序文
この世界には無数の物語があふれている。
小説であれ、アニメであれ、漫画であれ、映画であれ、その種類を限らなければその数はまさに無数というべきだ。
中には数千年も語り継がれる物語があれば、誰も注目しないまま忘れ去られていく物語もある。
いや、忘れ去られていく物語の方がずっと多いのだ。面白さがどうであれ、一部の物語が脚光を浴びたがために闇夜に消えていった面々がどれほどあるか。
そう――一生の内僕たちは、果てしなく広がり、今も広がりつつある物語の海から一つかみの量しか汲み取ることはない。それ以外の全ては埋没し、消えていってしまう。何の救いもないままに。
けど、時にはその忘れられかけている物語に、あかりをあてたい。
この「小説家になろう」というサイトはすでに成立してから十年以上経っている。膨大な量の作品が投稿され、その大きさはすでにわりかし深い水たまり程度に発展している。
だが、やはりその中でもてはやされ、人間から名誉を受けることができる物語はごく限られている。結局大部分の作品を闇に沈み、誰からも注目されることがない。
残酷な現実。
もちろん、わかってる。「小説家になろう」の数十万の作品はみな、物語の海をひとすくいしたほどの量でしかない。とるにたらない量に過ぎない。そのわずかな量の中ですら、冷たい節理がつらぬかれているのだから、僕らの目はなるほど
そんな不運の物語たちを、僕はわずかな間小さな光で照らしたいのだ。




