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剣に封印されし女神と終を告げる勇者の物語  作者: 星時 雨黒
第3章 終焉の十日間
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第148話 終わりに向けて

 その後、帝国は2度目の滅びを迎えた。

 《ユウシャ》ユーキと、帝王ルグルス・J・アルデュビアが死亡した時点で帝国は敗北している。

 魔法で強引に従わされていた人々は開放され、指名手配の残党も討伐された。

 生き残った七帝将ダーリー・ウェンブリーと、『ジョーカー』ことデイフィル・アデマンは《Sランク冒険者》ライム・イーパーの必死の訴えにより、死罪を免れ白の王国へと引き取られた。

 今度こそ、帝国は完全に消滅したのである。


 しかし、残った問題は山積みで。しかも状況はかなり切迫している。

 なにせ人類の余命は残り1週間を切っているのだから。





 人類滅亡まで残り8日―――。


 急遽王達が一同に集結した。

 『騎士王』ザイン・ドラグレク。

 『魔王』バロル・バルツァーク。

 『霊王』ラクア・ディッファニー。

 『賢王』ラフリス・エルファーノ。

 『聖王』"代理"エスティア・テイルホワイト。

 場所は白の王国王都ルクシオン。

 人類最後の世界会議が行われた。



 そんな大事な会議が開かれている最中、俺が何をしていたのかと言えば――。


「レン。アレが美味そうだとは思わないか?」


 先を行く漆黒の髪が揺れ、黒紫(ダークパープル)の瞳がキラキラと輝いている。

 少女は振り返り、その口元に笑みを浮かべて、


「もちろん全額おまえの奢りだが」


 そう、リヴィアとデートの真っ最中である。



 黒の王国に帰還した俺達は、方針を残りの時間を自由に過ごすことに決めた。

 この先何が起こるかわからない。

 天使との戦闘が始まれば、勇者(ブレイブ)である俺やカルラは確実に前線メンバーに組み込まれるだろう。

 そして正直なところ、サリエル戦を終え、帝国戦を超え、疲れた。


「美味いな。うむ。やはり私の見る目に間違いはなかったか」


 隣でパクパクと苺のパフェを頬張るリヴィア。

 その瞳が俺のチョコレートパフェを捉える。


「おまえのも美味そうだな。一口よこせ」


「いいぜ。お前の苺パフェを一口くれたら一口やるよ」


 そう言って俺は意地悪く笑った。

 こう言って置けば、リヴィアは諦めるだろうと思って。

 そんな俺の目の前に、赤みのある苺の乗ったスプーンが差し出される。


「は?」


「は? じゃないだろ。ほら。早くしろ。何をボケっと固まっている。先に一口くれと言ったのはおまえだろう?」


「いや、あ……おう」


 思考が纏まらないまま、俺は気圧されるように口を開き、

 ぱくり。途端口の中に広がる苺の甘み。加えて砂糖やクリームの甘さが丁度良く、苺本来の甘みを最大限に引き出している。


「……うま」


 思わず溢れ出た感想に「だろう?」リヴィアが自慢気に笑う。


「ほら。次はわたしの番だ」


 言われるがまま俺は自分のパフェを一口掬い、幼子のように口を開いて待つリヴィアのその小さな口にスプーンを運んだ。

 ぱくり。リヴィアの顔が緩んだ。


「うむ。チョコもやはり美味いな!」


 俺は自らのスプーンを見つめ、ちょっとだけ心臓が高鳴った。

 しかしまったく気にもする様子のないリヴィアに、気恥ずかしくなっている俺の方が恥ずかしくなってきて。

 俺は残ったパフェを一息に食べ始めた。


「………」


 だから俺は、自分のスプーンを見つめ隣でほんのり顔を赤くしながら、パフェを口に運ぶ少女に気づけなかった。

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