカの師匠でも破れないのか・・・・・・」


「ま! 3回だけだけど!」


――なんだよ、破られてんじゃねぇか。


 だが、3回耐えただけでも十分誇っていいだろう。なにせ、一撃で大陸を両断するような怪物の攻撃を3回も防ぐ防壁を創り出したのだから。


「なら。2回目で俺がこいつを破れれば、俺が師匠より強いってことが証明できるわけだ」


 俺は剣に溢れんばかりの魔力(リア)を注いだ。


「おい、ライ」


 フウガが何かを感じ、声を上げた。


「ん?」


「防壁全力で貼っとけ」


 理由はわからないが、楽しそうに笑うフウガを見て、ライガはそれに応える。


「りょーかい!」


 フウガは気付いていないが、こういう場面で笑うときのそれは、まるで親父そっくりだとライガは思っていた。

 面白くなりそうな場面では必ずニヤける。楽しくて仕方がないのだ。

 そして、目の前にいる弟もそう。圧倒的に自分が不利な状況でさえ、まるでその状況を楽しんでいるようだ。



 ヴィレンがザインに連れられリントブルムに来て、ライガ達と初めて鍛錬をさせられた日のことだ。


 ヴィレンはやる気満々だった。強くなるためならなんでもする、そんな気概がライガにヒリヒリと伝わった。

 まるで何かに取り憑かれたかのように、力を求めるヴィレンの表情からは、必死さが感じ取れた。

 だが。それを見てザインは、ヴィレン達3人に言い聞かせるようこう言った。


『――笑え。勝てねぇとわかったら笑え。辛ぇときこそ笑え。口角を釣り上げて嫌でも笑え。笑う癖をつけろ。

 笑えねぇ状況ってのはな、心に余裕がねぇときだ。人間つうのは面倒な生き物でよ、心に余裕がねぇと弱くなる。悪くすりゃあ壊れちまう。だから、馬鹿みてえに笑えや。そして何より・・・・・・戦いを楽しめ!』


 その時ライガは気づいていなかった。自分もまた、兄弟と同じく口元に笑みが浮かんでいることに。



 俺は地面を強く蹴った。眼前にはライガのアブソリュート・キャッスルがそびえ立っている。

 だが、俺には秘策がある。俺がリントブルムを去り、ヴェルリムに帰還してからの3年間。ライガが神器を使いこなしフウガが新技を編み出したように、俺も新たな技を会得していた。


「だーかーら! ただの攻撃じゃあ俺の絶対防御は――」


十番目(ディコード)終焉(ピリオド)魔象断絶閃(シヴァ)』!!」


 神器の能力を発動させ、ライガの防壁へと全力で剣を振り下ろした。


 魔象断絶閃。能力はシンプルで、こいつは魔力による攻撃・防御を無効化する、ただそれだけの能力だ。そしてただそれだけ故に、俺の中で最強の技だ。

 俺の剣はライガの防壁を紙のように切り裂いた。一瞬で防壁全体にヒビが拡散していき、音を立て硝子のように飛散する。


「はあぁ!?」

 

 俺はそのまま体勢を低くし、振り下ろした剣の切っ先をライガへと向け突進した。

 剣の軌道は下から上へと。それと同時に身体も下から上へと持ち上げることにより、次の攻撃に移りやすくするためだ。


 絶対防御が破られ、今何が起きたのか分からず、パニック状態に陥っていた様子のライガだったが、流石は紅炎騎士団の副団長だ。一瞬で思考を切り替え、俺の攻撃をぎりぎりのところで盾で防いだ。・・・・・・が、ガードした体勢が少し悪かったのか、その衝撃で盾が少しだけ右にズレた。

 たった数センチのズレ。だが、一流の戦士同士の闘いにおいては、致命的といえるだろうズレ。

 俺はその一瞬の隙を見逃さず、左側へと大きく一歩を踏み込み、身体を落とし込んで剣を肩に担ぐような体勢になる。

 間合いが詰まり、左手に持つライガの盾は防御に回れない。ライガの右手に持つ剣が振り上げられるのが見えたが、俺の方が速い。

 切り落とす手前で止めるつもりで、俺はライガの右腕を両断する気で剣を振ろうと――


「――させねぇよ?」


 視界の端に銃を構えるフウガの姿を捉えた。


「チっ!」


 フウガが銃弾を放った。銃弾は真っ直ぐに俺のこめかみへと迫る。

 俺は首を左に傾け、ぎりぎりのところで弾丸を避けた。


「あっぶね……!」


 またもや殺す気で弾丸を放ったフウガに1言言ってやりたかったが、俺はすぐさま攻撃する筈だった剣を急遽(きゅうきょ)防御に回し、頭上から振り下ろされるライガの大剣を受け止めた。


「――お、んっも……!」


 咄嗟に左手も添えたが、その威力に地面にヒビが入り、肩に自分の刃が数センチ食い込んだ。次弾を放とうと銃を構えたフウガの姿を捉え、背筋に悪寒が走る。


「う、ぉぉおお!!」


 俺は歯を食いしばり、全力で柄に力を込めた。が、押し負けるばかりで現状をキープするのが精一杯だった。


「チェックメイトだヴィレン。――噛炎(ごうえん)の弾丸"バステト"」


「――っ!!」


 フウガの銃口から新たなる魔弾が放たれた。それは見る見るうちに炎を纏った猛虎と化し、鋭利な牙が俺を喰い殺さんばかりに眼前に迫りくる。


 ライガの大剣は持ち上げられそうにない。かといってフウガが弾を外すことはありえない。


 詰み、だ。


 殺されたりはしないだろうが、ひと噛みぐらいは我慢するしかねぇなと覚悟を決める。そして次の瞬間。盛大な血しぶきが俺の視界に舞った。


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