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恋愛喫茶と僕の初恋  作者: まときち
1杯目
13/18

12話

 話は本題に戻る。


 佐々木さんも帰り、僕とマスターだけになったこのカウンター席。


 まず最初にすることはなんなのか。見当もつかずマスターに聞いてみると、


「そうですね。恋愛についての話が先か、あなたの相手を明確にするのが先か。といったところでしょうか」


 ということである。


「恋愛をしたことなくてもそういう話を小説とかで読んだことありませんか? 」


 確かに恋愛ものは1度演劇の台本で読んだことはある。

 僕が覚えているのは先輩達の代の台本で、脚本を書いてくれる生徒がいて、その人が作った作品がなぜか恋愛ものになっていた作品だ。


 先輩達が言うにはベタベタらしいのだが、何も知らない僕には少しばかり新鮮味があった。


「読んだことはありますよ。 そのシーンは一目惚れするところで、急に心の内側からの感情に駆り立てられて、主人公のその感情に合わせて鼓動が速くなっていって、そして好きになってしまったっていう受動態の背徳感がいいんですよね」


 と、その台本を書いた本人のロマンチストの先輩……。

 通称ロマンチス()がそう言っていた。


「かなり曲がった考え方ですけど、まぁそんなところです。 とりあえずそんな出来事が今日に起こりませんでしたか?」


 僕は今日の一日を振り返ってみる。


 朝→登校中春香に遭遇し理不尽な目に合う。

 昼→昼休み部活関係で春香から理不尽な文句を言われる。

 放課後→台本を取られ恐喝されるという今日1番の理不尽なことが起こる。


「あの……、大丈夫ですか?」


 気づくと目線がテーブルを向いていた。

 しかも焦点が合わないほど落ち込んでしまった。


「いや、今日を思い出していたら大変な思い出しかなくて」


 恋愛に関係ないことしかないのは分かっていたけど、ほんとに今日は災難だ。


 春香にはいじめられるし、草場くんは帰らぬ人となってしまった。 挙句僕は中村さんから意味のわからないことを求められるし……。


「…………」


 ある。


 24時間の中でたった2〜3分のやり取り。


 それでも今日の中で1番重要だったかもしれないやり取りがあった。


「なか、むらさん?」


 もしあの衝撃が一目惚れで起こったものだったら。


 もしあの感情が中村さんによって動かされたのなら。


 もしこれが初恋というものなら。


「してしまっていたかも知れません……」


「そうですか」


「いや、してしまいました」


 僕は、中村さんに。


「一目惚れ……。しました」

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