第101話 猫の少女
お久しぶりです檸檬ですっ!
皆さん体調の具合はどうですか? 風邪引いてないですか? コロナかかったりしてないですか?
ぼくはもう元気盛々ですっ……って言いたいところなんですが、仕事や失恋などで精神はちきれて病みかける程度に元気じゃないですっ!!爆
この4ヶ月ストックを貯めまくるつもりではいたんですが……いや、その、正直30話分くらいしか書けてないのが現状でして……、、
もうね、惰性と気合でなんとか完結するまで書ききったりますよ!!
前回と同じく4日/1話更新!締め切り追いつかれないよう頑張ります!!
質とかだだ下がりですが、ご了承下さいましorz
「―――めんどくせぇ。ったく、なんで俺が見回りなんて七面倒くせぇことしなきゃなんねぇんだ……」
岩石に腰掛け眼前に広がる濃霧を見渡しながら、男はぶつくさとため息をもらす。
見た目は三十路を超えた当たりのおじさんだ。ボサボサと自由に遊ばせた黒い髪。だらしなく生え散らかした無精髭。
黒地に金の装飾が施された制服を着崩し、その体型は細くもなければ太くもないが、まくり上げた袖からは適度に鍛えられた肉体が垣間見える。
「それは5大国に宣戦布告しに行く任務を"ロード"が蹴ったからじゃないですかぁ?」
だらしない格好の男――ロードに応えるのは、同じく黒地に金の制服をきちんと着した少年。
こちらの少年は14、5歳といったところだろうか。まだまだ幼さの残る顔立ちをしている。
「そうだったか? 眠くて覚えてねぇ……」
ふわぁぁぁと大きな欠伸を浮かべるロードを横目に、
「でもでもロード。わざわざ5大国に行くんだったら、こっちの見回り任務のほうが絶対楽ですよ」
「ん。まぁ、それもそうだな」
再び当たりに静寂が満ちる。
「あー、話は変わるがライム」
ボリボリと頭を掻きむしった後、ロードは思い出したかのように口を開いた。
「動くのだりぃからさ、俺の代わりに便所行ってきてくんねぇ―――?」
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両手を紅く染めた吸血鬼――エルザベートが、魔族の屍の上に立っていた。
ゴクッゴクッゴクッ―――
血を吸い付くし軽くなった猫耳種の亡骸を、エルザベートは布雑巾のように投げ捨てる。
「クソクソクソクソクソクソッ。何故この私が幹部を降ろされなければならないッ!? どうしてこの私が屋敷を追い出さなければならないッ!? 何故だどうしてだこの私がッ! エルザベート・ブラッドがッ――!!」
その異常なまでの興奮。狂気と血に染まる吸血鬼の紅眼が、尻をつきガタガタと全身を振るわせる猫耳種の少女を捉えた。
「お、お助けを……どうか、どうかお助けを………!!」
猫耳種の少女は思う。いったい自分たちが何をしたのかと。
今朝は雲一つない晴天だった。こんな日は1日中日向ぼっこでもして過ごすのが良好だ。猫耳種の彼氏と毛並みを整え合いながら、ゴロゴロするのが最高に気持ちいい。
しかし、手元にある所持金は僅かばかり。
毎日毎日体たらくな生活を送っていては、いつか所持金が尽きてしまう。
ゴロゴロしたい衝動に耐え、動きたくない身体に鞭打ち少女は仕方なくパーティーメンバーと野鼠採集に出発した。
今更後悔してももう遅い。それが少女の運の尽きである。
採集の帰り際、夕日と一緒に死神は現れた。
高貴な服装をした銀髪の吸血鬼。見間違えるはずがない。元・魔王軍幹部『銀血鬼』エルザベート・ブラッド。
そして少女は知っていた。
エルザベートがつい2週間前、魔王軍幹部の席を外されたことを。
どうしてそのエルザベートがこんな僻地にいるのか。しかも付き添いもつけず、たった1人で――。
本能に従い"逃げる"という選択肢は少女になかった。初めから逃げ切れないとわかっていたからだ。
何せ相手は最上位魔族の吸血鬼種。魔族最強の10人に選ばれるほどの実力者。まともに戦って勝てるはずなどなかった。
故に少女は"祈る"しかない。
しかしそんな少女の祈りも虚しく、
「助けて下さい、だって? 私に意見するな。汚らしい下位種族のメスがッ」
「あ、ぐぅ………!!」
首を鷲掴みにされ、地面に組み伏される。
「ごめん……なさい。助けて、下さい……!!」
少女は涙目で懇願する。
その様を見てエルザベートは笑った。残酷なほど楽しそうに嗤った。
「いい顔だ。その恐怖に染まった表情は特にいい。私好みではある」
エルザベートが少女の首元を強引にはだけさせる。
「いい声で泣け。女を見せてみろ。私が血を吸い尽くすには勿体ないと思うくらいに、ね」
そしてエルザベートの牙が、少女の白い首筋に食い込んでいく。
痛みと恐怖に少女の顔が歪む。けれども少女は悲鳴を押し殺し、代わりに精一杯の声で喘いで見せた。
「あっ……、んっ……」
吸血鬼の毒か、既に痛みはなかった。
「そんなものかい? それじゃ私の気を引くことはできないよ?」
羞恥に顔を赤らめながら、恐怖に身体を震わせながら、少女は喘声に色気を混ぜる。
「いいよ。その調子だ……」
たとえ乙女心を弄ばれようが、少女には生きねばならぬ理由がある。
帰りを待ってくれている家族がいる。
一生を誓い合った恋人がいる。
父と母は年老い、恐らく永くはないだろう。少女には兄弟が5人いる。
ここで自分が死んでしまったら、誰が兄弟の面倒を見るのだ。
だからどうしても、生きねばならない。
生きて、生きて。私が、あの子たちを―――………。
「………ふふっ、猫耳種の割には楽しませてもらった。思わず全部吸い付くしてしまうほどにね」
空っぽになった少女の肉塊を愛おしげに見つめた後、エルザベートはゆっくりと振りかえる。
「それで、君は何者だい? この私の食事を盗み見て逃げないとは、余程肝が座っていると見える」
数秒の静寂の後、エルザベートの後方の茂みがガサガサ音をたて、奥から体長3メートルはあろうかという魔族がのそりと姿を現した。