さーくる活動!!
初めての読者は初めまして、そうでない読者はお久しぶりです。
久しぶりの投稿となってしまいました。
色々やることが多くなってきたので、投稿頻度が落ちてきていますね。
今回は短編となっています。
それでは楽しんできてください。
序章 メッセージ/別れ
喧嘩。喧嘩。喧嘩。喧嘩――。
毎日、喧嘩をしている青年がそこに居た。
オールバックの髪型に鋭い目つきをしている青年である。
何故こうなってしまったのだろう?
疑問に思っている青年が空を仰ぐ。
空は雲一つ存在しない、茜色に染まった空だった。
「俺はどれくらい、ここで喧嘩をしていたんだろうか……」
空を仰いだまま、青年はそう口にする。
辺りを見渡すと、ガランとした校庭に突っ伏している男たちが六、七人確認できる。
今しがた、殴り飛ばした男たちだ。
暫くしてから校庭の木陰に隠れていた男がキョロキョロしながら此方へやって来る。
男は短髪で髪を頭髪剤で逆立たせている若干筋肉質な外見だ。
「これは予想以上の地獄絵図だな!」
そう言うと更に言葉を続ける
「今回ばかりは俺の手に余る事態になってしまったから、すまんが大智を利用させてもらった」
青年に向けて男は大智という言葉を口にする。どうやら、男の眼前に立っている青年は大智という名前らしい。
「和幸……またお前の仕業か……! 全くふざけるのも大概にしてくれ!」
激怒した様子で、その男に言い放つ。大智の視界に現れた男は和幸と言うみたいだ。
「まぁまぁまぁ、そう怒りなさんな。大智、俺たち親友だろ?」
馴れ馴れしい雰囲気で和幸がそう言いながら大智の肩に腕を乗せる。
乗せてきた腕を素早く払い除けた大智は「もういい……帰るぞ」と半ば諦めた口調で言葉を発した。
校庭を抜けると、端にある施錠された校門を乗り越えて地面に降り立つ。
校門の側に隣接した石柱には善導寺高校という文字が彫られている。
空は徐々に茜色から黄昏へと変化していく中、二人は家のある方角へ足を向け始めた。
「で、今回はどうしてこうなったんだ?」
暗くなる道を歩きながら大智が和幸に向けて問うた。
「ん……あぁ……それはな、少し面白そうだったから、次の遠征する高校に悪戯しに行ったんだよな」
「時間かけて落とし穴を掘ったり♪ 大量のロケット花火を打ち込んだりとかな♪」
ルンルンとした気分の和幸が面白おかしく話すと、呆れたといった面持ちで大智が顔に手を当てる。
「今日学校に居なかったのは、そのせいか……馬鹿かお前?」
思った事を口にすると『馬鹿とは私めにとって最高の誉め言葉にこざいまするな~』とふざけた台詞で和幸が言い返してくる。
「というか何故、俺が狙われたんだ? そこが一番の謎だ」
大智が疑問に思った事に対し、和幸が人差し指を立てて自信満々といった面持ちで答える。
「それはだな……俺は頭がいいからな……悪戯をする前準備として、顔をマスクで覆う! 名札を自分の物から大智の物に入れ替える! そして後はその状態で、いざ出陣! ってな感じですわ!」
鼻息を荒くした和幸が言うと、その言葉に呆れ果てた大智は内心嘆息する。
「なるほど、理解した。それで名札を見た奴が、勘違いして俺のところに殴りに来たってわけか」
全てを悟った大智がそう口にすると、うんうんと頷いた表情の和幸がそこに居た。
「ご名答! まぁ、番長している大智なら余裕だったでしょ?」
甲高い声で言い放つ。
和幸が言った通り、大智は自分たちが通っている善導寺高校で1年ながら番長の座に就いている。
顔が強面で強そうだからという理由で半強制的にさせられ、毎日いろいろ苦労している。こうなってしまった全ての元凶が和幸だったり、隠された他の理由など、大智はまだ知らないでいる。
「余裕だと思っているかもしれないが、流石に一度に襲い掛かってくると骨が折れそうになるからな……。だから今後は二度と、こんな真似はしないでくれ。」
言葉を投げかけると、和幸が『すまん、すまん』とニコニコしながら謝ってくる。
大智は内心、コイツ反省する気ないなと思いながらも言葉にすることはなかった。
「第一、俺は平和主義者だからな、余り殴り合いは好まない」
大智が言った台詞を聞いて、和幸がキョトンとした顔を覗かせる。
「そんな面で言っても誰も信じないと思うな」
間髪入れず和幸が言葉を続ける。
「俺からしたら戦いを好む野生の動物にしか見えないし……」
意外すぎる言葉を発した大智に対し、笑いを堪えながら和幸がそう口にする。
確かに、見ただけでも失禁してしまいそうな強面が戦いを好まないというのは、にわかに信じがたい。
言われた言葉に大智は、ぐうの音も出なかった。
そうこうしている内に見慣れた門の近くに差し掛かる。どうやら歩きながら駄弁っている内に、自宅前の門に辿り着いたらしい。
大智は左手を上げ「じゃあ、また明日な」と言葉を発すると、和幸が軽く手を振り返してくる。
「あんま、夏輝ちゃんに迷惑かけんなよー」
その言葉を口にすると、和幸は暗くなった道に消えていった。
夏輝――大智の幼馴染の女性である。
昔から家族ぐるみの付き合いがあり、今でも仲がいい関係。
家が隣同士という事もあって大智の自宅によく遊びに来る――というより自分の家感覚で勝手に居ることが多かったりする。
自宅の扉を開けると案の定、制服の上にエプロンを着用した姿の夏輝がそこに居た。
「おかえり、遅かったね。どうせ、また喧嘩でもしてたんでしょ?」
フライパンを手にした夏輝が言うと、大智が事の経緯を説明する。
「今回もあれだ、和幸の悪戯に巻き込まれた」
そう言うと、溜め息をついた夏輝が『また和幸か……』と呆れたと言わんばかりの様子で何かを察した。
「まぁそういうことだ」
玄関で靴を脱いで家に上がると、少し気になった事を夏輝に尋ねる。
「夏輝が居るということは、父さんと母さんはまだ帰って来ていないのか?」
移動した大智がリビングに鞄を置くと、キッチンで料理の準備を始めていた夏輝が顔を覗かせる。
「帰って来ていないね。お母さんが言ってたけど、当分は大智のお父さんとお母さんは帰ってこないらしいよ」
袖口をまくり上げて料理を作り始めた夏輝が言い放つと、いつもの事だなと内心思いながらソファーに腰を掛ける。
大智の父と母は海外で仕事をしている為、あまり家には帰ってこない。
母はファッションデザイナーをしていて、父はいろんな国を転々として遺跡の発掘とかをしている。偶に国際郵便で謎の木彫り人形が父から送られてきたりする。
因みに両親は超が付くほどの親バカである。
「そっか。それでいつも通り夏輝が晩飯作りに来ているって訳か」
夏輝は偏った食生活を見かねて、大智の両親が居ない時は晩ご飯を作りに来ている。
前までは大智が料理をすると必ず失敗するという結果に至り、最終的にはカップ麺になってしまう有様だった。だが、今は夏輝がほぼ毎日作りに来てくれるので、大智的にはかなり助かっている。
「そういうこと。因みに晩ご飯作り終わったら帰るから、後の洗い物とかはよろしくね~」
フライパンを振りながら言ってくる夏輝に対し『ほいほい、りょーかい』と手を上げながら言い返す。
数分後――。キッチンで調理を終えた夏輝が、料理の盛った皿を順番に食卓へ並べていく。キッチンからリビングへ芳しい、いかにも食欲をそそる美味そうな匂いが流れてくる。
立ち込める匂いに思わず、大智の腹の虫が反応してしまう。
「晩ご飯出来たよ~、冷めないうちに早く食べてね」
言うと夏輝はその場でエプロンを外し、帰る準備を始める。
空腹すぎてソファーを立ち上がると、大智はそのまま食卓がある方角へ引き寄せられる様に歩みを進める。
食卓には焼き魚、サラダ、野菜炒め、みそ汁、ステーキととても健康的でバランスが取れた料理がズラリと並んでいた。
「やっぱ夏輝は料理上手いな。どれも美味そうだ……」
腹を鳴らしながら言うと、ドヤ顔をした夏輝が仁王立ちして『当たり前じゃ! 私を誰だと思っているんじゃ? 泣く子も黙る料理上手の夏輝様じゃよ!』とよく分からない語尾をつけ、自信満々といった表情で言い放つ。
「おぉ……料理上手の夏輝様……! 感謝しながら一口一口噛み締めさせて頂きます」
夏輝が始めた茶番劇に大智も乗り始める。
「仕方ないのぅ……そこの腹を空かせた民にコレを授けよう。好きなだけ盛るとよい……!」
言葉を発しながら、夏輝は食器棚から取り出した茶碗と杓文字を大智に手渡す。
「こ、こいつぁ……! お米がたくさん食べられるという伝説の茶碗と、たくさんよそう事が出来る伝説の杓文字じゃあないですか! ありがたく……ありがたく頂戴します……」
その場に跪き、茶碗もとい丼と43cm程の大きさの杓文字を両手で受け取る。
「最後にコレも渡しておこう……」
言うと夏輝は食卓の椅子に置いていた自分の鞄を漁り、その中からある物を取り出す。
夏輝が手に持っていたのは、背の低い小さな瓶だった。中身が真っ黒に染まっている、瓶のラベルには【ごはんでした!】と書かれている。
「それは! お米によく合うと言われている海苔の佃煮……!」
それを受け取り、杓文字などを食卓に置くと『それでは、私は帰るよ……!』と帰り支度を終えた夏輝がそう口にした。
ここで茶番劇が漸く終演する。
見送る為、玄関へ向かう夏輝の後ろについて行くと『あぁ、そうそう』と何かを思い出したかのように大智の方へ振り返る。
「ご飯、残したら後でどうなるか分かってるよね…?」
少し声のトーンが低くなると、その空間が凍り付くような錯覚を覚える。大智の眼前には先程の茶番劇の際に見せた表情とは大きく異なった恐ろしい表情の夏輝がコチラを睨んでいた。
大智は思わず息を呑んだ。
「あ、あぁ! 全部食べるから大丈夫だよ!」
いきなりの発言に声が裏返る。さっきの茶番劇が嘘のように思えてしまう。あのテンションから一気に此処まで変貌してしまうとは恐ろしいと内心思ってしまった。
「それでよろしい」
夏輝がその言葉を言うと、ニコッとした表情に切り替わる。空間を支配していた寒気が徐々に退いていくのを感じ取る。
「い、いつもありがとな。それじゃあ、また明日学校で……」
玄関の扉を開けた夏輝に対して言葉をかけると、手を振りながら『ちゃんと食べろよ』と言い残していった。
見送った後、大智は自宅の扉を閉めて一息つく。
夏輝の作った料理を残すと、鬼のように叱られた経験をしている大智は少し冷やっとしてしまっていた。
食卓に戻ると椅子に座り、出来立ての料理を口にする。
「美味い……」
一度味わうと忘れられない絶妙な味付け。コレを体感してしまうと、そこらへんにある飲食店で出す料理が食べれなくなってしまう。それ程、夏輝が作る料理は絶品なのだ。
――食べ始めてから数分が経過した頃。リビングに移動した大智は、満腹になった腹を抑えながらソファーに凭れ掛っていた。
「男の俺でも流石に無理っす…」
天井の方を見上げながら、顔を歪めて呟く。
夏輝の料理はどれも美味ではあるが、一つだけ欠点がある。それは料理をするのが余りにも楽しくて、必ず作りすぎてしまうという点。
それを知っている大智は覚悟を決め、挑んでみたが敢え無く倒されてしまった。
残った料理に関しては休憩してから食べ切ろうと決意する。そうしないと後が恐ろしい。
一人で食べ切れない量の料理を作って、残したら縛り上げられるとは一種の拷問だと内心感じていた。
「さて……」
休憩がてらにリビングのテーブルに置いてあったノートパソコンに電源を入れる。
そして、いつも通りブラウザを開き、ブックマークしてあるサイトのホームページを開く。
素早くタッチパッドを操作して、何も記載されていない真っ白なページに切り替わると静かにキーボードに手を置いて、ゆっくりと目を閉じる。
カチカチと時計の秒針が響き渡り、数分の時が流れた。
刹那の出来事だった――キーボードの上に置いた手が、ピアノを弾くが如く素早く動き出す。あまりの速さにキーが潰れてしまうのではないかとさえ思えてくるほどの打鍵である。
真っ白なページは、次第に入力された文字で埋まっていく。
これは大智が趣味でやっているWEB小説の執筆作業である。いつもこういう感じで、何かを思いついたら一気に書き上げているのだ。
数分間、リビングにはキーボートを打つ音だけが響き渡る。この光景を他人が見たら奇妙に感じること相違ない。
悪魔に魂でも乗っ取られたかの様に黙々と文字を打ち込んでいると、突如としてその手がピタリと停止してしまう。
サイトの通知ボックスに一通のメッセージが届いている事に気づいたのだ。
大智は通知が来ていることを確認すると、素早くマウスカーソルをメッセージの方へ向ける。
ページが切り替わると、そこには『親愛なる八雲 紅 様へ』と書かれた文章が最初に記載されていた。
この『八雲 紅』というのは、大智が小説を書く際に使用しているペンネームである。
カーソルを動かしつつ、そのページに記されている文章を読んでいく。
メッセージには『もしも続きがあるなら見てみたい』、『凄く面白いので書き続けてください!』などの想いが1000文字以上に亘って綴られている。
この様なメッセージを貰ったのは今までなく、初めての出来事だった。気が付けば嬉しいという感情と共に一筋の涙が頬を伝っていた。
自分が描いた物語を読んで面白いと感じてくれる読者がいる事に感激すると同時に、一つの決意を固める。それは、今まで以上に面白い作品を創り出し、そして多くの読者を笑顔にしてみたいという気持ち――
少し落ち着いてから再び、大智は小説の執筆を再開する。驚くことに、一度書いた文章を全てバックスペースキーで消去したのだ。
一息ついてから、改めてキーを叩き始める。
時間を忘れて黙々と書いた、自分がこの物語の登場人物であると錯覚するぐらいに、大智だけの世界に深く、深く落ちていく。
世界を描いた、物語を書いた、キャラクターを画いた、ひたすら書き綴った。
好きで好きでたまらなく好きで、動く手にその想いを乗せて物語を一気に創り上げる。
カタカタとキーボードの打鍵音だけがリビングに響き渡っていく。その姿は、いっそう奇怪な雰囲気を漂わせて、そこの空間を支配していた。
「面白い……面白いぞ! フハハハハハハ!」
突如として笑い声が辺りに響き渡る。
その日、書いては笑い、書いては笑いを続けて、異様な光景がその場に広がっていた。
大智は確信する。今が一番愉快で楽しいと。
だが、楽しい日々は忽然と終わりを迎える事となってしまう――――
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
あれから4年という歳月が経過。
貝塚 大智(20)は高校を卒業してから大学へ進学、昔と比べるとガラリと雰囲気が変化していた。
しかしながら顔つきに関しては以前より増して、更に強面になってはいるが……。
窓際の席から外に目を向ける。空模様は晴天、雲一つ存在しない美しい青が一面に広がっているのが確認できる。
講義中にも関わらず、大智は外を眺めながら呆然としていた。
一つ、一つだけ悲しい事がある。
それは、大智はもう【物語を書けなくなってしまった】という事――――
物語は如何でしたでしょうか?
続きが気のなるのであれば嬉しく思います。
最後になりますが、一つお知らせがあります。
この度、5月5日(土)に東京ビックサイトにて開催される同人誌即売会
『コミティア124』に参加が決定しました。
出すのは『オリジナルのライトノベル』と『キーホルダー』です。
ライトノベルに関しては、なんと挿絵が入っている本格的な物となっています。
何のライトノベルを出すのかは、察しがつくはずです……。
私も初めての試みなので少し、緊張しています。
それでは次回の物語を期待して頂ければ嬉しく思います。
Let's meet next time.