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恋愛喫茶と僕の初恋  作者: まときち
1杯目
14/18

13話

 知ってしまった真実は僕の頬を更に赤く染めていった。


 それを隠すように僕はチーズタルトを頬張ったみたが、それによってむせてしまった。


「大丈夫ですか?ではそろそろドリンクも準備しましょうか」


「コホッ……。はい、よろしくお願いします」


 あいにく水が出されてなかったので、僕はマスターが急遽(きゅうきょ)水を出すまで咳き込んだままだった。


 この店は料金が安い代わりにタダの飲み物ががないらしい。


 そういう情報はいいとして、改めてマスターは丁寧にドリンクを作っていた。


 そして今、僕の頭の中で考えていていることが2つある。


 1つは中村さんに対する僕の気持ちだ。


 どんどん中村さんとの出来事が膨らみ続けていても、好意とそれに対する疑問の割合は変わることがないという事だ。というかよく分からない。


 自分が一歩の所を踏み込めないのでいるのは分かるのだが、それが恐ろしい1歩なのか待ちどうしい1歩なのかは僕自身知る由もないのだ。


 2つ目は佐々木さんから聞いた、僕の今の状況をマスターが出してくれるドリンクで表現するということだ。


 頭の片隅でずっと引っかかっている佐々木さんの話なのだが、

 それだけ聞いてもその次の展開が読めない。


 普通の人なら自分の恋バナというのは恥ずかしい経験だと思うけど、恋愛を知らない僕にはそれしか方法がなく自分に何が起こっているのかを知るにはそれしかないのだ。


「どうぞ。出来上がりましたよ」


 出されたマグカップには湯気が立ち上り、仄かに甘酸っぱい香りが僕の鼻を刺激してきた。


 中には黄金とはまた違う水晶のような透明感のある黄色い液体が注がれていた。


「これなんですか?」


「それは聞かない方がいいかと思います。毒は入ってないですから安心してください」


 さっきマスターが作ったタルトを食べたはずなのに、またそんな考えが浮かぶ。

 それと何気にマスターに見抜かれたのが悔しい。


 僕が毒でも入っていると思うのはマスターが優しくて、出てくるものが見た目や匂いだけで美味しいと考えてしまうからだ。


 裏を考えてしまうのも仕方が無いことだろう。


 ゆっくりと片手でマグカップの持ち手を握り僕の口へと運ぶ。


 カップの縁に唇を重ね、味わい、そっと離した。


 何故かその時に僕は放課後の音楽室にいた時の中村さんの声が聞こえていた。

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