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剣に封印されし女神と終を告げる勇者の物語  作者: 星時 雨黒
第1章 裏切りの聖王
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第15話 今後の方針

「全く、兄さんはいっつも後先考えずに行動するんですから!」


――後先考えずに魔法ぶっぱしたのはどこの誰だよ!?


 フィーナを加え俺達5人は、氷漬けになったダイニングのテーブルを囲んで座っていた。いや、テーブルだけではない。家全体が氷っているのだが。

 俺は落ち着いたフィーナに昨日のことと、今日の会議でのことを話した。


「それで白の王国が不殺の誓いを破った理由を探しに行くんですよね。具体的にはどうするつもりなんですか、兄さん?」


 皆の視線が俺に集まる。それもそうだろう。俺はこれからの予定を、まだここにいる誰にも話していないのだから。


「そうだな。白の王国に行って、聖王に直接聞くのが一番早いが……」


「それはさっき、バロルが白の王国は会話するつもりはないっていってたろ?」


 カルラが机に突っ伏しながらそう言った。


「白の王が会話をするつもりがないなら、会話をしなければいけない状況を作ればいい」


「前置きはいい、早く話せレン」


 リヴィアが話を待ちきれずに催促する。


「まぁ落ち着けって。まず俺達は、他の3国を周って国の代表という名の戦力をを集める。そして白の王に直接会いに行く。そうすれば白の王も、俺達と会話をしなければいけない状況になる」


 カルラはいつも通りニヤニヤと笑っていた。リヴィアも何故だか少し笑っているように思える。アリシアとフィーナに至っては、驚きすぎて声も出ない様子だ。


「戦力ってーのは具体的に?」


「そうだな・・・・・・勇者(ブレイブ)を1人ずつ引っ張って来るのがベストだ」


 ニヤッとカルラが笑った。


「ちょっと待ってよヴィレンくん! いくら強い人達を集めても、白の王様が会ってくれるとは……」


 アリシアが語尾を小さくしながら言った。


「いや、会う。必ずと言ってもいいぜ?」


「理由はあるんですか? 兄さん」


「あぁ。当代の聖王は国民を愛する良王だ。そこに敵国の勇者の集団が集まれば、奴は断れない。いや、断ることができないように一言こう言ってやればいいのさ」


 俺は一呼吸置き、少し低い声で、悪役のようにして、


「話し合いに応じなければ、"この場"で攻撃を開始する――ってな?」


「それって・・・・・・国民を人質にしてるようなものじゃないですか……」


 フィーナが俯いた。今言ったのが他のやつだったら、フィーナは激昂しているだろう。それほどまでにフィーナは誠実で優しい。


「でもさー、脅すだけなら別に俺達だけでも良くね?」


 カルラが俺達の顔を見回した。確かにそうかもしれない。勇者が3人に、可愛い妹が1人。


「そうだな。俺達4人なら、戦力的には申し分ないだろう。だが、さっき言ったのはあくまでも最終手段だ。俺達が他の3カ国の奴らと共に白の王国に行くことは、俺達は4国の代表として話し合いに来たのだという口実を作るためさ」


「その4人って、リヴィーを抜いた4人ですか?」


 フィーナが心配そうな顔で聞いてくる。


「当たり前だろ? リヴィアと俺は、2つで1つみたいなもんだからな」


「そうだぞフィーナ。私たちはそいう意味深な関係なのだ」


「いや、そういう意味じゃないからな」


「――そうですか。私も一緒に行くことが決まってるんですね……」


「悪い。嫌だったか?」


「全然そんなことないです! 違くて・・・・・・少し嬉しいんです」


 フィーナは胸元に手を持っていく。フィーナは気づいていないのかもしれないが、フィーナがこの動作をするときは、決まって心から本気のときだ。

 怒ったときや、嬉しい時。心配した時や、寂しい時などにフィーナは癖でこの動作をするのだ。

 俺は隣に座るフィーナに向かって「そうか」と一言言って頭を撫でてやる。


「最初に行く国はどこか決めているのか?」


 リヴィアはどこか楽しそうだ。


「まあな」


 俺はこの計画を思いついた時、最初にどこの国に行けばいいのか決めていた。というより、その国が唯一知り合いのいる国だからだ。


「俺達の最初の目的地は――」


 記憶が蘇る。毎日稽古の後に寝転がった芝生。本当の兄弟のように接してくれた奴ら。そして――。


「『赤』の王国、首都リントブル厶!」


――師匠のことを思い出していた。

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